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10,引越しからの大告白

アレクセイは王族籍を抜けたので苗字は無くなりました。


 翌日朝5時。いつもなら農家や宿屋が起きている時間だが、転移がある関係で全員家に引きこもっている。非常に助かる。私はせっかくなので黒竜からの贈り物である服を着ていた。


 すっかり回復したハルイお兄様はバークレイ領の南、王都に面している地域から順に転移させていった。魔法陣が現れて次々と建物や畑が消えていく。カイリお兄様がハルイお兄様の魔道具で遠隔指示を出しているのでその通りに転移をしていく。



 2時間は経っただろう。

 あとは公爵邸と鉱山だけだ。ハルイお兄様の魔力が空になる前に私の魔力を譲渡しているので魔力だけは心配ない。が、あとは体力だ。あまりにも体を動かさないのでハルイお兄様はフラフラになっている。とりあえず魔力属性が同じの私が後ろから抱きしめるような形で支えているがそれもなかなかに体力を消耗する。私が軍人の端くれでよかった。これが一般のご令嬢なら「無理ですわ」と泣き言を言っていただろう。


 とりあえず一番大切なのは鉱山だ。これを奪われるのは痛い。屋敷は最悪また建て直せば良いが鉱山はそうもいかない。

 

 「あ…」


 私は伝え忘れていたことがあるということをたった今、思い出した。そういえば黒竜と白竜はウィルバイツ王国にいる。私達だけ居なくなったら心配させてしまうかもしれない。


 「セレーネ、どうしたの?」

 セイが不思議そうに聞いてくる。

 「竜達に報告するのを忘れていたなと今頃になって思い出したっていう」


 『本当だね、貴方達は私達夫婦の大切な子供なのよ。勝手に私達を置いて出ていくなんて許さないね』

 「は、白竜…」

 『セレーネ、ハルイ、お前達2人は俺が直接加護を与えている。だから魔力量も桁違いに多いし魔力循環も悪くない。が、俺に比べたらまだまだ未熟な子供だ。伝えてくれたら俺が転移させていたのにな。まあ、あとは俺がやっちゃいますか。お前達は少し離れて休んでいろ』


 人型になった2人がゆっくりと降りてくる。白竜は自分が加護を与えたティアをぎゅうぎゅうと抱きしめている。加減してやってくだされ彼女はまだ12歳ですぞ。まあかく言う私も13歳の小娘なのだが。たまに忘れる。



 黒竜は軽く私とハルイお兄様の頭をポンと撫でて屋敷裏にある鉱山の前に立った。凄い魔力が放出されている。これを見ると私達などまだまだだと痛感する。


 大地が揺れた。鉱山を亜空間でティアバルト王国に繋げている。規格外だ。あれは。私達じゃ一生かかっても追いつける気がしない。

 ゴオっと風を吸い込むような音がした後、鉱山は跡形もなく消え去った。



 「凄ぉ…」

 『ふっ…まだまだだぞ。屋敷もあるからな。セレーネが張った結界ごと移動させるのは難しい。セレーネ、痛むだろうが少し耐えてくれ』

 屋敷に向き直った黒竜。


 「っ…!ふっ…ぅ…んぅ…」


 頭が割れるように痛んだ。黒竜の魔力濃度の方が結界の魔力濃度よりも高いので結界を維持するだけでほぼ全ての体力を持っていかれた。立っていられなくなり、セイと少し回復したハルイお兄様に支えて貰っても尚、立ち上がれる気配がしない。



 屋敷が消えたことを確認する前に私は痛みと疲労で暗闇の中に落ちていった。倒れた時にふわふわしたものに触れた気がしたがロルフなのだろうか。

 





 不思議な夢を見た。体が熱い。体内水分が蒸発してしまうのではないかと思うくらいに。


 『へぇ、死なないんだ。人間ならここまで熱が上がれば死ぬのに』


 どういうことだ?私は人間だ。ただ、竜の加護があるだけの普通の人間だ。何なんだこの声は。どこかで聞いたことがあるような、ないような。その声は更に続ける。


 『ボクは伝承ではずっと凶暴だって言われてたんだ。本当のボクは凄く臆病者なのに』


 君は臆病者じゃない。だって今の言葉から察するに、君は人間があまり得意じゃない。それなのに私に接触してきた。この煩わしい熱がもし君の仕業だとしても私は許すよ。凄く勇気を振り絞ってくれたんだよね。


 『ありがとう。そう言ってくれるのはキミだけだよ。セレーネ。ボクが幻の存在だって言われてるのを良いことに、皆好き勝手に言ってあの時、本当のボクは死んだ。でも、あの時野生動物と同じだと言われた。キミはボクを噂通りに解釈しないでくれた。セレーネ、ボクと一緒にいてよ。自分らしくいられるような気がするんだ。ねぇ。ボク、セレーネが好きだよ。ボクと結婚しよ』


 吐息混じりの告白。私はとても混乱している。




 「私はセイと結婚するって決めているんです!」




 自分でも驚いた。今まで声が出なかったのに。そして理解した。これは夢じゃない。これは…


 「リアルな現実の世界……」


 もしやと思い右側を見る。そこには真っ赤な顔をしたセイとバツの悪そうな家族、白竜、黒竜がいた。


 「〜〜っ〜!」


 こればかりは頭を抱えるしかない。私は何という失態を犯してしまったのだ。まさか夢の中での求婚に現実で答えてしまうとは。

 


 これは当然、今までの13年の人生で一番恥ずかしかった。


今回の登場人物

・セレーネ・バークレイ(13)

・アレクセイ(14)

・バークレイ一家

・黒竜

・白竜

・???

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