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手が触れた、その一瞬で

どうかな?

手が触れた、その一瞬で

「……」


 私としゅいは、ずっと黙っていた。

 レストランの窓から差し込む午後の光が、テーブルの上をやわらかく照らしている。

 その光の中で、ふたりはただ、視線を落としたまま、顔を上げられずにいた。


 二人とも、顔を赤くするのは恥ずかしいので、必死に堪えているのだ。

(絶対あおばに照れてるところ見られたくない……)

 せなは、心の中でそう思っていた。

 もし見られたら、しゅいが好きってこと、バレてしまう。

 それだけは、今はまだ、どうしても避けたかった。


「と、とにかく、メニュー表からご飯選ぼ!」


 あおばが、少し声を張って言った。

 元気そうに聞こえたけど、顔は真っ赤だった。

 まぁ、隣にみのがいるもんね。そりゃそうなる。

 だって、あおばはみのの事、好きだもんね。


 せなは、言われた通りにメニュー表に手を伸ばした。

 その瞬間――


 しゅいの手も、同じタイミングで伸びてきて、ふたりの手が重なった。


 ぴたり、と時間が止まる。

 お互い、手を引っ込めるまでに、ほんの一瞬の沈黙があった。

 でも、その一瞬が、やけに長く感じられた。


 せなは、心臓が跳ねる音を必死に抑えながら、顔を伏せた。

 なんとか平静を装う。でも、頬の熱はごまかせない。


 ――そして、しゅいは。


「!? あ、え、ごめ……あの……ちが……っ……!」


 しゅいの声は裏返り、言葉がぐちゃぐちゃになる。

 顔はみるみるうちに真っ赤になり、耳まで染まっていく。

 目は泳ぎ、手は落ち着かず、肩が小さく震えていた。


「だ、大丈夫。私、き、気にしてないから……」


 せなは、しゅいを見て、思わずそう言った。

 でも、声が少しだけ上ずっていたのは、自分でも分かっていた。


「ま、マジでごめん……」


 しゅいは、かろうじてそう返した。

 でも、顔の赤さは引かない。

 まるでトマトみたいに、真っ赤だった。


 あおばの方をちらりと見ると、案の定、ニヤニヤしながらこっちを見ている。

 みのも同じく、口元を押さえて笑いをこらえていた。


「ほらほら、そこのお二人さん。早く、頼みますよ〜?」


 みのが、からかうように言う。

 でも、その目は優しくて、どこか応援してくれているようにも見えた。


(……バレたな……俺がせなの事好きなの……)


 しゅいは、心の中で頭を抱えながら、メニューに視線を落とした。


「じ、じゃあ、えっと……カットステーキ、大盛りで……」


 まだ、さっきの手の温もりが残っていて、声は少し震えていた。


「じゃあ、私は……チーズハンバーグ!」


「私もそれにします!」


 みのとせなが、同じメニューを選ぶ。

 その声が重なった瞬間、ふたりは顔を見合わせて、ふふっと笑った。


「じゃあ、俺は……カルボナーラ!」


 注文を終えると、テーブルには再び静けさが戻った。

 窓の外では、風に揺れる木の葉が、光を受けてきらきらと瞬いている。


 しゅいは、そっと隣を見た。

 せなが、うきうきとした表情で、料理を待っている。

 その横顔が、あまりにも可愛くて――


(……可愛い)


 思わず、心の中で呟いてしまう。

 声に出しそうになって、慌てて口を閉じた。


 そのとき、せながふいにこちらを向いた。


「楽しみだね!」


 ぱっと咲いたような笑顔。

 その一言で、しゅいの心臓はまた跳ねた。


「あ、うん」


 返す声が少し掠れて、慌てて咳払いをする。

 顔がまた熱くなってきて、しゅいは視線を前に戻した。


 あおばは、ちらちらとみのの方を見ては、顔を赤らめている。

 その様子に、しゅいは少しだけ安心した。

 自分だけじゃないんだな、って。


 みのは、メニュー表を見ながら、目をきらきらさせていた。

 その姿も、確かに可愛い。


 でも――


(せなは、なんか……特別なんだよな)


 言葉にできない。

 でも、確かに“違う”って思う。

 ただ可愛いだけじゃない。

 見てるだけで、胸がぎゅっとなる。

 笑ってくれるだけで、嬉しくなる。


(……ズルいよ、せな)


 また、顔が熱くなる。

 何度目だろう。

 でも、止められない。


 俺の恋心を、一瞬で掴んでいったのは、せなだった。

 好きって思ったのは――せなが、初めてだった。


 ――なのに、隣にいるのに、何も言えない。

 言葉にしたら、全部壊れそうで。

 でも、言わなきゃ、何も始まらない気もして。


 せなが、ふとこっちを見た。

 目が合った瞬間、また心臓が跳ねる。


「……?」


 首をかしげるその仕草が、また可愛くて、

 しゅいは慌てて視線をそらした。


「な、なんでもない……」


 そう言いながら、テーブルの下で、そっと拳を握る。


 ――いつか、ちゃんと伝えられるように。

 そのときは、今日のこの気持ちを、全部言葉にできたらいい。


 今はまだ、照れてばっかりだけど。

 でも、きっと――この気持ちは、本物だから。

 

せなしゅい最高!!。

みんなは、せなしゅいと、あおみの、どっちが好き?

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