クッションの向こう、照れてるふたり
無理
クッションの向こう、照れてる二人
せなは真っ直ぐに自分の部屋へと向かった。
ドアを閉めると、カーテン越しに差し込む昼の光が、部屋をやわらかく照らしていた。
その光の中で、彼女はそっと写真を取り出す。
「……しゅい、可愛……」
ぽつりと漏れた声に、自分で驚く。
胸の奥が、じんわりと熱くなる。
私が可愛いからって……本当なのかな……?
しゅい、嘘って言ってたけど……嘘でも、嬉しい。
「しゅい……マジで赤面可愛い……。こんなとこ、めちゃ好き……//」
一人きりのはずなのに、頬が熱くなっていく。
写真には、片目を手で押さえたしゅいが写っていた。
顔は真っ赤で、視線はどこか泳いでいる。
正面には自分。左隣にはみの。さらにその隣には、あおば。
よく見ると――あおばも、ほんのり赤い。
「……あおばもみのに、照れてたんだ……ふふっ」
思わず笑みがこぼれる。
でも、やっぱり気になるのは、しゅいの赤面の理由だった。
「一体なんで顔真っ赤にしてたんだろ……」
枕に顔をうずめて、もぞもぞと悶える。
写真を見たときは“熱かな”と思ったけど、あのときは確か、みんなでパーティしてた日。
しゅいは元気だったし、ジュースしか飲んでなかった。
じゃあ、熱じゃない。酔ってもない。
「もーう! 手がかり一つもわかんない……!」
せなは机を軽く叩いた。
そのとき、廊下の向こうから声が聞こえてきた。
「お前……〜〜」
「無意識〜〜」
しゅいとなぎとの声だ。
気になって、そっとドアに耳を当てる。
「付き合えば……〜〜」
「俺、カッコ〜〜」
肝心なところが聞こえない。
もどかしさに、ため息が漏れた。
「ハァ……」
でも、聞いてるだけじゃ何も分からない。
せなは意を決して、ドアノブに手をかけた。
「よし……!」
ドアを開けて廊下に出る。
けれど、もう、そこにしゅいの姿はなかった。
「……。この写真……しゅいに返した方が……いいよね……?」
写真を胸に抱え、せなはしゅいの部屋の前へ。
緊張で手が汗ばむ。
「……し、しゅい、いる?」
ノックしても、返事はない。
「部屋にいないのかな……?」
困っていると、廊下の向こうから足音が近づいてきた。
「あ、しゅ……」
声をかけかけて、思わず物陰に隠れてしまう。
自分でも、なぜそうしたのか分からなかった。
「え……私、何してんの……?」
戸惑っていると、しゅいの独り言が聞こえてきた。
「なぎと……あいつ……! マジでさ……//」
しゅいの声が、どこかくぐもっている。
顔を手で覆いながら、ぶつぶつと文句を言っている。
でも――その頬は、真っ赤だった。
……しゅい、照れてる。
可愛い……。
――じゃなくて! 写真、返さなきゃ!
「し、しゅい〜」
「……!? せ、せな……」
しゅいは驚いたように振り返り、すぐにそっぽを向いた。
「ど、どしたの?」
「あの……写真……返そうと思って……」
「……。そ、その写真……消しといて……//」
「……で、でも。消すの、勿体ない……し……。いや、勿体無いんでじゃ……」
しゅいは無言で、せなの手から携帯を奪い取った。
その手が、ほんの少し震えていた。
「つ、次は! 俺が“見ないで”って言ったら……絶対見ないで……//」
「……うん! 多分!」
「た、多分!?!?」
「うん!」
せながにこっと笑うと、しゅいも思わず笑ってしまった。
その笑顔につられて、せなも笑う。
そして――今。
ふたりは、せなの部屋で並んで座り、写真を見ながら話している。
「……そういえば結局、しゅい。なんで顔赤かったの?」
その問いに、しゅいは一瞬固まった。
そして、視線をそらしながら、ぽつりと答える。
「え……。ひ、秘密だよ……//」
「ふーん……」
せなは、写真を見つめたまま、少しだけ口元をゆるめる。
でも、その頬はじわじわと赤くなっていた。
「……もしかして……ほんとに私のこと……だったり……して……?」
その言葉に、しゅいの肩がびくっと跳ねた。
「なっ……! ち、ちがっ……いや、ちがわないけど……いや、ちがうっていうか……!」
「どっちなの……?」
「……っ、わかんない……!」
しゅいは、クッションを抱えて顔を隠した。
耳まで真っ赤。首の後ろまで熱い。
せなは、そんなしゅいを見て、そっと笑った。
「……ちょっと可愛いって思っただけで……!
で、でも! た、ただ服似合ってるなって思っただけで……!
べ、別に……その……//// 深い意味は……ないから……!」
「ありがと」
「……べ、別に褒めてないし!」
「えー? 絶対褒めてたよね?」
「う、うるせぇ……!」
しゅいは両手で顔を隠した。
その仕草があまりにも可愛くて、せなは思わず言った。
「しゅい、可愛い……」
「は、は!? か、可愛くなんて……ないし……!」
「いや……照れてるの、めっちゃ可愛い……笑」
「……/////」
しゅいは、クッションに顔を埋めたまま、ぶつぶつと何かを呟いた。
でも、せなには聞こえなかった。
「ん? なんか言った?」
「な、なんでもないっ!」
しゅいは、さらに顔を隠して、ソファの背にもたれた。
その耳まで、真っ赤に染まっている。
せなは、そんなしゅいを横目で見ながら、
自分の頬に手を当てた。
……熱い。
しゅいのせいで、顔がずっと熱い。
「……しゅいのくせに……ずるい……」
「え?」
「なんでもない!」
ふたりは、顔を隠したまま、しばらく黙った。
でも、沈黙は不思議と心地よくて、
その間に、ふたりの距離はほんの少しだけ近づいていた。
まだ、気持ちは言葉にできない。
でも、確かに――恋は、進んでいる。
おはようございます。
今回は、しゅいとせなの所描いてみました。
次回、まだ何にするか決めてないんですけど、だいたいレストラン行ってなんか起こって...みたいな感じかな?




