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恋のキューピッド





 ルークは両親達の恋のキューピッドになるかわりに、セレーナとの時間をとれるように権限をもらった。ギブアンドテイクでなくてはやる気がでない。


「父上、私が母上と茶会を致しますので、父上も参加して下さい。父上は緊張せず、リラックスです。私がなんとかサポート致しますので、気持ちを伝えるのですよ。」


「あぁ…もっ、もし、上手くいかない場合は」


「また、挑戦すればいいのです。諦めたらそこで試合終了ですよ。」


「わっわかった。」


 庭でメイド達が茶会の準備をする。綺麗な花が飾られると、日傘をさしたエレオノーラが優雅に現れた。


「今日は、料理長がスコーンを用意してくれたわ。 ルークが甘いものは得意ではないと聞いたから、ベーコンとチーズのソースもあるわ。」


「ありがとうございます」


「お勉強は進んでいる?」


「はい。高学年のレベルはもう習得いたしました。」


「…あまり無理はしてはいけないわ。学園は魔法学園の方がいいかしら?」


「…はい」


 ルークは話を終わらせないようにした。なぜなら、偶然にも父親がここへ来るのだから。だが、もうすぐ来るはずのメインである父親が来ない。魔力感知では数メートル先に父親らしき膨大な魔力が反応している。


 どこだ…母親に怪しまれないよう、「花が綺麗ですねー」と周囲を見渡した。


 かさかさと音がすると4時の方向に金髪がちらりと見える。金髪は屋敷に2人しかいない。ルークは早く出てこいと視線を送るが本人は気づかない。木陰から動かず、妻であるエレオノーラを見つめるとポッと頬を染めた。


『ポッ?じゃねーよ!おい、おっさん、俺はそこまで話し上手ではない。もうネタが無いんだ。さっさと来ないと』


どうなるか分かっているか?とルークはポケットから取り出した例の物をポチッと押しそうになる。それに気づいた父親は真っ青な顔になりながら登場した。


「…………」


『なんか喋れよ!!たく…母上が固まってるじゃないか』


「父上、偶然ですね。一緒に紅茶でもどうですか?」


「…………………あぁ」


あれほど顔見していた変態は今ではもじもじと目線を下げている。


「…………………」


「父上は母上とお話したいそうですよ?部屋には素敵な絵が」


「それより、ルークは勉強は進んでいるか?」


「…はい。母上、用事がありますので、私は少し席を外します。また、戻ってきます。」


 あとは2人でなんとかしてくれとルークはセレーナの所へと向かう。生セレーナ不足気味なため、天使の補充である。


 ルークの後ろ姿が小さくなると、エレオノーラは「側近が困っているのではなくて?」と不機嫌そう。


「………す……スケジュール管理はできている。今は休息時間だ…」


「流石は侯爵様だこと」


「……………だ…」


「はい?」


「……………レイモンドだ。名前がある。」


「今更、何を言っているの?私の名前すら呼ばなかったあなたになぜ名前で呼ばなければならないの?」


「……………エレオノーラ」


 本人の前ではじめて名前を呼んだレイモンド。エレオノーラにそれが届いたかは分からない。だが、少しだけ何かが変わったのかもしれない。


「名前は呼ばなくていいが、侯爵はやめてくれ。」


「かしこまりました。それより本当に時間は大丈夫ですの?」


「あぁ…」


 あと少し勇気を出せば、今なら本当の気持ちを伝えられるかもしれない。そう重い口を開こうとしたが、側近が現れた。


「旦那様、会議のお時間です」


「………………」


 レイモンドの眉間のシワが更に濃くなる。何年も仕えているためその顔に怯える側近ではないが、何か不味いことでもしたかとチラリと主人を見る。もしかして奥様とお楽しみ中だったのでは…そんなことが頭をよぎったが、そんなまさかと頭を切り替えた。



 椅子にいないはずの大きな残像が見え、エレオノーラは首を傾げた。


「あの人、なにしに来たのかしら?」


 離婚話が出たあと音沙汰が無いと思いきや、いきなり現れればとくに話すこともない。普通の男性なら何かしら繋ぎ止めるためにプレゼントでもするが、、、


「別居中もプレゼントのプの字もないのよ?」


「あれ、母上?父上は…」


 もやもやと考えていたが、ルークが席に座ったためレイモンドの事は忘れようとエレオノーラは「仕事に戻ったわよ。それよりルークの用事は?」と話し始めた。








 お久しぶりです。転職して人生を少し変えてみた結果執筆が遅れてしまいました(さよならっサイコパス社畜製造機会社)

 これからは新しい事へのチャレンジということで、書けたら次の日投稿という感じでマイペースに行っていきたいと思います。

 最後に、この小説を読んでくださっている読者様がいるから、続きを書こうという気持ちが強くなります。本当にありがとうございます。

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