1章 地母神の祝福を受けた大陸
「ここにしよう」
辺りは風もなく足元はくるぶしほどの背丈の草で覆われている
時刻はすっかり真夜中といった状況で明かりは空に浮かぶ満月しか見当たらない
私は休憩場所を探して歩いていたが丘の上に月明りでぼんやりと照らされた大きな樹を見つけたのでそこで休憩を取るために向かっていた
程なくして目的の樹に到着すると樹の上に危険がないか様子を伺う
立派な太い幹で生い茂る葉の様子から樫のような落葉樹だと思われるが月明りではよくわからない
私はさらに忍び足で木陰に入り警戒しながら辺りも見回し始める
ふわりと風が抜けていく
変わりがない様子に潜んでいる大きな危険を感じられなかったので私はホッと息をはく
私は木陰でキャンプをとるために準備を始め事にした
右腕の腕輪にはめられた収納空間を展開させる宝石に左手を伸ばすと円錐状に淡く青い光が浮き出てくる
その光の中に左手を差し込むと腕ごと宝石に吸い込まれるような見た目で空間に手が入っていく
宝石から出る光越しにのぞき込みながら中に見える雑多な物の中からキャンプ道具を取り出す
使い込んだ背負い袋
魔道具のコンロ
鋳物の取っ手付き小型鍋
折り畳み式の椅子
革製の水袋
背負い袋はリュックのような携帯性は皆無でとにかく袋詰め出来て手持ちがあれば良いといった巾着のようなデザインでサンタの背負い袋の様なかなり大きい物だ
携帯する荷物は収納の魔道具に入れるのが一般的なので手荷物を持っている方が稀と言える
コンロは背の低い円筒状で片方にフタが付いている
フタを開けると中にはくすんだ色の宝石の様に見える(クリスタ:魔力石)が取り付けられている
土台には動力の切り替えをするON/OFFスイッチとスライド式のつまみがあり鍋を置いても倒れないようにする爪を土台と鍋側に広げるタイプだ
火が出ないなんて最初はIHヒーターかと思ったがをクリスタを加工して円筒状の円盤にしてコンロの底にある(ムース:魔力電池)の魔力を流しクリスタ自体がそれに反応して加熱するホットプレートのようなものだ
熱くなるクリスタはスプリングのような機構でなべ底に押し当てられるので鍋は少し重い方がいい
そのために鍋は鋳物でダッチオーブン風の取っ手が付いた物を使っている
水筒が原始的なのは金属製の水筒もあるがかなり高価で装飾が派手な物や水が湧き出るとか冷水が出るとか炭酸水が出るとかの魔道具が多いためだ
金属の生産が盛んでない世界なので水を運ぶだけならに水牛の革袋が一般的だ
コンロの足と爪を広げて設置し鍋を置いてスイッチを入れてスライドを中ほどまでに上げるとクリスタが火もなく紅く光り始める
鍋が熱くなる前に背負い袋の中の小袋からオートミールひとつかみ放り込み多めに水を入れて鍋の準備は完了だ
収納空間の魔道具があったとしても容量は有限で時間経過もあるので出先で新鮮で豪勢な食事を準備することは難しい
食事の準備をしていると周囲の探索と索敵をお願いしていた(サモナ:召喚)である(銀狼)が現れる
匂いに引き寄せられた様子で物欲しそうにこちらを見つめる
背負い袋から食器を収めてる布を取り出し木製スプーンを確保すると袋の整理しながら牛のジャーキーを何枚か取り出して(銀狼)に与えると私も一枚口に入れる
ひとつまみ塩を放り込んだらあとはひたすら15分ぐらい混ぜるだけだ
付け合わせは何にするかゆっくり考えよう
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食事を済ませた私は荷物を収納すると(銀狼)が発見してくれた目的地である【転移門】に向かった
道中はモンスターどもに絡まれる事もなく小走りだったおかげか10分ほどで無事に着いた
【転移門】は紫色にぼんやりと光を放っており扉は黒く金属を思わせる材質で装飾や取っ手は金色だ
種類はいくつかあるがこのタイプの門はその先が(ダンジョンボス)が居る空間で終点であることを知らせている
