かくれんぼって、怖いよね
「かくれんぼって、怖いよね」
一緒に隠れる場所を探している由紀はそう言った。何を言っているんだろうか。私にはその気持ちは些か理解が出来なかった。
「えー?何が怖いのさ」
「だって、隠れたら開かなくなっちゃって、誰にも見つけられる事も出来ずに死んじゃったら怖いじゃん」
全く、一体何のテレビを見過ぎたのだろうか。そんな事あるわけない、見つけてもらえそうな所にでも隠れればいいのだ。そう言って彼女を励ましても、不安そうな顔は拭えなかった。
私たちがいつも隠れるのは、この古い車庫の扉の後ろ。時間になるまでまだ誰にも見つかったことは無い。隠れるのに最適な場所。いつも通りに隠れ、二人でヒソヒソと他愛もない話をする。今日は鬼がここまでくるのに時間がかかっているな、と少し疑問に思うものの、見つからなければ何でもいいと思い、話に花を咲かせる。
もうすぐで制限時間になるというところで、話し声がして車庫のシャッターが閉まった。まずい。このままじゃ戻る事も出来ない。顔を見合わせて更に縮こまる。
「持ち主…かな」
「見つからないといいけど…」
複数の足音。四人ぐらいの男の声が聞こえる。段々と此方に近付いて来ている。私たちが隠れているのは開いた扉の後ろ。大方この奥の部屋に向かうのだろうと息を潜める。
けれど、その予想は外れた。扉を閉めて、私たちを囲むようにこちらを見下ろす四人。冷や汗が止まらない。
「ごめんなさい!かくれんぼしてただけなんです!今すぐ出て行きます!」
由紀は焦ったように頭を下げる。驚いた私は、それに倣ってごめんないと頭を上げた。
「いやぁ、大丈夫大丈夫。出て行かなくて大丈夫。」
陽気な感じで私たちを宥める男。
私たちは男に掴まれた。まずい。口を塞がれてまともに声も出せない。本能が危機を感じている。バタバタと抵抗するが、所詮小学生女子の力じゃ叶うわけもなく連れて行かれる。
「いやあ、ほんと、ラッキーだわ。溜まってたんだよね」
そう言って、奥の部屋で私たちをベッドに縛り付ける。
「やめて!はなして!」
「そうは言うけど、勝手にここにいたのは君たちじゃんね」
服を乱暴に切り裂いて裸にされる。隣で、由紀も同じ事になっている。どうしよう。そんなつもりじゃなかったのに。
「じゃ、まずは爪からね」
男はいい笑顔で私の左手の人差し指の爪をペンチで剥がそうとする。
「痛い痛い痛い!!やめて!!いやだ!!」
必死に言うものの、楽しそうにするだけ。鈍痛が走る。指先に風の冷たさを感じるのに熱い。こんなはずじゃなかった。
どうしようもない形にされた由紀と美里。きっと二人共息はしていない。男たちは赤を纏って楽しそうに笑うだけ。一人の男が、右手を持って美里の頭を撫でながら語りかけた。
「かくれんぼって、怖いよね」