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Episode.8  V R O O M ❗️❗️

(あおい)はシリンダーに差し込んだキーを回した。


しかしエンジンはかからない。


「あれ」


数度キーを回すが反応しない。


「ブレーキ踏みながらじゃない?」


(もも)の声に従ってみると、エンジンはかかった。




その後は家から出る前にゾンビを誘導したのとは反対方向に発進し、中学校へ向かった。


「へ〜アオイ運転上手だな。曲がること以外」


紅一(こういち)が前を見ながら言う。蒼は先程曲がり角で何度もブレーキを踏み込み、車体を揺らしまくっていた。


「ごめんて」


「しょーがないよアオ兄。でももうちょいスピード上げてもいいよ?」


「勘弁して〜。2人を乗せてるからスピード出せないよ」


人の命を背負ってハンドルを握るとはこういうことなのか。蒼は父親の運転姿を思い出して敬意を感じた。


「おい桃、お前が重くてスピード出ねぇってよ」


「は?」





紅一と桃のこぜり合いが終わった頃、軽トラは大通りに出た。


道路上をゾンビがポツポツと徘徊していて、ハンドルを握る手に力が入る。


「でもやっぱゾンビ達の反応薄いね〜」


広い道路をゾンビを避けなが進む。


「そうだね。自転車の時とは大違いだ」


「蒼、もう少しで着くだろ。車からは意外と周り見えないから降りる時気をつけろ」





中学校に到着すると、校門から校内へ入り、昇降口前に駐車する。その後素早く車の窓を布で塞いだ。



「やっぱうじゃうじゃいたな」


「あぁ……」


ちらりと見上げた校舎の窓には、どの階にも(うごめ)く影が見えた。


3人の表情に緊張が走る


「じゃあやりますか」


桃は首をコキコキ鳴らすと、ドローンのコントローラーを握った。




桃の操縦の腕前は見事なものだった。紅一と蒼がコントローラの液晶を覗き込む中、桃は華麗なドローン捌きでゾンビを誘導していった。


ドローン視点の映像はあまりにも縦横無尽に飛び回るので、紅一は画面酔いをして途中から見るのをやめていた。


結局、ドローンは4度に分けて校内を散策し、スピーカーで桃の声を出しながら、ゾンビ達を紅一達のいる昇降口とは反対方向のグラウンドの端へ連れて行った。


「ハ〜……よし。これで校舎内はあらかた片付けたよ。取りこぼしもあり得るから気ー抜かないで。行ってらっしゃい!」


桃はそう言うと紅一と蒼の胸にグーを当てた。


「ありがとな桃」「ありがと!桃ちゃん」


紅一は竹刀を、蒼はバットを手に軽トラを飛び降りた。




周囲を警戒しながら校舎内を進む。出身校なので道に迷うことはないが、懐かしい廊下には血痕があったり窓ガラスが散乱していたりしていた。


教室の窓は大方割られていて、机が積まれた痕跡があったり、人が襲われた痕跡が見られた。


中学校に入った時に見たゾンビの多くは、制服を着ていた。


腐臭の漂う校舎内を歩くのは吐き気を伴ったが、(ゆき)を助けるという気持ちだけが蒼を動かしていた。


2階に上がると、廊下の奥に理科室が見えた。あの教室の1階上あたりに、雪のいるトイレがある。





結局ゾンビに会うことなく、トイレにたどり着くことができた。


「いくぞ……」


紅一が慎重に女子トイレに足を踏み入れる。トイレの鏡を見て、曲がり角にゾンビがいないことを確認して曲がる。


そしてたどり着いた。一番手前の個室だけ扉が閉まっていた。蒼はノックをする──


──瞬間、紅一に肩を掴まれた。


「待て」


紅一は蒼に手でついてくるよう促したあと、扉の空いている個室を一つ一つ2人で調べ始めた。


全てを調べ終わったあと、紅一は少し顔をほころばせて言った。


「うし、取り敢えずここは絶対に安全だ。一応俺は出口見張っとく」


そう言って紅一は歩いていった。




やっとここに来れた。


蒼ははやる気持ちを抑え、コンコンコンとドアをノックする。


「桃!迎えに来たぞ」


しばし間が空いたあと、カチャッと鍵の開く音がする。


そしてゆっくり扉が開き、何かが見えた


──瞬間、蒼は扉から出た何かに飛びかかられた……

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