私は腕輪から「遊戯の神」様を名乗ったアイツからもらった本の様な形をした(ブック:ダンジョン攻略専用の魔道具)を取り出した
本を持ち左手側の表紙を開くと円状の器具が一つと筒状の器具が三つ収納されている
しばらくすると本が淡く青く光り手元から浮かび上がると器具の上にホログラムで結果が映される
【 囁く 月光の 蠢く 狂乱と 這いずる 者 】
【 B → A 】【 0 / 25 】【 0 / 100 】
「レアボスだ」
表示に私は舌打ちする
【囁く 月光の】 草原(深夜:満月)
【蠢く 狂乱と】 エリート:通常モンスター追加
【這いずる 者】 闇:アンデット系:人型
と語句の説明も出ている
円形の器具には円グラフで(闇:毒 呪 精神 死)の属性系統に耐性があり(火:炎 光:命)の属性系統が弱点と表示
次のボスランクで基礎はBランクだがボーナスで3ランク上がってかなり手強いAランクの表示
あとは入場可能人数と攻略進行度でこの【転移門】は25人侵入可能で進行度は0%と表示
私は表示を眺めながらため息をつくとこの門の攻略に考えを巡らせる
攻略可能ではあるが無策で侵入しても数で押されたら確実に失敗するだろう
もちろん装備を変える必要がある
器具の入った分厚いページをめくり本の真ん中あたりで開くと12の窪みが空いたページになる
そのくぼみ一つ一つに彩り鮮やかな絵が描かれたカードがはまっている
しばらくすると測定結果の表示がステータスと書かれた記号に切り替わる
STR A
MAG D
CON A-
MND C+
DEX B+
AGI B
LUK B
CHR C+
右腕の腕輪の中からストックしているカードボックスを取り出すと何枚か目当てのカードを取り出して入れ替える
カードの入れ替えに本が反応すると即座に装備していた武器と防具入れ替わる
新しく出した(火:爆炎)のロングソードが腰の鞘に収まり(光:聖命)の広範に使える魔力杖が手に現れる
防具は(闇:毒 呪 精神)耐性のネックレス型のアミュレットと(闇:死)耐性の腰ベルトだ
STR A → B+
MAG D → A
CON A- → C+
MND C+ → A
DEX B+ → C
AGI B
LUK B
CHR C+
HP/MP になる数値はないが防御力を兼ねる CON/MND が変わりとなるらしい
記号は強さの段階で( F < E < D < C < C+ < B < B+ < A- < A < A+ < A++ < A+++ )の12段階で示される
ステータス A+++ はかなり到達難易度が高く強いが到達しても無茶なボスには敵わないとの解説が【神から賜った】本に記してあったのでステータス無双でぶん殴ると言うわけには問屋が卸さないのだろう
まぁ A++ ですら見かけた事はないけど
私はさらなる準備のために本の右手のページを開く
左のページには枝が生い茂る木の絵が描かれており右のページは背表紙に当たるページで丸いくぼみが開けられている
ページの切り替えに反応した本は大きな木のホログラムを浮き上がらせるが今回の目的は丸いくぼみだ
右腕の腕輪を開きまさぐり小袋を出すと(不死鳥)と文字と絵が刻まれたメダルを取り出して本のページくぼみに入れる
しばらくすると召喚に応じた本から青い光が放たれ空から風切り音が聞こえると赤い孔雀の姿をした(フェニクス)が現れた
召喚した(フェニクス)に干し肉を一切れ与えるとそれに満足した様子で小さな鳴き声をあげる
フェニクスの召喚を察知した(銀狼)はそばに寄ってくると軽く挨拶の鳴き声を互いに交わす
「行こうか」
本をぱたりと閉じると不要な荷物を腕輪にしまい(フェニクス)と(銀狼)に声をかける
クゥルッ ワゥと返事を受けて私は大きく一息深呼吸をすると【転移門】を開き門をくぐった
表記ブレや表現の変更しました




