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なぎっちゃの異世界満喫生活~ネトゲキャラになって開拓村で自由気ままに過ごします~  作者: Leni
第二章 なぎっちゃと世界の神々

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46.夏のカレーはすぐ悪くなるのが怖い。

 私は、首飾りのみ命名してもらう旨をマルドゥークに伝えた。

 すると、マルドゥークは、腰にぶら下げていた緑色の神器の板を構え、右手の指先で操作をし始めた。


「……見事な首飾りですが、本質はクローゼットですか。残念ながら力ある天上界の言葉で、その神器の複雑な効果に合う名は存在しないようですね」


「あれ、そうなの。ブリーシンガメンとか無理かな」


「すでにその名の神器は存在します」


 それは残念。

 さらに、マルドゥークは言葉を続けた。


「天上の神々の権能と結びつけ、何々神の首飾りや、誰それの服、といった呼ばれ方をする品にこじつけることは可能です。しかし、神器を自分ではない神の名と紐付けるのは、あまりよろしくありません」


 ふむ? どういうことだろう。


「たとえば、バッちゃん……バックス神が持つ神器の酒杯は、『バックスの酒杯』と名が付いていますが、あなた様の酒杯にもこの名をつけると、バックス神の手にその酒杯が渡りやすくなってしまいます」


「なるほど。なぎっちゃの首飾り、なんて名付けても意味はないだろうしね」


 地球にはなぎっちゃなどという神や英雄は存在しないから、そんな名前を付けても力を得られないだろうね。

 私の言葉に、マルドゥークは「ふふっ」と笑い、さらに言葉をつむぐ。


「そこで提案です。あなた様のその神器は、形はクローゼットですが本質は服飾の神器。ですから、天上界の服を意味する『天女の羽衣』と名付けませんか? 防御効果や、変幻自在に見た目が変わる効果の補強には、ならないのですが……」


 おや? 日本語の名前が来たぞ。

 天女の羽衣か。昔話で聞いた覚えがあるね。


 昔々、天から降りてきた天女が、地上で水浴びをしていた。

 それを見つけた男が、天女の衣服である羽衣を盗み出すと、天女は天に帰れなくなった。

 困り果てる天女を男がマッチポンプで手を差し伸べ、妻とする。

 やがて、子もできて幸せ絶頂の中にいた男だが、ある日、天女に羽衣の隠し場所がばれてしまう。

 天女は羽衣を取り戻すと、男と子供を置いて天に帰ってしまう。めでたしめでたし。


「『天女の羽衣』とは、神々の世界に住む女性が着る衣服を指す言葉です。この世界で神々の世界に住む女性に一番相応しい存在は、天上界出身のあなた様です。したがって、この名を付けることで、他者に神器を奪われにくくなります」


 おお、そりゃあいい。アイテム欄や倉庫があるから置き引きにはあわないだろうが、奪われる可能性が少しでも減るのはありがたいよ。でも、これって服が奪われる逸話だよね?


「水浴びの最中に奪われるとか、起きないよね?」


 盗人なんかと結婚はしたくないなぁ。


「その説話を利用して、もし誰かに奪われても、最終的にあなた様のもとへと戻ってくる特性を付与します。地上の男に奪われるという特性は、念入りにふさいでおきます」


「そんなことできるんだ。了解。それで頼むよ」


「はい、少々お待ちください」


 マルドゥークは神器の板をササッと操作し、私の前に画面を見せてきた。神器の名付けを行なうことを確認する画面だ。私は、その画面の『はい』をタップした。

 すると、次の瞬間、神器の板から光が飛び出し、私の方へとぶつかってきた。

 そして光は私が身につけている首飾りに吸収され、やがて何事もなかったように収まった。


「おー、これで命名は成功かな」


「はい、神器の力が増したはずです」


 私は、あらためてマルドゥークにお礼を言い、そこから世間話に移行した。話題の中心は、最近のヘスティアについて。マルドゥーク、ヘスティアのこと好き過ぎない?

