Episode.16 朝食
「お兄ちゃ〜ん。起きよ〜?」
蒼は肩を優しくゆすられて起きる。目を開けると頭上でウェーブのかかったセミロングの茶髪が揺れている。
「雪か……おはよ…」
「うん。おはよ」
起きあがって壁の時計を見ると、針は10時を指していた。
「兄貴!10時だ!起きろ!」
隣から桃の元気な声が聞こえてくる。隣のベッドを見ると、寝ている紅一の鼻を桃がぎゅ~っと引っ張っていた。
紅一は何の反応も示さない。ゲームのコントローラーを握ったまま異常にいい姿勢で寝ている。
寝相がいいのか悪いのか分からない。
まったく起きない紅一に、桃はご立腹だ。
「任しといて。俺こいつの弱点知ってるから」
そう言って蒼は桃の前に出る。
蒼は紅一の耳元で囁いた。
「紅一。お前のそばにゴキブリがいるぞ」
言い終えた瞬間、紅一はビクンッと痙攣し、弾かれたように起き上がる。
そして凄まじいスピードで部屋の隅に移動し頭を抱えた。
「ごめんごめん。紅一、今の嘘。ゴキブリはいない」
それを聞くと、紅一は部屋を見回して、安全を確認すると蒼にデコピンを食らわした。
「蒼、次そんなことをやろうってんなら命をかけろよ。俺の」
紅一は冷や汗ダラダラである。雪が紅一を慰めている。桃は呆れと憐れみの混じったような顔で紅一を見ている。
4人で2階から階段を降りていると、リビングからいい匂いがしてきた。
「あつ、蒼さん。紅一さん。おはようございます!あと2人とも、起こしてきてくれてありがとう」
リビングのキッチンでは、葵が料理をしていた。
木製のテーブルの上には既に出汁巻き玉子、タコさんウィンナー、ナスの入った味噌汁、焼鮭が並んでいた。
「うおー!めっちゃ美味そう!!」
「すごいね。葵さ……葵が作ったの?」
葵は蒼の問いかけに、照れくさそうに頷いた。
「葵すごいんだよー。私も手伝ったけど手際とかめっちゃ良くてさ」
雪が桃と人数分のお箸やコップを用意しながら言う。
「助けていただいた皆にお礼がしたくて……」
葵が頬を赤らめて、エプロンを外しながら言う。
「めっちゃ嬉しいよ。ありがとう」
「ありがとな〜葵」
「えへへ……どういたしまして」
それぞれが木製のテーブルの前に座る。
「じゃあ、」
「「「「「いただきまーす」」」」」
葵の作った少し遅めの朝ごはんは、本当に美味しかった。
窓は閉め切られていたが、全員リラックスして笑顔があふれてしていた。
「「「「「ごちそうさまでしたー」」」」」
朝食を終えたあと、それぞれ話したり、ラジオを聞いたり、朝食の片付けなどをして過ごしている。
みんなが落ち着いてきた頃、紅一が切り出した。
「皆、ちょっと聞いてくれ。」
全員が紅一を振り返る。紅一は改まった表情で切り出した。
「今から、これからの俺達の計画を立てます」




