誤解されている変態
レイモンドは毎朝エレオノーラへ花束を贈っていた。最初は反応は良かった?ようだが、だんだんとエレオノーラの眉間にシワが寄っていた。
「あの人…なにかしたのかしら?もしかして、浮気への罪悪感から?」
部屋からレイモンドが出て行った後、エレオノーラがぽつりと呟く。それに反応した眼鏡のメイドは少し溜息をついてから呆れた様子で「よく言いますよね。浮気したり、なにか後ろめたいことがあると旦那が奥さんの機嫌を取るためにプレゼントを贈るのを」と聞こえるか分からない声で言った。
「そうよね…花には罪もないけど、これ以上増えると置き場もないし次からは断っておいて」
「かしこまりました」
プレゼントした花束にエレオノーラが喜んでいると勘違いしている痛い男は、ルークからの伝言に青ざめている。
「どうして…エレたん…お花好きでしょ」
「花は好きかもしれませんが、贈りすぎなんですよ。浮気されてるんじゃないかと勘違いされてますよ?」
「なぜそうなる!?それに、花束だけではなく、手紙も…」
「手紙?そんなの読んでる様子は無かったですよ?きちんと渡しました?」
「いや…手渡しは恥ずかしくて花束の中に…」
「はぁ………気づかずに処分されているか、あるいは、悪意ある者がわざと処分してますよそれ」
気付かないワケがないのだ。なぜなら、花束とはいえメイドが花を花瓶に生けるときには、手紙の存在に気づいている筈だから。
「……………また、私は間違えたのか」
「いや、次はチャンスかもしれません」
「どういうことだ?」
「まだ、母上には断られていないので、次も普通に渡してください。ですが、次の手紙には────」
ルークはニヤリと笑った。これで罠に引っかかればいいのだが。