21 未来へ
出発日の朝は、ルシファー様が宮殿の外まで見送りに出て下さっていた。馬車の前までエスコートしていただく。
「お世話になりました。陛下にもよろしくお伝えくださいませ。また春に伺います」
リーディアと二人でお辞儀をする。ベリーは指輪にして嵌めていた。
護衛騎士が見守る中、馬車に乗るため背を向けて扉の手すりを持った時、すぐ近くでルシファー様の声がした。
「カミラ」
呼ばれたので振り返ったら、リーディアと弟が彼に対してかしこまっている前で、私の腰に手を回して口付けた。
「またね」
赤くなる私を見て満足そうに微笑んで、体を離す。
その向こうに、瞳をキラキラさせて“愛だわ!”と思っているであろう従姉妹と、少し呆れ顔をした弟が見えた。
そんな想定外のざわめきを残し、馬車はアルカナへ向けて出発した。
年末年始を離ればなれで過ごしたリーディアと夫のカリス卿が揃って静養のためカリス辺境伯領へ行ってしまったので、私は王宮で静かに過ごそうとしていた。
「カミラ姉様、冬休みの課題は終わった?」
毎日遊びに来る弟にため息をつく。
「あなたもお見合いした方がいいんじゃない?」
「えーっ、私はデビュタントを終えてからでいいよ。来年の春までは、二人の姉様と遊ぶんだ♪」
私の膝の上にはベリーが座っている。
「それよりも、エストリアの皇太子殿下は、思ったよりもカミラ姉様にベタ惚れだったね?」
ニヤニヤ笑いながら見られて気まずかったけれど、
「ルシファー様だけではなくて、両想いなのよ」
と言うと、弟はしょんぼりした顔になった。
「あーあ、これで“アルカナの金と銀”って評判の高い姫が二人とも他の男のものになってしまった‥‥私の楽しみがなくなったよ‥‥」
「私とリーディアの他にも、風と炎と土には、妹姫がいるでしょう?」
「そうだけど、私は二人の姉様が好きなんだよ」
また泣き真似をしはじめたので、頭を撫でてあげた。
ルシファー様とは、お手紙のやり取りをしなくてもベリーを介して会話ができるし、もう窮屈な毎日には戻らなくて良さそうだ。
“恋をしてみたい”から“両想いになりたい”に成長した願いも叶い、やりたい事も増えて充実した生活になった。
婚活市場での戦いには勝利したと言えるかもしれないけれど、今がゴールではなく、この先もずっと戦いは続いて行く事を私は知っている。
両国の架け橋となり、皆のために良き国母になれるよう努力していきたいと思った。
これでカミラ殿下の物語は終了です。
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