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8,断罪のパーティー(仕込みあり)

 

 遂に卒業パーティーの日がやってきた。


 事前の婚約破棄は結局できなかった。

 お父様が小さくなって謝罪に来たが私は早めに転移などの準備をするように告げて1人で家を出た。まあロルフは護衛でセイは1歳差で在校生として一緒に行くので1人ではないか。



 そして私の服装は今回はパーティードレスではない。どうせ婚約破棄されるのに気合いを入れてドレスを着る気にはならないし着ても普通なら惨めに1人で退場するはずなのでいつものシャツに他のジャケットなどを羽織った服で行った。まあ燕尾服だな。黒竜から服は貰ったが普段着にはできなさそうな見た目なので戦闘用に。


 それに無造作なウルフカットの令嬢など見たことがない。その点からもドレスを着ない理由になる。


 

 「バークレイ公爵家、セレーネ・バークレイ公爵令嬢!」



 自分の名が呼ばれたので入場する。私は在校生だが本来ならエスコートを受けて婚約者と入場するはずだった。


 あーあーあー。私の格好に驚きつつもギャラリーがパカッと2つに分かれると見るに耐えない婚約者が立っていた。男爵令嬢の腰を抱いている。


 ここに護衛のロルフはいない。セイも席を外している。

 私の味方はこの場所には私だけ。緊張は顔に出さず、無表情で花道?を進む。

 


「セレーネ・バークレイ!俺は今この時を以て貴様との婚約を破棄し、この可憐なパルレラとの婚約を宣言する!もうお前の愚行にはうんざりだ!」



 あらあらあら。愚行って何のこと?


 魔物のロルフをボコしたのは婚約前だしセイとの交流も婚約前、ズボンにシャツも昔からだ。男爵令嬢をいじめたこともなければこちらから話しかけたことも当然ない。寧ろ交流したくないまである。


 どんな手を使ってでも罪をなすりつけて婚約破棄したいご様子で。


 「おいっ!ついに口もきけなくなったのか!まあ良い、今からお前がどんな卑劣なことをしたのかわかりやすく説明してやろう!」



 婚約者は語り始めた。


 男爵令嬢の分際で王子に近づくなと怒鳴りつけ、暴力を振るった。教科書や筆記用具を池に投げ込んだり壊したりした。足を引っ掛けた。階段から突き落とした。


 わざわざ聞いてあげるような価値もない何の捻りもない内容の罪状が次々にあげられる。私は呆れてものも言えなかった。そんなものどこの誰が信じるのだろうか。


 「最低」「役立たずな公爵家の分際で」「図々しい」


 そんな会話が聞こえてきた。信じた人、いたわ。阿保か。

 「人を陥れるような人間を俺の妻、いや、王妃にすることはできない!よって、セレーネ・バークレイを含めバークレイ公爵家の国外追放を命じる!二度と俺の前に現れるな!」


 鬼の形相とはこのことか。


 「ハルトナイツ殿下、今の言葉に嘘偽りはございませんね」


 後ろから少し低めの凛とした声が聞こえた。セイの乱入だ。予定通り。これで婚約者が「ない」と答えればトリガーが発動し、今回の卒業パーティーの映像を含む全ての画像、動画が各国の要人にばら撒かれる。ハルイお兄様が水晶を改造して作った音声パスワードだ。この程度の抵抗くらい良いだろう。


 「誰かと思えば卑しい女の息子ではないか。嘘などあるわけないだろう。被害者のパルレラがそう訴えているんだ」


 「卑しい女の息子」?ふざけるな。相手が侍女なら断れなかっただけだろう。怒りケージが溜まっていく。

 


 「セレーネ」



 一言、セイに名前を呼ばれた。はっと正気に戻る。抑えろ自分。ここで暴れたところで何にもならないだろ。


 「そうですか。では……………セレーネ・バークレイ嬢。貴女を愛しています。私の妻になっていただけませんか?」

 「セイ……はい、喜んで」


 これは予定外なのだが。ここで求婚されるなんて予想もしていなかった。嬉しいことに変わりはないがな。


 「待て!お前は両親と俺に逆らうのか!?しばらく見ないうちに生意気言うようになりやがって!また痛い目に遭いたいのか!」


 痛い目と聞いて一瞬怯んだセイだがすぐに真っ直ぐ前を向いて声を上げた。


 「今、両親と義兄と仰いましたが私は家族として扱われたことがないので逆らうも何もありませんよ。もともと家族と思ったこともありません。

 籍が王族なだけですが先程、知人が除籍の手伝いをしてくれたので私はもう貴方達とは無関係です。それに、貴方の刃はここまで届かない。私はこれからただのアレクセイとして生きていきますので」


 くるりと振り返り、セイは私に手を出した。エスコートの練習などいつしたのかと思う。


 「っ…!ふざけるな!」


 元婚約者が何か言い、魔法を放ったが私はそれを消し飛ばした。雑魚。


 「私のセイに手を出したらこの国諸共貴方を消す」


 私は全力で殺気を放って振り返った。


 「ば、化け物だ…」「恐ろしい」


 そう言う声が聞こえる。私が強いのではなく貴方達が弱いのです。と言ってやりたい。


 「いや、間違いなくセレーネが強いよ」

 「ふっ…そんな気はしてたよ」



 私達は国外追放を命じられた後とは思えない程にこやかに退場した。


今回の登場人物

・セレーネ・バークレイ(13)

・アレクセイ・ウィルバイツ(14)

・ハルトナイツ・ウィルバイツ(16)

・パルレラ

・貴族達

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