表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
なぎっちゃの異世界満喫生活~ネトゲキャラになって開拓村で自由気ままに過ごします~  作者: Leni
第四章 なぎっちゃと夜空の月

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

92/104

92.ガチャは心の栄養だけれど、命を削ってまで回すべきではない。

 巨人の脅威が去り、村に平和が訪れた。

 戦争で目を血走らせていた村人達は、すっかり平静になって次なる目的のために動き出した。

 次の村の行事。歩いて五日ほどの距離にある町で開催される、夏の大市への出店だ。


 私は今年も転移魔法を使って、町の商人ギルドに出店の申請を行なっている。

 だが、去年と違ってまとめ役を任されていない私は、特に商品を出すわけではないので、村人達と比べて基本的には暇だ。


「暇だなー。暇暇ー」


『平和でよろしいのではないでしょうか』


 店のカウンターでイヴと会話しながら、暇を持てあましている私。

 村人に構ってもらうにも、みんな大市の準備で忙しいんだよね。エルフたちも新しい里の建設でてんやわんや。私と同じくらい暇な人は、意外と魔法使いの仕事が少ないマリオンくらいだ。なので……。


「暇なので、ガチャで遊ぶことにしたよ」


「いきなり何よ。私は新しい魔法を構築するのに忙しいんだけど」


 マリオンを呼んで、暇を潰すことにしたよ。


「いいからいいから。ちょっと一時間くらい付き合ってもらうだけだから」


 私がそう言うと、マリオンは大きなため息を吐いて納得してくれた。諦めとも言う。


「で、がちゃって何よ」


 何も聞かされていないマリオンが、そんな問いをしてきた。

 ふふふ、そうだね。マリオンは初ガチャか。


「ガチャは、私の神の権能で、魔石を消費して外れなしのクジ引きができるんだよ」


「は? クジ引き? 魔石で?」


「そうだよー。いろんな景品が貰えるんだよ。魔石はガンガン消費するけどね」


「も、勿体ない! 魔石よ、魔石! 魔石があれば魔法を新しく覚えられるし、便利な魔道具の燃料になるし、ポーションの材料にもなるのよ! それをクジ引き!?」


 マリオンがまくし立てるように言うが、ふふふ、甘いね。


「神の権能だよ? 貰える景品が、そこらの商品なわけがないよ」


「そうなの? まあ、確かに超神の権能ですものね……」


 納得してもらったところで、私達は雑貨屋を出て、村の広場に向かった。


「なんで外に出たの?」


 マリオンが問うてくる。まあ、これには理由があってね。


「ガチャは景品を置くための台が必要なんだよ。それのスペース確保だね」


 私はそう言って、メニュー画面からガチャのページを開く。

 ガチャ一回『300SC』。ただし、『3000SC』で十一連ガチャができる。当然、やるのは十一連。

 今回の十一連ガチャのおまけは、テイマー用のペット『鯉のぼり』。正直、いらない。私、テイマー職じゃないから、そもそもペットを呼び出せないし。


 ペットの育成は、私がプレイしていたMMORPGにおいて、エンドコンテンツと言われるほどのやりこみ要素だったのだけど……私は大賢者の『なぎっちゃ』しかキャラを育てていなかったから、ペットは未着手なんだよね。

 まあ、それはそれとしてガチャだ。


「じゃあ、実行するよー。ポチポチッと」


 十一連ガチャの実行ボタンを押すと、私達の目の前に、豪奢(ごうしゃ)な祭壇が現れた。

 マリオンが「何事!?」と叫ぶが、ガチャの演出はそれを無視して祭壇を光らせる。


 祭壇から光の柱が立ちのぼっていく。

 広場の奥で集会場を建設中の大工さんが、光に驚いてこちらを見てきた。だが、私の姿を確認すると、すぐさま仕事に戻っていった。いつもお騒がせしております。


『ペットの絆DX(デラックス)×3が当たりました』


 日本の有名声優さんの日本語音声が響き、祭壇の上にアイテムが降臨する。

 それは、金色に輝くハートの形をした置き物だ。それを見て、私は思わずつぶやく。


「い、いらない……」


「なに? 置き物」


「私じゃそもそも使えないアイテムだったよ」


「外れなしのクジ引きじゃなかったの……?」


「これを使える他人とトレードできれば、外れじゃないよ。ただし、この世界に使える人がいるかは分からない」


「外れね」


 はい、そうです。ちなみにペットの絆DXは、テイマーがエンドコンテンツであると言わしめる〝ペットの絆値〟を大幅上昇させるアイテム。絆値が上昇するとペットのステータスが微量上昇するのだが、この絆値、青天井である。

 ただし、絆値が上昇するにつれてステータスの伸びも鈍化するので、テイマーが最強職とは一概には言えない。


 いや、そもそも私がプレイしていたMMORPGは最強職がどうとか議論するようなゲームではなかったんだけどね。みんな好きなプレイスタイルで、ゆるーくプレイするそんなゲームだった。

 ちなみに、特定の保護用課金アイテムを使わずにペットが死亡すると、絆値は下降するぞ! 生半可な気持ちでエンドコンテンツに挑むなってことだね!


