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言葉より先に、顔が赤くなる

無理

言葉より先に、顔が赤くなる

「こちら、チーズハンバーグお二つと、カルボナーラ、カットステーキ大盛りです」


 しゅいが振り向くと、店員さんが笑顔で料理を運んできていた。

 湯気の立つお皿がテーブルに並べられ、ふわりと美味しそうな香りが広がる。


「わぁ〜! 美味しそう!」


 せなは、目をキラキラさせながらそう言った。


「おいしそ〜!」


 みのも同じく、目をキラキラさせながら、思わずよだれを垂らしそうになっていた。


「じゃあ、いただきます!」


「いただきます!」


 声を揃えて、みんなで手を合わせる。

 カトラリーの音がカチャリと響き、食事が始まった。


 しゅいの前には、山盛りのカットステーキ。

 肉の焼けた香ばしい匂いに、思わず笑みがこぼれる。

 ナイフを入れると、じゅわっと肉汁があふれ出し、口に入れた瞬間、思わず目を細めた。


「……うまっ」


 隣を見ると、せなもチーズハンバーグを頬張っていた。

 とろけるチーズが口元に少しついていて、それを慌ててぺろっと舐め取る仕草が、なんだか無防備で――可愛い。


---


 食事を終え、会計を済ませたあと、みんなでレストランを出た。

 外の空気はひんやりしていて、冬の午後らしい澄んだ空が広がっていた。


「美味しかったですねー」


 みのが満足そうに言う。

 他のみんなも、ぽかぽかした表情でうなずいていた。


「なんか……眠くなってきた……」


 せなが、うとうとしながらつぶやく。

 頬がほんのり赤くて、まるで日向ぼっこの猫みたいだった。


「俺も……」


 しゅいも、あくびを噛み殺しながら答える。

 お腹が満たされて、眠気がじわじわと押し寄せてくる。

 昨夜の寝不足もあって、まぶたが重い。


 そんなとき、あおばがしゅいの肩を軽く叩いた。


「しゅいー」


「ん?」


「このあと、俺の部屋でなんかしない?」


「えっと……いいよ」


 寝るつもりだったけど、まぁ、たまにはいいか。

 遊ぶなら、眠気も吹き飛ぶかもしれないし――

 そんなことを考えているうちに、みんなの家に到着した。


「じゃあ! またねー!」


 それぞれが手を振りながら、自分の部屋へと戻っていく。

 しゅいだけが、あおばの部屋の前で足を止めた。


---


「よ!」


 部屋に入ると、あおばはソファに座っていた。

 窓から差し込む光が、部屋の中をあたたかく照らしている。


「で、何すんの?」


 しゅいがあおばの部屋に入って、ソファに腰を下ろしながら尋ねる。

 窓から差し込む夕方の光が、部屋の中をほんのりオレンジ色に染めていた。


 あおばは、ニヤニヤしながらしゅいの方を見た。


「いや、別に。話でもしようかなって思って」


「……なんか、嫌な予感しかしないんだけど」


「ふふん。じゃあ、聞くけど――」


 あおばが身を乗り出す。


「今日、せなの隣でご飯食べて、どうだった?」


「っ……!」


 しゅいは一瞬で固まった。

 そして、顔がみるみる赤くなる。


「な、なんで……それ聞くんだよ……!」


「いや、だってさ。あれ、絶対嬉しかったでしょ?」


「……う、嬉しかったけど……!」


 しゅいは、思わず声を上げたあと、慌てて口を押さえた。


「ち、ちがう! いや、ちがわないけど! その……!」


「はいはい、落ち着け。で、どこが一番“やられた”?」


「……え……」


 しゅいは、クッションを抱えて、ぽつりと呟いた。


「……“楽しみだね”って、笑ったとき……」


「おお」


「なんか……あの笑顔、ずるいよ。

 こっちは必死に平常心保ってんのに、あんな無防備に笑われたら……もう無理……」


「わかるわー。せなって、ああ見えて、破壊力あるよな」


「しかも、手……重なったとき……」


「うんうん」


「……あれ、マジで心臓止まるかと思った。

 手、ちょっと触れただけなのに、ずっと熱くて……。

 今でも、思い出すと……やばい……」


「……お前、完全に落ちてるな」


「うるせぇ……!」


 しゅいは顔を真っ赤にして、クッションに顔を埋めた。


「……でも、あおばだってさ。みののこと、ずっと見てたじゃん」


「っ……!」


 今度はあおばの番だった。

 しゅいの反撃に、あおばの顔が一気に赤くなる。


「い、いや……見てたっていうか……その……」


「メニュー見てるみの、めっちゃ可愛いって思ってたでしょ?」


「……思ってた……」


「素直かよ」


「だってさ、みの、目がキラキラしてて……

 “これも美味しそう〜!”って言ってるの、もう……なんか……」


「うんうん」


「……守りたくなるっていうか……」


「わかる」


 ふたりは、同時にため息をついた。

 そして、しばらく黙ったあと――


「……俺、せなのこと、ちゃんと好きだと思う」


「……俺も、みののこと……たぶん、好きだわ」


 照れながらも、はっきりと口に出したその言葉に、

 ふたりはまた、沈黙する。


 でも、その沈黙は、どこか心地よかった。


「……言えるかな、いつか」


「言えたらいいな、とは思ってる」


「でも、今は……まだ無理だな」


「うん。俺も」


 しゅいは、そっと立ち上がった。


「じゃあ、俺、戻るわ」


「おう。……しゅい」


「ん?」


「……せな、今日ずっとお前のこと見てたぞ」


「……っ、やめろぉぉぉ……!」


 顔を真っ赤にして、しゅいはクッションを投げる。

 あおばはそれを笑いながら受け止めた。


 そして、しゅいは逃げるように部屋を出た。

 廊下は静かで、夕暮れの光が長く伸びていた。


 自分の部屋に戻り、ドアを閉める。

 

 ベッドにダイブすると、ふかふかの布団が体を包み込む。


「……疲れた……」


 ぽつりとつぶやいて、目を閉じる。

 まぶたの裏に浮かぶのは、さっきのせなの笑顔。

 そして、重なった手の感触。


(……あれ、夢じゃなかったよな)


 頬がまた、じんわりと熱くなる。

 でも、もう考える余裕もなくて――


 しゅいは、そのまま静かに眠りについた。


「zzzzz……」

明日から大忙しです。

毎日投稿できるよう頑張りたいです。

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