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7,ティアバルト王国


 事件から数週間。ティアバルト王国の方にはカイリお兄様のコネクションによって使われていない辺境の平原を買うことに成功した。公爵家の財力よ。


 しかしそこは闇系の魔法によって呪いに侵されて水も植物も生きていけない荒野だった。黒竜も闇系に分類されるが気配が違うのでこれは知識と魔力さえあれば誰でも使える危険な呪いの魔法。黒竜は低級呪詛と呼ばれるものしか使えないため私もそうだ。



 そこでカイリお兄様はティアを駆り出して浄化魔法を使った。


 するとなんと言うことでしょうか。ヘドロの沼と化していた池は淡い光を放つ泉になり、魚も住めない川は蛍を見ることができるくらいの清流に、枯れ果てて溶け始めていた植物は青々と再びその葉を伸ばしだした。


 白竜からの加護を受け、血の滲むような努力をしてきた2人は流石の一言。



 そして今度は私の番。ハルイお兄様は黒竜から授かった魔法を魔道具に使うので今回も私だけだ。


 『拒絶魔法』


 かつての荒野は生命を取り戻した。もう誰にも壊させない。ティアバルト王国にも恩がある。恩を仇で返すような真似はしたくない。


 ティアバルト王国の国王陛下に自ら申し出て国全土に結界を張ることにした。意識を集中させると足元に真っ黒な魔法陣が出てくる。


 このように魔法使用の魔法陣は個人が有することのできる唯一だ。移動などには使えない。


 『呪いを拒絶し、悪しき心を持つ者を拒絶しろ。あらゆる災害を拒絶し戦争を跳ね返せ』


 私がそう言えばパキッと乾いた音がして内側から外側に向かって薄い膜が張られていった。これが結界だ。カイリお兄様とティアが張った浄化魔法の結界の外側に私の拒絶魔法の結界が腰をおろした。


 「おぉ……」

 周囲から驚愕の声が聞こえてくる。驚きすぎて語彙力が消えているようだ。



 「国王陛下、王妃陛下、これで終わりです。貴重なお時間を頂きありがとうございます」

 

 私は後ろで見守ってくれていた両陛下に頭を下げた。


 この国の王侯貴族は少しでも悪巧みをすれば一瞬で見つかって干された後にバイバイされるので数は少ないが民思いの者が多い。



 見つかる理由は王家が赤竜の保護下にあり度々交流をしているからだそう。その中でごく稀に祝福を受ける者がいるが扱いにさほど違いはないらしい。言ったとしても「そうなんだ、凄いね」程度。


 そして、赤竜は脳筋らしい。これは知りたくなかったかもしれない。


 赤竜の持つ能力としては炎系の魔法、浄化や回復ではない光系の魔法(光の玉を出す、暗い部屋を明るくするなど)が多い。



 黒竜の拒絶魔法のような特殊魔法は一度に多くの情報を手に入れる漏洩魔法だ。まあこれはえげつない能力だ。これによって王家に貴族は隠し事ができないことになるのだから。もししたとしてもバレて終わりだ。このお陰で貴族は自分の子供や平民を見下して手を加えることができない。


 書類の偽造も無駄だ。漏洩魔法を使えば嘘の部分が浮き上がって書いているときの様子が映像化され、筒抜けになるからだ。こんな情けない見つかり方は嫌だろう。


 えげつないでしょう。それは本当に。拒絶魔法も危険だが漏洩魔法も使い方は考えなければいけない。


 「いや、この国を守るための結界を張ってくれたこと、感謝する。拒絶魔法のセレーネ・バークレイ嬢、そして、浄化魔法のティア・バークレイ嬢、カイリ・バークレイ第三騎士団長。ありがとう。心から礼を言おう」


 この国では王家が感謝を述べることがあるのか。


 「このくらい当然のことです。無茶を言った私達を受け入れて下さるだけでなく、ウィルバイツ王国への対処まで協力していただいて。感謝を述べるのは私達の方です。この度は本当にありがとうございます」


 私は控えていたカイリお兄様とティアと共に感謝の言葉を述べた。ウィルバイツ王国に下げる頭など持ち合わせていないがこの人達には頭を下げても良いと思った。


 「ああ、今後ともよろしくたのむ」

 「カイリ様!さっきの凄く格好良かったですわ!惚れ直しました!」

 「アリス…ありがとう。そう言ってもらえるとやはりやりがいがあるな。しかし惚れ直した、か…。面と向かって言われるとなんだか恥ずかしいものだな」


 カイリお兄様が飛びついてきた婚約者のアリス様を受け止めてはにかんだ。カイリお兄様って格好良いだけじゃないんだ。可愛いもあるんだ。


 「お姉様、お姉様」

 「ん?どうした?」

 「お姉様も格好良かったですよ」

 

 この子は本当にもう…。

 「ありがとう、ティアは何をしても可愛いよ」

 「お姉様ったら………私はたった今決意しました!お姉様を半端な国には嫁がせませんわ!お姉様が結婚して良いのはアレクセイ様か私だけですもの」


 顔に熱が昇るが一瞬で正気に戻った。

 「えっと…ティアは私と結婚したいの?」

 「お姉様にアレクセイ様がいなければ私が掻っ攫っていましたわ」


 我が妹。笑顔が怖し。


 「そ、そうか」

 私はそう言うことしかできなかった。ティア、可愛いのに怖すぎ。



 一方、学園では婚約者が心置きなく浮気できてのびのびと過ごせていた。らしい。私は聞いただけで事件以降見たわけではないのでどうでも良いが。


今回の登場人物

・セレーネ・バークレイ(13)

・ティア・バークレイ(12)

・カイリ・バークレイ(15)

・両陛下

・アリス王女(13)

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