「おっと、次だ」


 無駄なことを考えている間に、自動で開いたアイテム欄へペットの絆DXが収まった。そして、再び祭壇が光の柱に包まれる。


EX(エキストラ)ミストポーション×20が当たりました』


「おっ、便利アイテムが来たね。EXミストポーションだよ」


 私は、アイテム名をこの国の言語に訳してマリオンに伝えた。


(きり)のポーション?」


「うん、使うと霧が発生して、その範囲に居る味方の傷が治るの」


「味方……? 敵と味方を識別するの?」


「するねー」


「さすが神の権能ね……」


 ゲーム時代はなんとも思わなかったことも、現実化すると不思議に感じるよね。

 という感じで、十一連ガチャをしたが、目標の高レアアイテムは入手できなかった。


「まあ、出るまで回すんだけどね」


「それ、ギャンブルにハマる駄目人間の発想よ」


「ガチャはいくらつぎこんでも現金が返ってこないから、ギャンブルよりも悪質だよ」


「駄目じゃないの!」


 ガチャを回して高レアの目的の景品を当てることは難しい。ラインナップにある目玉の景品は一つではないので、ピンポイントに当てることは困難なのだ。

 これがゲームの中なら、ガチャで当てた他の景品をプレイヤーショップで売ってゲーム内マネーに換えて、そのマネーで目当ての景品をプレイヤーショップから購入するという技が使えたのだが……。あいにくと、この世界でガチャを回せるのは私一人だけである。


 だが、このガチャには最低保証がある。五十五連ごとに、最高レアが確定で当たる仕様なのだ。そして、今回の目的の品は、最高レアだ。

 というわけで……。


『魔法習得書≪ウィンドウォーク≫が当たりました!』


 虹色演出で、目的の景品ゲットである。


「いやー、日々ヤモリくんに魔石を集めさせているだけあって、スターコインには不自由しないね!」


 私はアイテム欄から目的の魔法習得書を取り出しながら、笑顔でそう告げた。


「……あんた、どんだけ魔石を消費したのよ。最低保証とかいうのを三回はやっていたわよね」


 最高レアのラインナップには複数の品があるため、最低保証を達成したからといって狙いの景品が当たるとは限らないんだよね。確定で目的のアイテムが手に入る、いわゆる天井ではないのだ。


「合計で百六十五回、回したねー。それもこれも、ヤモリくんが毎日魔石を稼いできてくれるおかげだよ」


 ヤモリくんことベヒモスとは一年間、魔石を毎日狩ってこさせる約束をしている。なので、躊躇(ちゅうちょ)することなくガチャが引けるってわけ。

 ちなみに、その約束の期限が切れるのは、夏の大市を過ぎたあたりだったかな。その期間が終わったら、自力で魔石を集める必要が出てくるね。

 まあ、使い道のない神器をスターコインに変換してもいいんだけど。アププと交換してもらった攻撃用の神器とかね。


「さて、じゃあ、魔法習得書を使って新しい魔法を覚えるよ!」


「それを使えば、私もなぎっちゃと同じ魔法を覚えられるのかしら?」


 マリオンが、物欲しそうに私の魔法習得書を見てくる。


「あげないよ! それに、多分、私の権能であるゲームシステム上で魔術師の職業についていないと、覚えられないよ」


「私は魔法使いだけど?」


「それは私の権能とは関係ない存在だから、多分無理!」


「そっかぁ……」


 そうなんですよ。というわけで、私は魔法習得書を手に持って念じると、私はエフェクトに包まれ、手の中から魔法習得書が消えた。


「よし、覚えたよ」


「なぎっちゃの権能って、いちいち光るわよね」


「まあ、ゲームの演出だから」


「この世界のボードゲームも将来は魔道具で光るのかしら……」


 ゲーミングパソコンみたいに、カラフルに光るラームヤームかぁ。絶対に辺境伯の好みには合わなさそう。

 まあ、それはそれとして、早速新魔法を試すよ!


