Episode.12 完全勝利
紅一と蒼でゾンビを食い止め、何としてでも桃、雪、猿谷を逃がすことを覚悟した時、運転席の窓が開いた。
「兄貴!これぶつけろ!」
桃が運転席の窓から、何かを放って寄越した。紅一は慌てて受け取る。
「何だそれ?」
蒼が聞く。紅一の持っているものを見ると、何やら手のひらサイズの、コードやらが付いたメカメカしいものだった。
「なんだか知らねぇが、アイツが寄越したもんだ。絶体おもしれぇぞ。」
紅一は大きく振りかぶる。
コード……メカ……桃ちゃんは機械好き。
もしかして……爆弾?蒼は冷や汗をかく。
「くらえぇぇ!」
紅一はソレを野球ボールのようにぶん投げる。そしてゾンビに当たる瞬間、
──ボゥンッッ!!
という音とともにソレは炸裂した。ソレは着弾した瞬間、煙と共に大きな白い風船になった。
その風船は、その膨らむあまりのスピードで、喰らった数匹のゾンビを吹き飛ばし、その後列のゾンビもドミノ倒しにしていった。
「うっは!気持ちー!」
紅一は嬉しそうだ。
「うまくいった?エアバッグ爆弾」
桃は運転席から、身を乗り出して振り返る。
そうか、桃ちゃんは出発時に外しておいたエアバッグを取っておいたのか。
桃は後ろを見たままギアを切り変え、エアバッグが作った空間にバックすると、方向を変え校門を飛び出した。
「だっしゅーーーつ!」
桃が叫ぶ。
紅一と蒼は荷台で倒れる。
一行を乗せた軽トラは大通りに出た。
「ぐあーっ!疲れた!」
蒼は荷台の上に、大の字になって倒れ込む。
「おい、まだ……気ー抜く……な」
言いながら紅一も横で倒れている。
カラスが空で鳴き、夕日が沈もうとしている。
桃の速いくて荒い運転に揺られながら、見上げた夕空は綺麗だった。
「紅一……ありがとな」
「うるせぇ。ピノおごれ」
「はは……分かった」
特に大きな事故もなく、一行は目的地に到着した。
桃は軽トラを戌岡家側と反対の道路に停める。
既に空には月が昇り、冷たい風が街を吹いていた。
「いやー楽勝だったな」
「どこがだよ」
家の門に入った後、軽口をたたく紅一を桃が蹴る。
「紅一さん、桃、ほんとにありがとう」
「わ、私も助けてもらってありがとうございました!」
雪、そして猿谷が頭を下げる。
「ちょっ、」
「やりたくてやっただけだ。気にすんな」
「そうね。そうだよ」
桃と紅一が返す。
続けて紅一が仁王立ちで言う。
「そんじゃお前ら。服ぜんぶ脱げ!」




