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18,制作開始


 長らく時間が空いてしまった…。


 あの後結局時間がなく、部屋のリフォームも服作りもできないまま数ヶ月。今回、まとまった時間がやっと取れたのだ。



 改めて買ってきた生地を出す。濃紺と緋色と聞いて思いつく服といえば騎士服。カイリお兄様は騎士団長の職に就いているのでティアバルト王国ではわかりやすいように純白の騎士服となっている。

 この生地はシサーカが選んだ物だが…もしや狙っていた?まあ良いか。


 既に寸法を測ってそこから型紙を作るところまではできている。だからまずは型紙に沿って丁寧に鋏を入れていく。


 私は普段戦闘で効率と確率を重視しているので見た目は捨てて敵を薙ぎ倒すが流石に鋏くらい使える。そこまで不器用ではない。



 ズボン、シャツ、上着、マント、装飾。やらなきゃいけないことはたくさんある。


 いいとこの令嬢として過ごすのに必要なのは装飾の段階でぶち当たる刺繍だけだな。13歳の上位貴族令嬢で服を自作するのはほぼいないだろうし。


 全てのパーツを切り出したらトルソーに引っ掛けて手縫いする。サイズ感を逐一確認するためにシサーカは私の持っている服の中で一番生地が薄めのものを着て待機している。私よりも身長が低いからダボダボでなんか、可愛い。ティアには負けるけど。


 チクチクチクチク。


 無心で作業。良い感じにくっ付いたら一度外して試着させる。問題なかったらまた戻して縫う。


 「よし、まずはちょっと完成」


 9時間後、ズボンと上着、マントの元が完成した。素体とも言うのか?まあやはり時間はかかる。


 この時点ではまだ装飾はされておらず、ここから装飾を加えていく。


 あと一応スペアは作っておいた。メインが濃紺、スペアは緋色を主色として使っている。洗濯もするだろうしあったらと。


 『ここから装飾するの?ベルトとかシャツはあるもの使うみたいだけどそれも?』


 「うん。刺繍糸を買ったからシャツにはやろうかなって思ってるよ。ベルトは流石にちょっと硬いから刺繍針折れそう。」


 上着に刺繍を入れていく。胸ポケットに氷竜のモチーフを入れるのと袖にも入れた。ボタンも金で。


 シャツの方はシンプルに襟部分だけだ。ズボンには軍服にありそうなチャラチャラした鎖みたいなのをつけた。邪魔そうだとかいう意見は一切受け付けない。見た目重視だ。


 気づいたら朝だった。ご飯食べてからずっとチクチクしていたようだ。


 鏡を見てみると…。


 「うわぁ…やば」


 酷い隈だ。

 「寝よ。……ロルフ、シサーカ、私は寝る」

 同じ部屋で体を丸めていた2人にそう告げて返事も聞かずに私はベッドに入った。


 『セレーネ、起きて、起きて。もうお昼だよ』

 「はにゃっ…!あれ?私いつから寝てたっけ」

 「朝5時に俺らに報告して寝たよ」


 今の時刻は午後1時。大分寝たな。起きよ。さっさと完成させるか。


 「ん…おはよ。刺繍する」

 「待て待て待て」


 寝ぼけ眼で続きの刺繍をやろうとするとロルフに止められた。


 『まずはご飯だよ、セレーネ』

 シサーカとロルフに半ば引っ張られるような形で私は食堂に向かった。


 「おはようございます」

 食堂にはお父様がいた。お母様は春の社交シーズンなので外出中だ。


 「ああ、おはよう。随分と遅かったな。ロルフから話は聞いているが睡眠はしっかり取った方が良い。私やハルイの徹夜癖に何も言えなくなってしまうぞ」

 「はい、つい夢中になってしまって。次は気をつけます」

 「それなら良い」


 私の言葉にお父様は安堵したように柔らかく微笑んだ。


 相変わらずの美形だ。


 「続きやる。この刺繍ももう少しで出来上がるから」


 部屋に帰って早々良い感じの服になってきたものを掴んだ。


 刺繍は。そう。刺繍はもう少しで終わる。

 だがしかし、靴がまだなのだ。


 流石に技術的に私じゃ無理でデザイン画を持って職人に依頼したがそんなに直ぐにはいどうぞとできるわけでもない。最も、依頼したのが結構前なのでもうそろそろできても良い頃ではあるが。


 「お嬢様、お嬢様宛に靴が二足納品されましたのでお持ちいたしました」


 ノックの音がしてメイドが部屋に来た。


 「ああ、待っていたよ、ありがとう」


 質の良い箱に入っていたのは二足の靴。私が職人に依頼して作ってもらったものだ。シサーカの足はロルフよりも小さいのでサイズは小さめだ。


 『ボクの靴来たの?』

 「全く、急ぐ必要などないだろうに。そんなに楽しみなのか」


 トテテテテと走ってきたのはシサーカ。その後ろからはロルフが歩いてきている。ソードフックも革だけ持って依頼した。


 「ふふっ、試着してみようか」

 『うん!』


 私は持ってきてくれたメイドに礼を言って靴を受け取った。


 『わぁっ…!かっこいい…』


 作り終わった服を見てシサーカがそう言った。嬉しい限りだ。

 「じゃあこの服にこの靴を合わせて履いてみて」

 数分後、試着の為退出していたシサーカが戻ってきた。

 『ど、どうかな?似合ってる?』


 少し頬を染めて騎士風の服をばっちり着こなしたシサーカ。これは…イケメンだな。可愛さではティアに劣るが騎士服の着こなしはカイリお兄様に並べる。


 「ああ、よく似合ってるよ」

 『やったっ…!』


 ニコニコしているシサーカを見てロルフが若干苦笑していたが悪い感情は抱いていないようで良かった。



 明日からのシサーカは非公式騎士だ。


今回の登場人物

・セレーネ・バークレイ(13)

・アリオ・バークレイ

・ロルフ

・シサーカ

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