1-8
ダンジョン内で起こった事故の事情聴取を終えた後に夕食を取り宿屋で休んでいるとギルドから緊急の招集が入る
蟒蛇の討伐は骨が折れたので休んでいたい気分だったが呼び出し主はそんなことを許すはずもない
軽く風呂でシャワーを浴びるとギルド会館に移動することにした
「よお お前も呼び出しか」
ギルドの受付ではバージルが受付をしている最中だった
「おそらく同じ呼び出しです」と私もギルドカードを差し出すと受付嬢はチラッとカードを確認して「3階のA会議室で集合です」とギルドカードを返してくる
「ああ 3階って職員用のフロアじゃないか」
「まぁ 面倒な話でもあるんだろうね」
バージルが面倒そうな面持ちで言うので私も面倒な面持ち答える
「あーやっときた」
上の階に上がる階段の前でポーラがソファーに座って待っていた
「おーぉぃ」っと小柄な体格で大きく手を振りながらこちらに向かってくる
「このメンツで3階呼ばれたという事は試験の件かな」
私は小さく手を振り返してポーラに答えると3人で階段を上がり会議室へ向かう
------
会議室には不機嫌なマーセラと今回行われた試験の責任者であるロレーヌが待っていた
会議室に入った時点で既に2人はだいぶ熱の入った議論なのか口論なのかをしていた
とりあえずバージルと私で割って入りポーラが良い香りのするお茶を出して落ち着かせ5分ぐらい経った
「みんなには試験の査定表を付けて出してもらってかしら」
マーセラより少し背が低く女性らしい凹凸を際立たせるような服装が特徴のロレーヌがギルドでよく使われる採掘者評価用の紙切れを後から来た3人に手渡す
「いえいえ 査定なんて出来ませんから延期でお願いします」
マーセラは強い口調でロレーヌに言い寄る
この二人は今回のイレギュラーがあったので昇級試験を再度するかしないかで揉めていた
「まぁ過程はどうあれ査定は可能だけどやればいいかな?」
私がそう言うとバージルとポーラは少し驚いた顔で見ていたが
「私の査定は上級試験は二人とも可 アリーの射撃は優 情報収集難ありの為必修かな」
ビットが記録してた戦闘結果を腕輪から出した記録用紙に転写するとロレーヌに手渡す
ロレーヌがそれを机に置いて再生を始めるとマーセラとポーラもその記録を見始めた
記録用紙の再生ボタンを操作すると青い光と共に地図が映し出され個々の位置関係がマーカーで示され行動記録と射撃の精度等が数値やグラフで示されて動画で再生される
「お前さぁ相変わらず精細な記録図つけるなぁ」
「これ 隠れてた私も映ってるんですけど!」
バージルは椅子に深く腰掛けなおし机に脚をあげてくつろぐとポーラは自分の隠密行動に自信があったのか記録に残されている事に驚いていた
「フリオ 可ってどういう事?アリーなんか完全に自滅フラグ引いてたしジムは無駄な命令違反が致命的だったと思うけど」
私の意見にマーセラが食って掛かる
「そこはあまり重要でないと思うよ?」
「どうしてよ?」
「アリーの蛇嫌いは突発的なものだからしょうがないでしょ」
「でもあんなに取り乱すほど嫌いとは報告を聞いてないわ」
「アリーの経歴から言っておそらく大型モンスターは初見じゃないかな?」
私とマーセラが言葉を交わすとマーセラは最後の言葉に「むむむ」と唸る
「それこそリーダーがそうなるかもしれないってケアするところでしょ?」
アリーの取り乱し方は誰にでも起こりうることだ
それまで見たことがないような大きさの体で襲い掛かってくる脅威が自分の予想を遥かに超えた動きを見せて来た時にパニックを起こすことは仕方がない
射撃の精度が高いアリーであれば集中力が高いと予想できるし感情が揺れた時のコントロールも普通の人より振れ幅が大きいと考えられる
そして私はジムの査定を続ける
「ジムの無線は突っ込みどころ得ていたしパーティーの雰囲気を高めようとしている様子だったよ」
「何も考えていないんじゃなくて?」
「半分ぐらいは素なんだろうけど否定的な意見で面食らうような内容じゃなかったのも事実だね」
「それじゃ規律が必要な行動に問題が出るじゃない」
「国軍とか隠密とかの静けさが重大な任務には向いてないかもしれないけど数が頼りの採掘には軽口な方がまとまったりするもんだよ」
