【短編】不老不死が語る
ピーッ。ピーッ。
宇宙に音は響かないが、ヘルメットの中で聞こえる。
機械音。スーツ修理用ロボットのだ。
ふと目を開け、周りを見渡すと、右あたりに馬頭星雲が大きく見える。ああ、ここに来るのは二回目か。
宇宙の漂流を繰り返し、繰り返し、もう50億年くらいたったんじゃないか?自分で作った宇宙スーツは、眠りについてる間、かなり早いスピードを出してくれる。おかげでこの50億年で多分だが宇宙一周くらいしたかもな。いや、それはないか?
遠くからロケットが見える。そりゃ、普通くらいの大きさのロケットだ。
地球から離れて50億1万6134年。久しぶりにロケットを見た。スーツが記録してくれている。地球にかつての国々は残っているのだろうか?いや、地球は50億年もすれば太陽のせいで破滅すると聞いた。もうほかの星に住んでいるのだろう。そこにはロシア人も、日本人も、アメリカ人も、ドイツ人も、ユダヤ人も、みんな暮らしているのだろう。そんな妄想を頭の中で繰り広げる。
ロケットが目の前を通っていくのを見ると思わず中に入りたくなった。人としゃべりたい。この50億年間、宇宙の開拓者や、ロケットのパイロットなど人とは50回ほどしか話していない。孤独は彼にとって慣れっこだったが、1億年の孤独もつらい。
ドンドン。試しにドアをノックしてみる。
「おや?旅人かね?入ってどうぞ。」これは...確かドイツ語だ。50億年の間、言語だけは変わらず生きていたのであろう。
ドアを開け入ると、たくさんの人がいた。12人はいる。
その中の一人の女性がしゃべる。
「やぁ!いらっしゃい!私はベル。こちらはティーガーン星bからK2-18b行きの12人を乗せたロケットバスだよ!...正確には、避難用のバスだけどね...」
「何かあったのか?」ベルに聞く。
「戦争よ。」
「戦争?」疑問。
「ロシア系遠征軍とドイツ系移民、そして原住民のK2-18b人たちの三つ巴の戦争。昔は彼ら原住民とも仲良く過ごしていたのに、後から来たロシア系遠征軍が星の統一を願ったせいで...」
「今も戦争なんかあるのか?」
「まるで神様みたいな言い方ね。そりゃ、宇宙は今は大変なことになってるわよ。星々で戦争が起きてて、安全に住めるところがなかなかないの。まったく、人間の欲は恐ろしいものね。一つの星では飽き足らず、何個も欲しがるなんて。」
「地球はどうなったんだ?」
「地球...なんだっけ...」
(たしか、歴史書に記述してある、10億年前の星じゃないですか?)隣の男がひっそりベルに耳打ちする。
「そうだ!確かそうだった!ごめんね。もう25歳だから、小中学のことなんて忘れちゃって。」
「歴史のことなら俺のほうが詳しいぜ、異邦人。ところで君の名前は?」男がいう。
「50憶3000年くらい前につけられた名前ですが、趙政とかいう名前でしたね。」
「!!!!」目の前の人々に驚きの沈黙が走る。
「あなたはいったいどういう人なんだ?」男が聞く。
「私のことを、始皇帝だとか、いろんな名前で呼ぶ人がいますがね。では私の覚えている限りで私の人生を話しましょうかね。」
「時に紀元前250年あたり。私は中国を統一した。たしか、そのころ名乗ってた名称が、皇帝...といったか。その後、数々の人々に不老不死の薬を探させた。しかし誰も見つけることなく帰ってくるか、帰ってこぬかだった。無能な部下に嫌気がさした私は自ら見つけ出し、それを食した。そうするとみるみるうちに18歳ごろの顔に若返り、体も動くようになった。何年かすると政治もだるくなってきたので影武者を殺してこれを自分だと言い張るように、と側近に命令した。自由になった私は西へ向かった。西。そう、ヨーロッパだったけ。があった場所だ。私は薬の力で顔を変えることができた。だからいろいろな民族の顔になっていろいろな国で遊んでいた。ローマ、魏、蜀、呉、倭国、フランク王国、五胡十六国、イングランド、神聖ローマ、フランス帝国、徳川幕府、清、ドイツ帝国、ロシア帝国、ソビエト連邦、ナチスドイツ、大日本帝国、アメリカ、ロシア。そこらへんだ。私は長生きした分の技術力を生かして、様々な発明品を生み出した。電気、ロケット、原子力、反物質。すべては私から始まっている。」
「じゃああなたは破壊者じゃない!原子力も、反物質もすべて星侵略の破壊兵器のために使用されたのよ!」ベルが言う。
「あなたは私の友達のことを知らない。私の友達は私とともにダイナマイトを開発したが、それが人殺しに使われるようになり、本人は大変悲しんだ。私も、核戦争だのなんだの聞くと、いい気持にはならんよ。」
ベルは黙る。
「その後だ。私は自分一人でマイクロジェット加速器付き宇宙スーツとスーツ自動修復器と虚無からいろいろなものを生成する機械を作った。150年ほどかかった。そのころは第3次世界大戦がはじまっていたので、中立国のスイスに亡命していた。そこで私はロケットを開発し宇宙へ飛び立った。ロケットといっても、椅子みたいなロケットさ。部屋みたいなのはなく、椅子の裏にマイクロジェットを付けたみたいな形だがね。少しいじれば机に、ベッドに、ソファに、家にだってなる万能アイテムさ。宇宙にポツンとある椅子。基本は、ベッド型で使用しているけどね。」
「ではあなたは宇宙1ともいえる天才ということ?」誰かが冗談交じりにそういう。
「ハハハハハ!そうかもしれないな。」
「話を続けよう。私は机型にしていろいろなものを開発した。マイクロ知識注入器、物体収縮、拡張器。いろいろな万能アイテムが、このバッグに入ってる。それで50億年をつぶした。今じゃいろいろな発明品が入ってるさ。」
「さ、今の話を聞いて不老不死はうらやましいか?」
「うらやまし~!」みんなが呼応する。
「残念ながらいいことばかりじゃない。むしろ悪いことばっかだ。友人はバッタバッタ死んでいくし、孤独で暇だし、戦争に駆り出されるは拉致されて技術者として働かされるわ。そりゃ大変!あんなもん、食わなきゃよかったさ。」
皆は、そう考えるとそうだな、みたいな顔をする。
「さ、これで話は終わりだ。私は宇宙の旅にでももう一度出るとするかね。」
"まもなく、当ロケットは、目的地に到着いたします。"アナウンスだ。
窓を見ると、青く光る星が見える。地球がフラッシュバックする。とたんに涙があふれた。
2度と見れない青い海、さざ波の音。カモメの鳴き声。踏切の音。暴走族のうるさい車。すべてが懐かしく感じる。50億年前の日常。それが前にあった。
ロケットは大きな音を立てて着地した。中から13人の人が足を出す。
なんかしょーもないつまんない文になってしもた!!まずい!と後々思いました。暇つぶしに書いてみた作品なので、暖かーい目で見守ってあげてください。そういえば、史実では始皇帝は不老不死の薬を得れずに死んでしまったみたいですね。しかも巡遊の途中に。死ぬのを民に知られるとまずいと思った側近たちは死体のまま巡遊を続けたらしいです。しかも死臭を隠すために魚をたくさん乗せた車が並走したとか...ちなみにそのあと秦はすぐ滅亡します。これが100日天下とかいうやつですかね。