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第50話 縁

「ところで、丘の上の広場でおじいさんと会ったって言ってたね!どんな風貌だった?」

「えーっと…背はソラよりも高くて、首筋にあざのような紋様があって…手にはブレスレット。あとは…。」

マーサが僕に目配せする、

「あとは、腰に魔法杖をさしてて。手首に怪我のあとがあったような…。」


「なるほど。ライじいと会ったのかい。こっちに帰ってきたなら顔を出せばいいものを。」

ドレさんは半ば呆れ気味に言った。

「ライじい?」

マーサがきょとんとして聞き返す。

「そう。ライじい。仲間うちではトットって呼ばれてたいましたわね。そこに絵もありますのよ。」

ルーブさんは中年の男女四人が描かれている絵画を指さした。絵からでも明らかに伝わる。全員がかなりの手練れだ。冒険家にちがいない。


「ふふふっ、通称、閃光のドルティニ。この界隈で知らない者はいなかったよ!」

ドレさんは懐かしそうに絵画を眺める。

トットさん、やっぱり只者じゃなかったんだ。そんな雰囲気はしてたけど。

「ライ、って、どこからきたの?」

ナイス、マーサ。僕もそれ気になってた。

「ライ…つまり、雷ですわ。雷のならないこの地域で、雷を鳴らすのはライじいさまだけ。最速で動くときには雷のような音が鳴りますの。音が動きの後からついてくる感じですわね。」

「私たちの大叔父様にあたる人だよ!マーサちゃんからみても、そう遠くない親戚さ!」

「そういえば、ママのことも、クレイのことも知ってるふうだったっけ。」

「知ってるも何も。まぁ、肝心なことはしゃべんないからね!」


時々、イエさんの工房からものすごい激突音と金属音が鳴り響いてくる。僕たちは今日のところはお開きにして、それぞれ寝室へと向かった。



 ◇ ◇ ◇



何日か経った頃、


ガチャアン!

  ガチャァァン!


と地響きとともにとんでもなく大きい音がした。


その後、


カラァン

  …カラァン

     …カラァン!


と、すずしげな鈴の音が工房の方から響いてきた。



「おっ、仕上げの合図さ!もうそろそろだね!」

ドレおばさんの声が一段高くなる。

「どんなのに、なるんだろう?すごく楽しみ!」

マーサはわくわくが止まらないようだ。



しばらくすると、イエおばさんがスゥーッと工房から出てきた。

「できた…。ありがとう。」

イエおばさんの後ろには、たくさんの道具がフワフワと浮いている。

「うわぁ!魔法かぁ。久しぶりに見たよぉ。」

なんだか珍しく、ピートが感傷的なことを言っている。

「みんな…。座って…。」

マーサも僕も、はやる気持ちを抑えられない。少し前のめりに肘をつく。


「手を出して…。」


そう言うと、イエさんは僕にナイフのような小刀を手渡してくれた。まぁ、小刀といっても、ナイフより大きいのだが。パッと持った感じ、軽くて使い心地がよさそうだ。鞘に入っていて、常に携帯できるように専用の金茶色のベルトもついている。 

僕は鞘から小刀を抜いてみて、驚きと戸惑いを隠せなかった。なんと小刀とアームドが呼応し、互いに干渉を求めていたのだ。アームドと小刀を接合させてみる。全く違和感なく、1つになった。


マーサには元のブレスレットと透き通った緑色のブレスレットを渡していた。硬めの材質で、形状はトットさんのしていたブレスレットに瓜二つだった。中心部分が透けて見える。そこには見覚えのある紋様が入っていて、アンナさんが着けていたスカーフと同じだった。


作った道具の説明をするときのイエおばさんは冗舌で、早口で、何より楽しそうだった。

促されるままに僕たちは、それぞれの道具に元素を込めた。

小刀はフワッと温かい白光をまとったあと、元の小刀に戻ったが、マーサのブレスレットは、元素をこめると、煙が箱に充満するように深い翠色になっていった。


イエおばさんは「僕たちが小刀とブレスレットから認められた」と鼻息荒く、しきりに手をたたいて喜んでいた。なんでも、イエおばさん曰く、「道具は意思を持つ」らしい。


さらに僕には脛当てと手甲を。マーサにはストールと杖を作ってくれていた。

脛当てと手甲はどちらもすぐに体に馴染んだ。手に取ると大きかったが、持ち主にフィットするようにできているようで、つけると僕の体の大きさに合わせるように、道具が縮んでいった。物理的な耐久性に優れており、元素の蓄積も可能ということだった。僕の戦闘スタイルにはピッタリな道具だ。

マーサのストールは非物理的なものに強く、込める元素によっては物理的な耐久性もあげられるとのことだった。杖はヴィブロスの幼翼を芯にして、牙と羽を使ってできており、少し扱いづらいとの注釈がつけられていた。


マーサはブレスレットを二つ、左腕につけた後、よほど嬉しかったのか、すぐに杖を持って、あちこち振り回していた、

魔法の杖っぽいのに、特に何の反応もなかったのには驚いたけど。

道具は生きていて、どの道具も使い続けることで、道具との息が合っていくのだと説明された。イエさんに言われると、不思議とすんなり胸に入ってきた。


「また…おもしろい素材があったら、見せて…。」

そう言い残すと後片付けがあるとか何とか言って、工房へ戻っていった。


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