表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/55

第32話 向日葵

カバンの中を片付けていると、ノートが淡い土色の光に包まれていることに気がついた。

「マーサ、見て。」

光をたどって、ページをめくる。

「ひまわり」と一言浮かびあがり、消えていった。

ひまわり…?どういうことだ。でも、ヒントだ。父さんからの挑戦状だ。

「マーサ、この国にもさ、ひまわりってある?」

「ひまわり?あるよ?さっきも地下道の入り口に咲いてたでしょ?」

「えっ、そうなの?」

どこにあったんだろう。

急いで、入口を見にいく。マーサが指さす方向をしばらく眺めて、ようやく気づいた。そこには高さ三、四メートルにもなろうかというひまわりが群生していた。光の国とは色もサイズも違ったから、ひまわりだと認識できていなかった。

この国のひまわりは、とても壮麗な花だった。茎は青で、葉っぱが茶色。真ん中の部分は光を溜め込み、発光している。光の国とは異なり、元素の輪郭がはっきりしていて、美しい。



長屋に戻って、話を続ける。

「地の国のひまわりって、みんなあんな感じなの?」

「んーと、そうだね、あそこにあったのは少し小さいかな。色も少し鮮やかめだし。砂漠の方に行けばもっと大きなひまわりがあるよ?」

ひまわりを見つけたはいいが。一体どうするんだろう。いや、父さんのことだし、元素だよな。

「ソラ、ひまわり、がヒントだったよね?」

「うん。ひまわり、だね。」

「元素を使って、再現したらいいんじゃないのかな?青と茶色なら、水と土でなんとかなるよ、きっと。ピートちゃんもいるし。」

マーサも同じことを思ったらしい。試す価値は十分だ。



改めて得意元素について話し合う。

意外だったのは、それぞれが扱いやすい元素がバラバラだったということ。でも、そのせいか、簡単に元素でひまわりを作れそうな気がした。

真ん中の光は僕が再現できる。早速、マーサとピートに協力してもらいながら、ひまわりを作ることにした。

特に細かい作業でもないので、どの部分も労せずに元素を集めて、ひまわりの形を作ることができた。形を維持することも、そこまで難しいことではなかった。

元素のひまわりをノートの表紙に重ねてみる。スゥーッと吸い込まれていく。先ほどのページまで、サァーッとひとりでに開いていく。線がだんだんとうきあがり、数秒の後には立派な地図になっていた。

そして、見たことのない文字が浮かんでくる。

…いや、待てよ。確か、土の国の地図ページを見た時と同じ文字だ。

ふと横を見ると、マーサの頭上に電球が光ってみえる。

「ふふふ。ソラ、これ古代文字だよね。」

「そうなの?…もしかして、読めるの?」

「もちろん。任せなさい!」

マーサの鼻が天まで伸びていきそうだ。



「じゃあさ、先にこのページから見てくれない?」

前に地図が浮かび上がってきたページを開く。

「えーっとね…国名は…土の国。昔の地の国の呼び方だよね。あとは、ドランドとレイスト、ホザートなんかもある。雨壁も書いてあるし。これ…昔の地図だよね。今の地図とほとんど同じじゃない?」

マーサは物珍しそうに地図を眺めた。

「洞窟や山もあるね。この地図によるとレイストには街一つしかないみたいだけど。マーサはレイストには行ったことなかったんだっけ?」

「ないよ。話に聞くくらい。」

地図の中でも一際目立つ山。マーサはじっとそれを見つめる。

「んー、洞窟はわからないけど、山は多分、アクヴォ・モントだと思う。街はいくつあるんだろ。ママからはママが住んでた街の話しか聞いたことないけど。」

「アクヴォ・モント?」

「うん。山の中にいろいろな水が溜まっていて、時々噴水するんだって。」

「水が山になってるの?」

「巨大な水滴だって、ママは言ってたけど。」

「すごいね、そういえば、この真ん中にある印は何なんだろう。」

「うーん…わかんないね。一体何なんだろう?」

地図は手を触れることで、拡大することも縮小することもできた。かなり細かい地図だ。


次にひまわりのページを広げる。

「これは?」

「旧地下道って書いてあるね。今から進むところの地図じゃない?」

それは、ありがたい。迷わず進めそうだ。

「じゃあ、そろそろ行こうか。」

立ち上がって、体を少しほぐす。

「ソラ、忘れ物ない?」

「ないよ。マーサは?」

「大丈夫!」

マーサとピートはハイキングにでも行くかのようにルンルンとしている。僕は少し手汗がにじんできているのを感じた。

長屋から出ると強烈な陽光に視界が白んだ。まぶたの上からでもわかるほどに、容赦ない日ざしがサクサクと差し込んでくる。高い高い空の下、辺りは陽気なひまわりの匂いに包まれている。




地下道に入る前、脇にある看板が目に入った。


「急げ!急げ!ロコ・メッゾまで突き進め!」


地図を眺めてみる。道は入り口と出口の近くを除いて、立体的に枝分かれしていた。よく見てみると、まだ続きのありそうな道がたくさんあった。

途中、一箇所に道が集まり、再び分かれている。この収束地がロコ・メッゾと呼ばれているところだろうか。

深呼吸をして、意を決す。緊張しているのは僕だけらしい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