あんなことやこんなこと
「はぁ…もう花束はやめてください」そう言われるのが分かっていながら、レイモンドはエレオノーラの前に立っていた。見れば部屋中花だらけである。
「すまない。考えが及ばなかった。ただ君に喜んでほしくて」
「そうですか…ですが、もう結構です。」
「最後にこれを受け取ってくれるか?」
「…………いいですわ」
バタンと扉が閉まると、レイモンドは固まったまま扉の前に立っていた。
「………うえ、、、父上!!早く戻ってください!!」
「……………あぁ」
とぼとぼと歩く姿は小さく見える。大きいと感じていた背中は今にも弱々しい。
「作戦通り、父上はこの部屋で待機です。あとは作動するのを待つのみです」
「本当に大丈夫なのか?エレたんに何かあったら…」
「大丈夫です。私の魔法は完璧ですので。」
「そうか…」
ふぅ…と少し緊張した様子のレイモンドは、カメラを取り出した。見ているのはエレオノーラである。
「君に伝わるだろうか」
レイモンドは不安であった。今回の手紙は、今まではとは少し違った。なぜなら…
「手紙には父上が今まで何を贈っていたのか、細かく書いてください。あと、母上を愛していることも書くんですよ。変なポエムなんて意味わかんないでやめてくださいよ?」
「なぜ?いままでの事を書かねばならんのだ。はっ恥ずかしいではないか。」
「父上の羞恥心なんて知りませんよ。恥ずかしいなんて言って何も行動しなければ母上は勘違いしたままです。離婚したいんですか?」
「嫌だ…」
「なら素直になって下さい。あと、手紙は私もチェックします。」
「むっ息子に見せられるか!」
「私だって親のあんなことやこんなこと見たくありませんよ…ボソッ…さっさとくっついて屋敷内のゴミ掃除もすませたいのに」
「ん?なんか言ったか?」
「なんでもありません。ほら、はやくはやく。このあと私はセリィとお昼寝なんで」
「子供たちの睡眠の邪魔はできないし…仕方ない。」
それから、ルークの手助けによって普通の手紙が完成した。いや、少しばかり細工を入れてはある。
「本当にこれで大丈夫なのか?」
「あんな花のようになんちゃら〜みたいなの意味わかりませんよ。もしかして、今までの手紙もこんな感じですか?」
「…………それが王都では流行りなんだ」
「王都から離れていた母上は知らないと思いますけど」
「………これは読まれなくて良かったのか悪かったのか」
「良かったのかもしれませんよ?黒歴史じゃないですか。痛いですよ。」
「ぐっ……息子に知られるなんて。」
話は戻り今現在は母親であるエレオノーラの部屋の隣にいる。何かあればいつでも駆けつけられるようにだ。
「私は私で他の証拠を集めておきました」
ルークが出したのは小さな魔道具である。ポチッと押せば屋敷内にあるゴミ処理場が映っていた。
「多分ですが犯人はここに来ているはずです。一応ここにも隠しカメラをつけといて良かったですよ。」
「息子が有能すぎて私はいらないのかもしれない」
「まぁまぁ、そんなことないですよ。父上は家のためには頑張った方ですよ。」
「そうか……ん?このメイドが捨てているのは私の手紙では?」
「…よく覚えてますね。」
「この紙の端に花を描いたんだ」
「へぇ〜」
なんて興味のないことを話していると叫び声が聞こえた。逸早く動いたのはもちろんレイモンドである。
「エレオノーラ!!大丈夫か!!」
「あなたっ!メイドがっ…………」
レイモンドはエレオノーラを守るように抱きしめると、犯人である者を睨みつけた。