木漏れ日のなかで、揺れる恋
メリーゴーランドの表現(?)がんばりました。
木漏れ日のなかで、恋が揺れる
家を出て、バスに揺られてしばらく。
窓の外に、カラフルな観覧車が見えてきた。
「見えてきたよ!」
せなが、目をキラキラさせながら声を上げる。
その横顔が、まるで子どもみたいに無邪気で、俺は思わず笑ってしまった。
「すごー……」
俺も窓の外を覗き込む。
観覧車の向こうに、ジェットコースターのレールが空を切っていて、
その下には、色とりどりの旗が風に揺れていた。
「最初どこ行く?」
せなが、ワクワクした声で聞いてくる。
その声に、俺の胸も少しだけ高鳴った。
「まぁまぁ、着いてから決めよ」
「はーい」
そんなやりとりをしているうちに、バスが停まった。
「こちらー、○○遊園地、○○遊園地ー」
運転手さんのアナウンスが流れる。
俺たちは立ち上がり、バスを降りた。
目の前には、大きなゲートと「ようこそ! ○○遊園地へ!」の文字。
その下をくぐる人たちの笑い声が、風に乗って届いてくる。
入場ゲートには列ができていて、俺たちもその最後尾に並ぶ。
せなは、手袋を外してチケットを取り出しながら、そわそわと足を揺らしていた。
「ねぇ、私ここ行きたい!」
入場後、渡されたマップを広げると、せなが右の端を指差した。
そこには「木もれびのティーサロン」という名前のメリーゴーランドが描かれていた。
「うさぎとか、レッサーパンダとか、動物のライドなんだって! かわいくない?」
「じゃあ、そこ行こっか」
「うんっ!」
せなが嬉しそうに笑う。
その笑顔に、俺の心臓がまたひとつ跳ねた。
道の両側には、ポップコーンの香りや、甘いチュロスの匂いが漂っていて、
遠くからはピアノや木琴の音が混ざった、楽しげなBGMが聞こえてくる。
その音に導かれるように歩いていくと、
木漏れ日の中に、メリーゴーランドが現れた。
白木の柵に囲まれたその空間は、まるで森の中の秘密の庭みたいで、
小さな動物たちのライドが、静かに並んでいた。
「……かわいい……」
せなが、リスのライドに手を添えて、目を輝かせる。
俺はその隣の、フクロウのライドに乗ることにした。
「まもなく、森のパーティが始まりまーす!」
スタッフの声が響くと、せなが少し背筋を伸ばして、手すりをぎゅっと握った。
「ようこそ、木もれびのティーサロンへ。森の奥で、そっと開かれる秘密のティーパーティ。今、動物たちがくるくると回り始めました。甘い午後の夢へ――どうぞ、ほどけるような時間を」
その言葉と同時に、メリーゴーランドがゆっくりと動き出す。
木漏れ日が、くるくると回るリスの背中に揺れていた。
せなは、少し緊張したように、でも嬉しそうに笑っていた。
その笑顔が、光の粒に包まれて、まるで絵本の中の登場人物みたいだった。
「……わー!」
せなが、思わず声を上げる。
俺はその声に振り向いて、つい笑ってしまった。
「なんか、ほんとに森の中にいるみたいだね」
「……うん。なんか……夢みたい」
せなが、ふわっと笑う。
その笑顔に、俺の胸がまた、きゅっと締めつけられる。
「……可愛い……」
「え?」
「っ、な、なんも言ってない……!」
「……今、言ったよね?」
「言ってないってば!」
「ふふ……ありがと」
「ち、ちがっ……!」
「ありがとって言ったら、否定できないでしょ」
「う、うるさい……」
せなが、リスの耳をそっと撫でながら、
でもその頬は、ほんのりと桜色に染まっていた。
メリーゴーランドは、くるくると回り続ける。
木々の間から差し込む光が、ふたりの影を交差させ、また離していく。
まるで、まだ言葉にならない気持ちを、そっと揺らしているみたいに。
感想、書いてくれたら嬉しいです。




