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第33話 旧地下道

足を踏み入れた途端、洞窟の奥からものすごい圧を感じた。マーサが一歩立ち止まり、僕の方を見た。互いに視線を合わせながら、うなずいた。

ピートは圧なんて意にも介さず、ヒョイヒョイと旋回しながら、先へ行ったりついてきたりしていた。

入り口から差し込む光がだんだん遠くなっていく。二、三メートル先より奥は真っ暗だった。

「マーサ、夜目は効く?」

「ううん、だめ。眩しい分には平気なんだけど。」

そう言いながら、軽く右手の人差し指を地面に向けて一回転させた。僕たちの前方に砂が浮きはじめる。

「何かあったら、砂が教えてくれるよ。」

左手でオッケーを作って、自信満々に言い放った。

「ちょっと待って。」

僕はそう言って、入り口側に手を伸ばし、光を掌に集めた。

「えっ!?」というマーサの声に、僕もオッケーを返す。

集めた光を前方に投げて、足下を照らしながら進んでいく。向こう10メートルほどまでは目視でもなんとか見えないこともない。

少し進むと、土とカビが混ざったような洞窟独特の匂いに混ざって、心なしか血の匂いも漂っている気がした。

振り返ると入り口は土壁へと変わり、それも徐々にこちらへ迫ってきているようだった。

「マーサ。入り口。」

「うん。追われてるよね。」

「やっぱり?」

気のせいじゃなかったのか。

「早く行かないとぉ、入口に追いつかれるよぉ。」

看板の言葉が頭をよぎる。戻ることはもう出来ない。ともかくロコ・メッゾまで進まないと。僕たちは足早に奥を目指した。


しばらくすると、マーサが急に「はいっ!」と言って手を挙げた。僕の方をじっと見ている。

「どうしたの?」

「何が『どうしたの?』よ!入り口でやってた、あれ。何?」

「ん?光を集めただけだよ?」

「えっ?光って集められるの?」

「集められるよ。マーサが緑の元素と仲良くしてるのとたいして変わんないよ。」

「あー、そうなんだ!」

「僕もはじめて見た時、砂や緑って扱えるの?ってなったし。」

「ふふっ。そうなんだ。」

「水と土と緑以外の元素もけっこう扱えるの?」

「うーん、どうなんだろ。地の国の元素バランスが水と土に偏りがちだから、あまり他の元素は試したことないなぁ。ソラは?」

「僕は基本的に光の元素かな。光の性質を使えば、どの元素とも混ぜられるから。」

「だからか。お父さんがね、ブレスレットに流してくれたソラの元素が普通じゃなかったって言ってたんだ。見た目も、ほとばしるような光で、稲妻かと思ったって。」

「あれはピートの水と合わせたつもりだったんだけど。少しだけ雷の元素と混ぜたから、稲妻と言われればそうかもしれないね。」

「混ぜやすいとか、混ぜにくいとかあるの?」

「あるよ。父さんが言うには全部の元素と混ぜられるらしいんだけど。僕はまだまだ。」

ニコニコ話していたマーサの表情が急にくもる。口元に人差し指をもってきて、ささやき声でマーサが言った。


「ソラ。」

「うん、前だね。」

ピートは相変わらずふわふわと浮いている。

気配でわかる。何か、いる。それも攻撃的な何か。早速、魔物かな。まだ二つ目の別れ道から少ししかが進んでいないのに。

僕は上半身にアームドを展開した。マーサも砂を周囲に漂わせている。

突如、小さな空気の刃がいくつも飛んできた。マーサは砂で受け止めて、僕はアームドで弾く。

跳ね返った空気は横の土壁を削りとっていた。一つ一つはたいした威力ではないみたいだが、手数が多い。無数に見えない刃が飛んでくる。防戦一方になった。このままだと、らちがあかない。

左手で防ぎながら、右手に光の元素を集める。


“イクスプロド・ルーモ”(拡散する光)


父さんからはじめに教わった技。攻撃の隙間をぬって、前方に放つ。小さな光が真っ直ぐ飛んでいく。ある程度進んだところで四つの白光が一瞬にして斜めへと広がる。

「ポップルバットが二匹!右上と左下。今、スタンしてる!」

すかさずマーサの前に移動し、盾になる。マーサは両手を前に突き出し、ぐぅっと拳を握りしめる。


“ソルディジ・グルンド”(土人形)


敵に土がまとわりついていき、やがて、大きな泥の塊になった。

「ふぅー、これでオッケーだね、ソラ。守ってくれてありがとう!」

「こちらこそ。それよりも今のは?」

「周りにある土の元素を実体化させて、対象を固定するの。ちょっと強めにやっちゃった。」

ほどなくして、土の塊からフワフワした光が流れ出てくる。

「還ったね。進もうか。」

ドロップギフトを回収して、奥へ進んでいく。


「さっきソラがやってたのって?」

「あれは、収縮した光を解き放ったんだ。」

「きれいな技だね。」

何を思い出したのか、ピートがこちらを向いて、クスッと笑った。



その後も、わかれ道は続いていく。

地図を見て、慎重に慎重に進むが、いくつか過ぎると、だんだん自分たちがどこにいるのか、確証が持てなくなってくる。

地図はオートマップなので、進んだ分だけ間違いなく進むし、広がりもする。地図が確かなのは確かなんだけれども…。

ポップルバットやシャドウバット、ドウクツリーなど、たくさんの魔物に襲われた。もちろん、出会う前にマーサが感知して、事なきを得たけれど。


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