Episode.13 休息
「そんじゃお前ら。服ぜんぶ脱げ!」
「は?」「ん?」「え?」「?」
雪は蒼の陰にそそくさと隠れる。猿谷は身体を隠すように両手で胸を抱き、桃は紅一を睨みつける。
「ん?どうしたお前ら」
紅一は一同の怪訝な反応に焦っている。
「おいクソ兄貴、説明しろ」
紅一は慌てて語った。ゾンビに噛まれたりした人は居ないとはいえ、ゾンビは死体が歩いてるものだ。
そいつらに触られたなら、何か菌がついているかもしれないから、服は捨てたほうがいい。
そんなことをつらつらと語った。
「もっと言い方あったろアホ兄貴!……じゃあ今着てるものは袋に入れて、女子組から風呂に行こう」
桃が雪と猿谷を連れて家に入っていく。
蒼は紅一の背中をポンポン叩いた。
約1時間後、女子達はホカホカした様子で脱衣所から出てきた。
「待たせてごめーん。入ってきてー」
ドライヤー片手の桃、続いて雪、猿谷がリビングに歩いてきた。身体が暖まって安心したのか、3人の顔のこわばりが取れている気がする。
蒼は風呂上がりの艷やかな桃と猿谷に一瞬目を奪われたが、すぐに視線を外した。
「兄ちゃん達も入ってきなー?」
「そうだな。じゃあ蒼、俺先に行ってくるわ。」
紅一がそう言って席を立って風呂へ歩いていった。
「皆、お腹空いてない?」
蒼は、紅一と作っておいたおにぎりを、交代でドライヤーを使って髪を乾かしている3人に渡す。
「わっ!アオ兄ありがとう!」
桃は目を輝かせておにぎりを受け取る。
「ご飯だぁ〜〜……。ありがとう……」
雪はおにぎりを、ボロボロと泣きながら何個も食べる。
ぐぅ〜〜……
不意に猿谷の方から、お腹の鳴る音がした。
蒼が猿谷を見て目が合うと、猿谷は顔を真っ赤にして下を向く。前髪に顔が隠れてしまった。
猿谷は学校から逃げてくる時からずっと震えていた。
家についた後も、彼女は沈んだ表情をしているのに蒼は気づいていた。
中学校がどうしてあのような有様になったのか。怖いことを思い出させたくはないので、猿谷と雪に聞きはしない。
だが当然、同じ学校の仲間が襲われたり、見る影も無くなってしまったのを2人が見てしまった可能性はある。
「猿谷さん、で合ってるよね?」
猿谷は下を向いたまま頷く。蒼は猿谷の前にしゃがみ込む。
「何日も一人で辛かったよね。もう大丈夫だよ。遠慮せずに食べて?」
蒼は努めて穏やかな顔で、おにぎりを猿谷に差し出す。
「……ありがとう…ございます」
猿谷はそっとおにぎりを受け取ると、両手で口に運ぶ。
ゆっくりと噛みながら、彼女の頬を何粒もの涙がはしる。
おいしい。微かだがその言葉が、猿谷の口から聞こえた気がした。
蒼はそれを聞いて少し安心し、立とうとすると、猿谷が蒼の手を掴んだ。




