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9,可愛い可愛いハルイお兄様


 「セレーネ!大丈夫だったか!?何か傷つけられたりしなかったか!?」

 「ハルイお兄様。私は平気ですよ。それより、終わりましたか?ロックは解除されているはずですが」

 「ああ、あと少しで終わるよ。何せ量が多いから全員にばら撒くまでに時間がかかる。それが終われば地獄の始まりだ」


 ハルイお兄様は黒い笑みを浮かべた。家族以外はわからないかもだけど。


 この国はもうすぐ、地獄を見る。国の恥を晒されたウィルバイツ王国が黙っている訳はないだろうが抗議したところでまともにとり合う国はないだろう。国が滅びるまで針の筵で暮らすと良いさ。


 公爵家である私達が魔鉱石の鉱山を有している限りもう滅亡は目の前だろうが。鉱山ごと転移して国外にトンズラするわけだから。


 「転移陣の方はどう?進んでる?」

 「もうできた。明日の夜明け、ここを発つよ。領民には既に伝えてあるから皆その時間は引きこもってるはずだし丁度良い時間帯だ」


 セイに聞かれたハルイお兄様が余裕の表情で答える。流石ハルイお兄様。仕事が早い。


 「そうか」 

 「のぁ゛っ…!な、な、何を?」


 セイがそう反応した瞬間ハルイお兄様の体が宙に浮いた。私がセイに指示を出していたのだ。ハルイお兄様は睡眠を削って転移陣を描いてくれただろうから終わったことを確認できたら無理矢理でも寝かせることにしていた。ハルイお兄様は疲れている時こそ余裕そうな表情を浮かべるので分かりやすい。普段わかりやすく表情を変えないのでね。


 「暴れないで、僕あまり力強くないから歩いてる途中に落っことしちゃうかも」


 「………むぅ」


 ハルイお兄様は不服そうだったが疲れているためかそれ以上の抵抗はしなかった。



 「お姉様。今の、ハルイお兄様。可愛かったですね。あんな一面があるなんて」


 ティアが私の手を繋いで、セイに大人しく運ばれているハルイお兄様を見て言った。


 「確かに。むうって……ふっ…その辺の18歳男子に比べると圧倒的に可愛いね」

 「はい!ハルイお兄様は童顔ですし女装も似合いそうです!」


 ティアよ。言っておくがハルイお兄様はめちゃくちゃ可愛い。とても似合うぞ。昔カイリお兄様に女装させられてたのを思い出す。


 「…?どうしましたか?」

 ティアが首を傾げている。今日も可愛いな。

 「いや、昔のことを思い出していたんだ。カイリお兄様に揶揄われてハルイお兄様が女装をしたことがあったな、と」

 「え!そんなことが……!画像はありますか?」

 

 ここまで食いつきが良いとは思わなかったが、当時の私もあまりの可愛さに水晶に記録していた。証拠の水晶ではなく、幼い頃に使っていた水晶。

 ハルイお兄様が改良して動画を残すこともできるようになり、画質も良くなったが昔は目の荒い画像を残すだけだった。


 「綺麗な画像じゃないけどないことはないよ。でもハルイお兄様には秘密だからね。おいで」

 「はい!」


 私はティアを連れて自室の棚を開けた。大小様々な水晶が出迎えてくる。

 「これだよ。右がハルイお兄様で左がカイリお兄様」


 「わぁ…!可愛い。天使みたい」


 満面の笑みを浮かべるカイリお兄様と天使の子にしか見えないハルイお兄様。フリルやリボンを大量にあしらわれたドレスを着せられたハルイお兄様は半泣きだ。当時を思い出すとつい口元が緩んでしまう。


 「…?セレーネ、何を見ているの?あとハルイは寝たよ。ベッドに乗せた瞬間糸が切れたようにね」

 「そうなんだ。やっぱり疲れてたよね。明日までに回復してくれると良いけど」

 「多分大丈夫だよ。それで、何を見ていたの?」

 「ああ、これだよ。ハルイお兄様とカイリお兄様の幼少期。貴重だよ」

 「おお…可愛いな。この黒髪の子がハルイだろ?やっぱり少しは面影はあるんだな」

 関心したようにセイが呟いた。

 「ハルイお兄様はこの屋敷の男衆の中で一番可愛いよ」


 お父様はがっしり系、カイリお兄様は細マッチョ、騎士達も似たような感じだがハルイお兄様はあまり激しい動きをすることがないからか華奢で色白。魔道具を作るときにできた傷はカイリお兄様かティアが治していたので手も一切傷が入っていない。



 男女合わせるとティアの次に可愛い。ティアが世界で一番可愛い。これは譲らない。絶対に。ティアは全ての基準。


 ちなみに私はロルフとの一騎打ち、6歳の時に腕を吹っ飛ばされているが拒絶魔法で再生されている。再生すると傷が残るので私は無傷というわけでもない。      

 

 でもこれはカイリお兄様もティアにも治すことはできない。黒竜の加護持ちは魔力同士が反発し合って傷が余計に酷くなるなんてこともある。

 国が加護を受けていても個人に加護を受けていない人に対しては違う魔力属性でも効くが。一般人に対して拒絶魔法を使った後に浄化魔法を使ったりとかは出来る。


 白竜と黒竜、2人は万年新婚夫婦だが魔法の相性は最悪。


 それは、嫌だな。治そうとしてくれたのに余計酷くなったのを見せるのは。術者の精神的にもかけられた本人も。


 まあ最悪幻影魔法で見えなくすれば……良くないな。看破というスキルがある。これは青竜の能力だ。ティアバルト王国にもウィルバイツ王国にもいない。青竜は寒冷な国にいるからだ。ここは両国共に温暖な国だ。



 降水量が少ない地域には緑竜がいる。

 能力は緑化でこれを持っていると凶作や不作に見舞われることも、自然災害によって被害を受けることもない。また、降水量が少ないので水を蓄える植物を生やすこともできる。これは飲み水になる。畑は年に何回か降る雨があれば良い。これも結構便利だ。



 青竜は寒冷で海がある場所にいる。

 能力はさっきも言った看破と海人。海人とは海に入って貝や海藻を取る人のことだ。これがあると海の幸が豊富に取れ、海鮮料理に困ることはない。寒い地域なので山の幸にはあまり頼れないのだ。

 看破とは物事の真相を見抜く能力。私の幻影魔法はこれによって見破られてしまう。



 あとは幻の存在だが氷竜がいる。とても凶暴だと伝承されている。何でも、気に入らない人間は氷漬けにして殺してしまうんだとか。

 まあ、百聞は一見にしかず。会ってみないとわからないこともある。それに攻撃するには理由があるはずだ。自分の身に危険を感じたり、大切な仲間が傷つけられたりすれば野生動物も攻撃する。それと同じだろう。


 先入観を捨て去って本能と割り切ったとき誰かの声が聞こえた気がした。



 ボクが野生動物、か


 と。



 まあ空耳だろう。

 

今回の登場人物

・セレーネ・バークレイ(13)

・アレクセイ・ウィルバイツ(14)

・ティア・バークレイ(12)

・ハルイ・バークレイ(18)

・???

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