13 エストリア2
翌日は、朝から皇帝陛下にドレスをプレゼントして頂いた。途中から陛下と入れ違いにルシファー様もドレスの素材選びに参加されたので、弟とリーディアが気を遣って二人にしてくれた。
「アルカナはレースや刺繍が有名だけど、エストリアは毛織物が盛んなんだ。春に使える薄いものもあるんだよ」
ルシファー様が並べられた生地を手に取る。柔らかい光沢のある、薄手で上質な生地が揃っていた。発色も綺麗だ。
「どれがいいかな? あなたは何でも似合うから迷うな」
こんなに仲良く選んでいる姿は、側から見れば恋人同士だわ。でも本当のところはどうなのかしら‥‥どうしてもルシファー様の気持ちのありかが気になってしまう。
「カミラはどう思う?」
「私は‥‥これが良いかと」
新緑を連想させる明るいグリーンの生地を手に取る。
「そうだね、これをベースに、後は専門家にアドバイスを貰いながら決めようか」
「ええ」
デザイン画を元に、商人がオーバースカート用のレースや生地を持ってきた。
ソファーに座って話を聞きながら隣を窺う。基本的に男性ってこのようなドレス選びは興味がないと思っていたけれど、この方は退屈もせずに最後まで付き合って下さるつもりなのかしら? そんな物好きな男性って、弟ぐらいしか知らないわ。
視線に気付いた殿下は、片手を私の腰に回した。
「そんなに見つめられると、キスしたくなるよ」
そう囁かれて赤くなった私を見て楽しそうに笑い、前を向く。
「いやはや‥‥本当に仲がよろしいのですね」
商人が驚いたように額の汗を拭いていた。
商人が驚いていた訳は、ルシファー様がこれまで国内の他の令嬢に全く興味を示さなかったかららしい。侍女姿の弟が、後にそんな情報を仕入れて来た。
夜には歓迎パーティーが開かれた。弟の情報によると、年末なので会場の雰囲気も華やかなものになっているそうだ。私達はまだ入場しておらず、控室でお迎えを待っている。
私が持参したドレスはアルカナの民族衣装でレースを沢山使っており、5つ歳上の皇太子殿下に合わせて大人っぽいデザインにしていた。
やがて現れたルシファー様は、ドレス姿の私を見て微笑んだ。
「カミラ、綺麗だよ」
そう告げられて頬が熱くなる‥‥朝から思っていたけれど、二人きりの時以外でも敬称なしで名前を呼ばれているわ。いつからだろう? 自然すぎて気付かなかった。
彼の衣装は昼間より豪華になっていたけれど、やはり色は黒が多めだった。装飾品は、いつもの金色に私の瞳と同じペリドットも使われている。
「ルシファー様も、素敵です」
黒は彼にとてもよく似合っていた。その腕に包まれると安心する。今も、ありがとうと言いながら腰に手をまわされて、喜んでいる自分がいた。
控室を出て、殿下と共にすぐ近くの会場へ向かう。後ろにはリーディアと、彼女をエスコートするクリブランド卿が控えており、リーディアは満足そうに私達を見ていた。
そして官吏から紹介された後、彼と共に会場へ足を踏み入れた。
読んでくださってありがとうございます。
梅雨に入り、部屋の中も外もジメジメして不快指数が上がっておりますが、頑張って乗り越えよう!おー!




