変態と変態
第三者の憶測だけで、判断するというのは難しい。前世での環境から人を信用するという事ができなかったおじさんは、疑うことしができない。
予感を確信に変えるためだと、モニターを確認していく。たまたま設置した隠しカメラが役に立つとは。
『ほんとは会えないセリィを愛でたいだけで監視カメラを作ったただの変態シスコンだけどな』
「何を言う!100%セリィを守るためだぞ?」
『嘘つけ!そのうち30%がだろ!作っている途中から欲望にまみれていたぞ。お前がセレーナの写真をこそこそアルバムにしているのを知っているぞ。』
「くそ…知られているとは」
『当たり前だ。お前は俺だからな』
もう一人のルークはまだセレーナの可愛さを分かっていない。
話は戻るが、もしあの男がルークと同類だとして、結果は変わらない可能性がある。なぜなら、相手がNoと言えばNoなのだ。
『振られる可能性に一票。というか振られてなかったか?』
「…否定はできないぞ。あの使用人の話だと相手はまだ想いが残っている。」
『ふんっ、見限られてるだろ。』
結果はどうであれ、やらないよりはマシだろう。最悪の場合は───
「愛の逃避行も悪くはないぞ」
『…真面目にしろ。』
「おっ…動きがあった」
それは見てもいいものだろうか。何か見てはいけないもののような…
大きな肖像画は美しい女性が描かれており、男は女の頬に触れ………その後はご想像に任せよう。
『はぁ………おっさんどうする?』
「ん?俺は今、ピチピチのボーイだぞ?」
『いや、おっさんだろ。それより、俺はアイツとは話したくないぞ。お前と一緒で話が通じないとみた。』
「目には目を、歯には歯を、変態には変態を」
ルークの足取りは重かった。久しぶりの親子の会話がこうなるとは予想もつかないだろう。大きな扉はラスボスの部屋のようだ。
一呼吸すると、中指が少し触れただけで、扉にヒビが。身体強化を常にかけていたことを忘れていたため、ルークはそのまま扉のドアを開けた。
「…………………」
「………父上、少しお話があります。まずはこちらをどうぞ」
回りくどいことはいい。正直この茶番に付き合う気は無いのだ。ルークは恋のキューピッドになるつもりはない。
モニターから流れる声に無表情だった顔が変わる。その表情にもう一人のルークは楽しそうである。
「どうしてそれを…ルーク」
低い声で威嚇するようなオーラを放っており、小さい子どもなら漏らしているだろう。
「だが俺は怖くないもんねっ!」
再生▶
「エレたんどうして、、、こんなに愛してるのに。うぅ…」
停止Ⅱ
変態は気に食わなかった。推しを愛でること、それは命をかけること。やつの愛で方は、そう中途半端なのだ。
それをくよくよくよくよくよくよと…
「甘いっ!甘すぎる!だからセレーナが浮気相手の子供だと勘違いされ、離婚を切り出されるだ!!」
「どっ、どうして離婚のことを…まさかルークは離婚をして欲しいと…」
「そんなに弱気ならしてしまえばいい。俺は関係ない。全てアンタがしてきた結果だ。あぁ、セレーナと俺は母上についていく。」
「……離婚はしない。エレたんは俺の癒やしなんだ。ルークお前もエレたんとの唯一の愛の」
「駄々をこねても何も変わらない。父上、母上にはセレーナのことを伝えましたか?」
「…していない。エレたんを前にすると声が出なくなる。」
「はぁ…では、手紙は書きましたか?」
「書こうとすると頭が真っ白になって…」
『駄目こいつ…諦めようぜ…』
なぜこんな陰キャから俺が生まれたのか疑問である。いつもの威厳はどこへやら、父親の頬は濡れていた。
「最終手段はあります。先程の動画を母上に見せればいいです。それでどう思われるかは…知りませんけど」
「エレたんに、気持ち悪いと思われるに決まっているではないか」
「それならさっさと母上に告白でもなんでも言ってください。縋らないと解決しません。いいですか?時間は限られています。最悪、母上の実家が絡んできますからね。」
尻を叩くと何か決意したように、いつものキリッとした顔に戻る。
「ルーク、お父さん頑張るから…」
「少しはお手伝い致しますよ」
「ありがとう…俺は素晴らしい息子を持ったな」