 そんな会話もやがて途切れたので、私はこの場を辞去することにした。


 別れの挨拶を述べようとすると、マルドゥークは私を引き留め、ある提案をしてきた。


「先ほど料金はいただかないと言いましたが、それとは別に、作物と交換で神の酒をいただけませんか? なんでも、バッちゃんの神器と違い、米のお酒も出せるとか」


「あ、うん。いいよいいよ。マルドゥークは清酒が好きなのかな?」


「いえ、料理酒と酢の原料としていただきます。もちろん、そのまま飲む分にも少しいただきますが」


「了解了解。今だと夏野菜と交換かな?」


「はい、今日は特に、トマトが多く採れていますよ。多めに渡しますので、ヘスちゃんにも持っていってあげてください」


 そうして私は倉庫機能を使ってたんまりと夏野菜を確保し、神の酒を樽で渡してから、豊穣神の里を去った。


 村に戻ってヘスティアに夏野菜を渡すと、そのまま神殿の晩餐会に招かれることになった。

 元々この神殿は大人数での滞在を想定しているのか、食堂は広い。私がお邪魔しても、迷惑にはならないだろう。むしろ一人、私よりも神殿の迷惑になっていそうな者がいた。


「ほう、緑の神めの野菜に、料理神が手を加えるか。偉大な我が国でも味わえない贅沢だぞ。とても辺境の村とは思えぬ」


「ヤモリくん、懲罰(ちょうばつ)中なのに贅沢しているねぇ……。毎日ヘスティアの料理を食べているわけ?」


「うむ、あやつの料理は百数十年ぶりに食すが、以前よりも腕を上げておるようだな」


 ベヒモスがいたので、チクリと皮肉っぽいことを言ってみたものの、通じていない。

 罪人は料理を食べるな、なんて無茶を言うつもりはないので、私は彼と同席して美味しく夕食をいただいた。


 夏野菜はまだ倉庫にいっぱい残っている。消費するためのメニューを考えていかないといけないね。とりあえずは、定番の夏野菜カレーかな。


「かれー。なにやら美味しそうな予感がするのじゃ!」


 おおっと、ヘスティアが食いついてしまった。


「香辛料をたっぷり使った最高に美味しい煮込み料理だよ。辛くて食べると汗をかくけど、それを夏に食べるのが最高なんだ」


「早く作るのじゃ!」


「ええー、今、夕食食べたばかりでしょ……」


 神殿の食堂で、今は食後のティータイムをしていたところだ。ティーって言っても、冷たい麦茶だけどね。


「かれー! かれー!」


「明日、明日ね」


「やったー!」


「本当にこの子、千歳超えているのかなぁ……」


 私がそんな風に呆れていると、私達のやりとりを眺めていたベヒモスがクツクツと笑い出した。


「ほら、ヘスティア笑われているよ」


「かれーが食べられるなら、笑われてもよいのじゃ」


「くはは、これ以上笑わせるではない!」


 そして、そのままベヒモスは引きつったように笑い続けた。笑いの沸点低いなぁ、こいつ。


「しかし、カレー程度じゃ、この大量のトマトは消費しきれそうにないなぁ……ピザでも作ろうか」


「ぴざ! 今度はなんじゃ?」


「平たいパン生地の上にチーズとトマトソースといろんな具材を載せて、(かま)で焼く料理」


「おお、似たような料理なら作れるのじゃ。どれ、今度、かれーの返礼にごちそうしようではないか」


「いいね。ジョゼットやソフィアちゃん達でも呼んで、ピザパーティーなんていいかもね」


 私とヘスティアがそんな会話で盛り上がっていると、ようやく笑うのを止めたベヒモスが、「ふむ」と腕を組んだ。


「その日は、十分に腹をすかせてくるとしようか」


 こ、こいつ、女子会に平気で混ざってくるつもりか……!

「どうするよ」とヘスティアに話を振ると、「シャロンとダミアンがいるのに今更じゃろ」と返ってきた。

 ああうん、神官さんと見習いくんの神殿メンバーも当然呼びますよね……。


 そんなこんなで、後日開催されたカレーパーティーとピザパーティー。ヘスティアとソフィアちゃんのはしゃぎっぷりがものすごく、ベヒモスが上手くそれをなだめすかす光景が見られた。

 意外なことにベヒモスは、世話焼きだった。これは……目下には面倒見が良い、ガキ大将ムーブ……!


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― 新着の感想 ―
[気になる点] マルドゥーク、実はロリコンなのでは( ˘ω˘ ) もしくはナイチチが好きか。 [一言] ついでにカレーに合わせるナンも作ってもらおう!
[一言] あーガキ大将気質……なんかいろんな行動が腑に落ちたw しかし天女の羽衣と名付けられた首飾りって中二心がくすぐられるなぁ。概念バトル始めたくなるw
[良い点] 更新乙い [一言] >>にたようなの 練った穀物粉を薄く焼くのは色んな所でバリエありそうですしねー
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