番外編2 ルシファーはカミラが大好き(21話の前)
ルシファー様の私に対しての距離感は0に近い。気付くと、いつの間にか側にいたり、離れていても、「カミラ」と手を差し伸べて呼ばれてしまう。
「いや分かってましたけど、ものすごい溺愛ですね? もうすぐアルカナに向けて出発なのに、離れたら寂しくてやつれちゃうんじゃないですか? 皇太子殿下の方が」
侍女姿の弟が、寄り添って座る私達に物申した。
「そうかもしれないね」
微笑んで答える殿下に、弟は目を見開いて溜息をつき、後ろに控えたリーディアを見た。
「ディア姉様、私、最後に温室を見ておきたいな。一緒に行こう? はい、騎士のみんなも撤収、撤収〜」
弟がアルカナの民を連れて行き、部屋には二人が残された。
「ふふ、誰もいなくなったな」
ルシファー様は嬉しそうだ。私も正直二人になれたのは嬉しいけれど、後で弟に何かを言われるのだろうなと思うと少し気が重い。
「アルカナに戻ったら、何をするの?」
「年始のパーティーがあるので、それに出席して後は休みます。ルシファーは、この後のご予定は?」
「母に任された仕事があるから、最低限の事はするよ。後は自由かな」
「最低限‥‥ですか?」
「ああ、国政についても基盤は母が整えてくれたから、私はそれを継いでこの国を守り、最低限の治世をして次に渡す、そう言う約束だ」
積極的に改革しようとか、そう言うスタンスではないのね? 基盤が整っているなら皇帝自身が必死にならないと回らない訳ではないと思うし、私が嫁いだ後は彼のサポートをしたいわ。民との間に入りたい。
「何を考えているの?」
顔を覗き込まれ尋ねられたので、
「私達の未来についてです」
と答えたら、抱きしめられた。
「そんな可愛い事を言ってくれるなんて、嬉しいな。私がこれほどあなたを愛するようになるとは‥‥人生って面白いね」
腕を緩めて金の瞳が私を見つめる。何を思っているかまでは分からないけれど、底知れぬ金色が優しく細められた。
「では愛しいカミラの為に、私も頑張ってみようかな」
「頑張るって、具体的に何をですか?」
ルシファー様はいつも余力を残している感じがするから、この方が全力で何かをする姿はあまり想像できないわ。
「さあ、何だと思う?」
答えを期待されていた訳ではないらしく、すぐに唇を塞がれた。でも、私の為と言うのならば、悪い方には行かないわよね。
「楽しみに待っていて」
そう囁かれ、何かしらと思いながら頷いた。




