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17 地下1

 目が慣れて来ると、広い部屋の中に移されたのが分かる。有無を言わさずだったので部屋着のままだから寒いし、足も裸足だ。

 明かりは壁に何箇所か設置してある魔宝石がぼんやり光っているだけで、窓のようなものは無い。


 小さな炎を出して灯りにした。隣にはベリーが蹲っており、目を閉じている。力を使いすぎたので眠っているのだろう。いつ目覚めるのかしら? ルシファー様に連絡を取りたい。


 炎の球を飛ばして周囲を確認する。地下と言うこともあり天井が低めで、部屋は魔法練習棟ぐらいの広さがあった。けれど、出入り口が見つからない。

 扉がどこにもないのは、隠しなのか、それとも元々ないのか‥‥考えながら炎を中央に移動させると、大きな影が動いた。


 床には悪魔を呼び出した後のような、大きなサークルの跡が残っている。その上に、四肢を鎖で繋がれた獣のようなものを確認して、炎が消える。

「‥‥‥‥」

 私は眠るベリーを抱きしめ、壁際に寄ってしゃがみ込んだ。大人の男性の倍はありそうな位大きかった。動物に例えるなら、熊のような姿だった。


 早くベリーが起きますように、ルシファー様と連絡が取れますように!

 小さな声で何度話しかけても、ベリーは反応なしだった。細く溜息を吐いたら、突然、大きな唸り声が響いた。

 四肢を繋ぎ止めていた鎖が、1箇所外れたようだ。顔がこちらを向いており、近付こうとしているのか、ぴんと張った鎖が嫌な音をたてる。


 ‥‥ここは別邸の地下って言ってたわよね? 人里離れた場所ならまだ良いけれど、もしかしたら街に近いのかもしれない。


 アルカナには、“悪魔の深淵”の森に現れた魔物が人を襲った前例もある。

 頭の中で理由付けをする。そうしないと恐怖で動けそうにないからだ。私はやがてエストリアの国母になる者、国民も、ベリーも、離宮にいる皆も私が守らないと‥‥!


 震える足で立ち上がった。自分とベリーに防御魔法をかける。四色の球を魔物に飛ばして確認する。水と風は効果があるようだ。

 ベリーのように力を使いすぎると眠ってしまう性質だとしたら、相手の体力を削ればいいんだわ。幸い、まだ自由には動けていない。


 風の刃を飛ばして攻撃する。けれど、風を水に変えてもあまり手応えがなかった。致命傷とは言えない傷ばかり増えていく。


 そのうち、大きな音がして鎖がもう1箇所引きちぎられた。前足が自由になった魔物が、咆哮と共に両足を振り上げ、その風圧が私を襲う。

 防御魔法で耐えている間に、魔物は後ろ足の鎖を叩き壊した。



 現実逃避なのかしら。今まで生きて来た15年間の記憶が蘇り頭を巡る。そう言えば、私、ルシファー様にまだ好きって言ってなかったわ‥‥こうなる前に、早く言っておけば良かった‥‥

 そんな妄想も、魔物と目が合って我に返った。

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