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第46話 ウルシゴク


遺跡へ入っていくと、土埃とぐるぐる雨が混ざり、十メートル先を判別することも難しかった。

「縦になろう。ピートは後ろを。マーサは両横を警戒して。僕はあたりの気配を探りながら道を選ぶことにするから。」

僕はずずぅっと円を拡げていく。辺りを観察するために“セルチ・ルーモ”(探索光)を薄く伸ばした。

その甲斐あってか、ホラアナグマや他の生き物に気づかれるよりも早く、こちらから手を打つことができた。


途中、少し離れたところでホラアナグマに襲われたらしいパーティーをみかけた。背後から一撃。目も当てられない。恐らく先ほどのパーティーだろう。

一筋向こうでは、怒号と悲鳴が入り混じっている。何人かが急いで逃げている。警戒しながら、遺跡の入り口に駆け足で向かっているみたいだけど、まだホラアナグマにあとをつけられているらしい。

関わりを持つと執拗に狙われる。おばさんたちはこのことを言っていたんだな。やっかいな生き物だ。マーサには内緒にしておこう。


僕たちは少し遠回りをしたが、ホラアナグマに遭うことなく、白い塔の近くまで来ることができた。

太陽は真上に差し掛かろうとしている。泥臭い香りに磯のにおいが混ざりこんできた。もう目と鼻の先に獣臭漂う洞穴が見えていた。



 ◇ ◇ ◇



入り口はかろうじて地上にあったが、道は地下へ続いていっている。地表にはたくさんの穴があいており、思ってたよりもずっとオープンな洞穴だった。

入り口付近はゴツゴツした大きめの石が多く、歩くのに少し手間取った。僕たちは一際大きめの、いかにも入り口ですと言わんばかりの穴から入ることにした。

僕たち以外にも何組も旅人は来ており、中には洞穴前にいるホラアナグマと関わりを持っている人たちもいた。

僕たちはできるだけ足早に入り口を通過して、奥をめざした。洞穴の中には陽光が差し込んでおり、かなりポカポカとしていた。


おばさんたちによると全く光の届かない階層までいくと石碑がある、とのことだったけれど、さすがにそこまで向かう気にはなれなかった。

というのも、入った瞬間から何かにずっと見られているような感覚があったからだ。ウルシゴクを見つけ次第、いや、見つからなくてもマーサと打ち合わせした時刻が来たら、すぐに帰路に着いたほうが良さそうな気がした。


父さんの地図にも全ての道が書いているわけではなかった。奥へ進めば進むほど、洞穴は広がり、途中で途切れている道が増えていく。周りを見渡すと、明るいところで何かを探す人もいれば、暗いところで採掘している人もいた。

めいめい好きなところで作業に励んでいる。なかには、岩や石には脇目もふらず、奥へ奥へ急いでいる人たちもいた。



「どこを探そうか?」

キョロキョロしながらマーサが言った。

「うーん、このあたりは太陽が差し込みすぎているから、多分違うはず。少し奥に進もう。」

「そうだね。そうしよう。」

マーサは時折、壁に指を向けては、元素の弾を打ちつけて、土を削った。奥へ進むにつれて薄暗くなり、野生の気配が強くなってくる。緊張感が徐々に高まる。ピートだけは相変わらず能天気に浮いていたけれど。

まわりで採取する人も減ってきた。心なしか敵意の気配が濃くなっている。 さらに降りていくと、とうとう差し込んでいる光も見えなくなってきた。しかし、完全な暗闇でないところを見ると、かろうじて光が届いているらしい。

ゆっくりとあたりを見回す。その時、「こっち。」という声が頭に響いた。

マーサ?

いや、誰だ。確かに誰かに呼ばれたけれど。後ろを振り返ってマーサにたずねる。

「どうしたの?」

マーサもピートもけげんそうに僕を見る。

「呼んだ?」

「…呼んでないよ?どうかしたの?」

呼んだよね。


再び、呼ばれる。音でもなく、声でもない。頭の中にスゥーと情報が流れ込んでくる。正確には呼ばれたというよりも導かれているような。

時折、地面が崩れてくる。ハラハラと落ちてくる土を見て、ピートは水鉄砲を天井に吹いた。


また、別れ道。

「ソラ、どうしたの?そっち?」

「多分、こっちだと思う。」

間違いなくウルシゴクはこっちにある。だんだん、確信めいた気持ちになってきた。声が強く、大きくなってくる。


「あの辺りだと思う。」

天井から水がピチャン、ピチャンと落ちている。薄暗さもなくなりかけて、暗闇にほど近い。穴の狭間にあった拳大の石コロ。

これだ。間違いない。


「あった、多分これだ。」

手に取ると石の周りがブゥンと揺れる。振動はつま先まで伝わり、全身に波動が伝わってきた。

「見た目だと全然わからないんだけど、これでいいの?」

「多分ね。日が暮れるまでに戻ろう。少し奥深くまで来すぎたし。」

来た道を急ぎ足で戻る。

グゥワゥン、グゥワァンとなにかの音が反響している。先ほどまで採取に励んでいた他の旅人たちの姿は一切なかった。

地表まであと二階ほどにさしかかったころ、異変の正体が判明した。


ウゥー、グゥアワゥ!


ホラアナグマの鳴き声とともに、ガギィンという鈍い音が響く。ホラアナグマと誰かが闘っている。

入り口付近の広場には背高の細身の男がホラアナグマと同等に殴り合っていた。


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