「じゃあ、マリオンに魔法をかけるよ。≪ウィンドウォーク≫」


「きゃっ!」


 私が魔法を詠唱すると、マリオンの周囲に緑色の風のようなエフェクトが舞った。


「これで、マリオンは十分間、足が速くなったはず」


「足が速くなる? 脚力を上げる魔法かしら?」


「いや、ステータス上昇効果はないよ。足が速くなるだけ」


「脚力が上がらないのに、足が速くなる?」


 マリオンは本気で不思議そうに首をかしげた。まあ、ゲームの魔法だから、不思議はいっぱいあるんだよ。

≪ウィンドウォーク≫は、移動速度アップの魔法だ。この移動速度アップは、本来だとヒーラー系の職業しか使えない類の魔法である。≪ヘイスト≫と言って、移動速度と素早さのステータスを上げる魔法だね。


「じゃあ、走ってみて」


 私がそう言うと、マリオンは心底嫌そうな顔をした。


「いや、そう嫌な顔しないで。スタミナ回復魔法を終わったらかけてあげるから」


「しょうがないわねぇ……よし!」


 マリオンがその場で広場の周囲を走り始めた。その動きは……体の動作が1.5倍速になっていて、正直キモかった。

 そして、マリオンは集会場を建設中の大工さんに横目で見られながら、広場を一周した。


「ふうー。確かに、すごく速くなったわね」


「おつかれー。≪バイタライズ≫。めっちゃ速かったねー」


 ST(スタミナ)を回復する魔法をマリオンにかけ、私は彼女の走りをねぎらった。

 そして、今度は私が自分に≪ウィンドウォーク≫をかけ、広場を一周した。


「おほー、速い速い」


 STの値がなくなる前に走り終えたため、息を切らすことなく私はマリオンのもとへと戻った。


「動き、正直気持ち悪いわね」


「うん、本人の能力を上げずに移動速度を上げるために、動作を速くしているんだと思う」


 これ、ゲーム通りの動作なんだよね。ゲームプレイ時に初めて≪ヘイスト≫をかけられたとき、画面上のなぎっちゃがダバダバ走るのを見て、笑っていた記憶がある。


「でも、あなた、転移魔法だの召喚魔法だのが使えるのに、わざわざ走ることってある?」


 マリオンがそんな突っ込みを入れてくる。確かに、遠くに向かうときは自ら走る事なんてしないけどさ。


「意外とあるよー。村の中を走るときとか、森の中を走るときとかね」


「森はともかく、村の中は人とぶつかると危ないから、ほどほどにしなさいよね」


「えへへ」


 まあ、この魔法は、村の子供たちに使ったら喜ばれるだろうから、遊び用の魔法として覚えておくことにしようか。

 そうして、ガチャを終えた私たちは、雑貨屋に戻ってお茶を一杯飲むことにした。ずっと会話していたせいか、喉が渇いたからね。


 マリオンが雑貨屋に置いてある彼女のマイカップに紅茶を注いでいると、マリオンが今回の感想を述べてきた。


「神って創世の力を限界まで宿して、それ以上強くなれないと聞くのに。なぎっちゃはなんでもありね。魔石を消費して新しい魔法を覚えるって、やり方は違うけれど、私達魔法使いと同じことをしているわよ」


「うーん、私も本来ならレベルカンストっていう、これ以上強くなれない状態になっていたはずなんだよね」


 私がプレイしていたMMORPGは『Lv.99』が上限レベル、いわゆるカウンターストップだ。

 でも、この世界に落ちてきてナギサの体からなぎっちゃの体に変わったときに、レベル上限であるレベルキャップが解放された。


「もしかしたら、私の神としての権能の一つに、限界を突破して強くなれるっていうものがあるのかもしれない」


 レベルキャップ解放は、ずっと望んでいたことだからね。

 以前神官さんから聞いたことがあるのだが、神になるときにその人の願望が権能に反映されることがあるそうだ。


 それを踏まえた私の発言を聞いて、マリオンは紅茶のカップを受け取って言葉を返してくる。


「もしそうなら、あれを試してみるべきね」


「あれ?」


「魔法都市の神器。人を魔法使いに変える、『トートの書』よ」


 ん? もしかして私って、他の神と違って、後付けで魔法使いになれるかもしれないの?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] なぎっちゃさんも魔法使いに!?
[良い点] ガチャは家賃まで回していいのでもっと家賃が高いところに引っ越すのだ……(違う) [一言] テイマー用のペット勿体ないなぁ……ダメ元で誰かで試さない?
[一言] 魔法使いだけなんじゃろか? クラスチェンジの神器とかだったらまた面白そうだけど……クラスがそもそも(今のところ)、なぎっちゃさんにしか意味が無いかw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