私とマーセラが言葉を交わすとマーセラは最後の言葉に「うぐぐ」と唸る
「それに蟒蛇戦での命中率さ マーセラより10ポイントも高いよ」
私が一番のポイントをあげるとマーセラから「カッチーン」と音がした
「あんたら近くでちょろちょろ動くし 武器の扱いがヘタクソで悪かったわね!」
なんか地雷を踏みぬいたらしい。。。。だかポイントはそこではない
「そのマーセラが上級受かったのってなんでだったの?」
私が両手で「おちつけ」と仰ぎながら合格としたキーポイントをあげると意図に気付いたマーセラが
「お前戦闘は並みだけど状況判断だけは間違えないよなって言われたわ」
「そういうところだと思うよ 上級なんて超一流エリートコースじゃないんだから一つでも磨けるところがあって絶対ダメな素養が表に出なければまずはやらせたらいいと思うけどね」
私はマーセラの目を見ながら二人の査定についての総評を言うすると「パンパン」と手拍子を打ってロレーヌが割り込む
「フリオの意見はわかったわ それにマーセラの意見も十分に聞いた 他は?」
ロレーヌがそう言うとマーセラは少しふくれっ面で頷いて同意する
「そうそう ジムっておそらくディフェンダー多いと思うんだけどよ」
バージルが顔辺りに手をあげて発言を始める
「あいつおそらくアリーと組み過ぎで自分が前出ると後ろからばっちり援護が来るのが日常だと思うのよ」
「アリーとジムの仲の良さならあり得るなー」
「ちょっちタイプの違うやつと組ませてそういう状況は恵まれてんだと教えてあげた方がいいかもな」
バージルの言葉に私が合いの手を入れながら伝えると最後にポーラが
「私のご飯をおいしいって食べてたから悪い子たちじゃないわ!」
と謎の(どや顔)で締めくくった
------
「査定の件は十分に考慮できたわね」
それから15分ぐらいかけて査定の話を詰めたロレーヌが一言話題の変更を告げてきた
「3階に侵入した採掘者についても話があるの」
そう言うと静かに部屋のロックとカーテンが閉まり机の周りに防諜の魔道具が張り出してきた
「ぬぁんだ 随分と厄介な話になりそうだな」
「まだ・・・そうね それを決めるのはこれからの話次第ね」
ロレーヌが腕輪の中から断片的な資料ではあるが何枚かの事件顛末を机に置いた
私がそれを見ながら新しいメモに要点をまとめて書き出す
① 戻ってきていない探鉱者は15人居て全員腕輪を持ってなかった
② フリオの報告によると蟒蛇に飲まれている腕輪が10個ある
③ 作業者の履歴を照会すると15人以外の探鉱者は全員戻っている
「うーん よくわかんねぇ」
バージルが言い放つ
この状況を紐解くにはいくつかの前提知識が必要だ
① モンスターは魔力由来の物以外を絶対に食わない
② 腕輪の機能でモンスターに襲われ危険な時に自分を収納して身を守る緊急回避がある
緊急回避をすると腕輪は自分で開けられないので腕輪を貸与している教会に依頼をして開錠してもらうか開錠キーを設定した仲間に開けてもらうしかない
モンスターの目の前で緊急回避をすれば腕輪は間違いなく食われちゃうのでそのモンスターを倒すことが出来ないと回収は間違いなく出来ない
モンスターを倒して腕輪を回収したら教会に持っていきその行いに対する対価を頂くのが泥棒でもやるこの世界のルールだ
緊急回避で教会に保護された人はいい金額の対価を払わされると聞くので無暗矢鱈にやることではない
「どうやらおかしいことになっているのよ」
ロレーヌがそう言いながらメモをにらみつける
私は査定に使っていたデータ元に3階で起こった事件で持っているデータをビットに指示して整理させると記録用紙に写す
「見てみる?」
私がそう言って記録用紙を机に置くとポーラが真っ先に食いついてくる
「ポーラは知りたがりのデバガメね」
「なにー?いいじゃないのゴシップとコイバナはご飯を美味しくする貴重なネタだもの」
マーセラがうっとおしくそう呟くと何食わぬ顔でポーラは言い放った
「余計なことに突っ込んでそのまま身を滅ぼしそうな体質ですね」
「あぁほんとうだな」
私の意見にバージルは深く頷いて同意した
なんだかきなこくさい話になってきましたね
きっと赤いようじが落ちているとアタリなんでしょうか
明日は日曜なのでお休みして月曜日から投下を始めたいと思います




