Episode.1 地獄門
「コウ! 危ないぞ、気一抜くな!」
「ッッぶねーな! サンキュー、アオイ!」
2人は自転車に乗って、坂を猛スピードで下っていく。先程 蒼が蹴り飛ばしたサラリーマンは、勢いよく坂を転がっていった。
「いや一気づかんかった。アオイが蹴らんかったら俺噛まれてたな!」
「ほんとだよ気をつけろ! あとコウ。俺等今どこに逃げてるの!?」
紅葉も散りきって、木々も肌寒そうな11月。戌岡 紅一、兎月蒼は、大声で話しながら自転車を駆る。
道路を走る車は無い。見つかるのは事故を起こして道路を塞いでいるものだけだ。
「取り敢えずおれんち行くぞ!」
「何で? うわっ」
蒼が角を曲がるとき、女が前から飛び出してきた。蒼は大きく体勢を崩したが、幸いこけずに避けることが出来た。
「危ねー。やっぱゾンビゾンビ増えてきたな。」
蒼は額の冷や汗を制服の袖で拭う。11月とは思えないほど汗をかいていた。
「コウの家めっちゃ住宅街だろ!?ゾンビ増えて危なくね?」
「確かにそうだけど……っと」
紅一はスピードを維持したまま、道に転がる死体を避ける。もしスピードを落としていたら、背後のゾンビに追いつかれていただろう。
「確かにゾンビは増えるな。けど家に入れさえすれば絶対生き残れる!」
「なんで!?」
「俺の親父自衛官だろ?防災に熱心だから災害時の備えがあんだよ!さすがにゾンビパニックは想定してねぇけど」
「あ~なるほどなー!! けどよーコウ! これはどうすんだよーーッッ!!」
前方には紅一の自宅である一軒家が見えていた。 しかし家の前には、8体ものゾンビがたむろしている。
一度止まり、家の門を開けている暇などない。
背後には追いかけてくるゾンビ。前方にも大量のゾンビ。 目的地を目前にして窮地に立たされる。
蒼はなんとか逃げ道を探そうとするも、分かれ道はない。ゾンビの集団を突破するのもとてもじゃないがムリだ。
蒼は紅一に視線を投げる。紅一の顔は真っ青だった。
──終わった。
その時だった。
「ぃ閃いたああ゛ああーー!!!」
紅一はそう叫ぶとグングンスピードを上げ、家の前のゾンビの集団に向かっていく。
紅一は何をしてんだ? 逃げるどころかゾンビに突っ込んで行くぞ?
「悪ぃアオイ! チャリ捨てっぞ!!」
紅一はまた叫ぶ。ゾンビも紅一に気づき、襲いかかる。
──両者が激突する──




