あたり前の時間
第11 話。
●スタート地点
「あれ? 智耶さん」
家のマンションの近くの公園のベンチに腰を降ろしている智耶さんの姿を見かける私。
「智耶さん!」
振り向く智耶さん。
「……真裕ちゃん?」
「誰かと待合せですか? 偶々、見かけて声をかけたんですけど……」
「いや。真裕ちゃんを待ってた」
「えっ!?」
ベンチから立ち上がると、私の方に歩み寄り抱き寄せた。
「智耶さん? あの……」
「ごめん……少しだけこのままでいさせて欲しい……」
ドキン
胸が大きく跳ねた。
「智耶……さん?」
○一方
「あれ? 夏奈さん?」
喫茶店にいる彼女の姿を見掛け足を止め喫茶店に入って行く俺。
「夏奈さん」
「……晴輝君……」
「誰かと待ち合わせですか?」
「違うわよ。……晴輝君……少し付き合って貰える?」
「今からですか? 別に良いですけど」
俺は夏奈さんに連れられるまま移動した。
車に乗り、向かった先は、海だ。
俺達は、車から一旦、降りた。
「晴輝君……」
「はい」
夏奈さんは俺を抱きしめた。
「私達……もう一度……より戻さない?」
「……………」
「……良いよ。……もう一度より戻そうか? 夏奈さん」
「…晴…輝……君…」
○ 公園
「…智耶さん……」
「…俺の想い…応えて欲しい……」
「えっ?」
正直 自分の想いがハッキリしていない
好きなのか? とかそういう気持ちが正直分からない
「ゆっくりで良いから付き合って欲しい」
「智耶…さん…」
「好きになるか分からないのに……良いんですか?」
「それでも構わない」
「…………」
「別れたくなったら別れ告げても良いから」
私は智耶さんとゆっくり付き合ってみる事にした。
第12話
●もうひとつの恋
智耶さんと付き合って数ヵ月が過ぎ ―――――春
晴輝と私は高校2年生を迎えていた。
同じクラスになり
相変わらずな関係が続いていた。
―――― でも ―――――
バイト帰りも
時々一緒に帰ったり
肩を並べて歩き
バカしあって
ふざけあって
特別な想いはなくても
この時間は
居心地良くて
楽しくて
幸せな時間だった
○愛澤家
ある日の事。
「あー……飲み過ぎた」
「やけ酒は体に悪いぞ」
「だってさー。ねえ、智耶、もう妹とは寝たの?」
「いや……俺達、恋人として付き合ってる訳じゃないから」
「えっ!?」
「ゆっくり付き合ってるけど友達以上恋人未満みたいな感じかな?」
「そうだったんだ」
「ああ。そういうお前は、晴輝とどうなんだ? うまくやってるんだろ?」
「まあ。だけど……体の関係にはならなくて……」
「そうなのか?」
「うん……お互い寂しい者同士ね」
「いや……それは……」
夏奈は、智耶を引き寄せキスをした。
「か、夏奈っ!」
「良いじゃない! 元恋人同士なんだもの」
「だからって……」
「駄目だって分かってるけど……」
「だったら」
「あなたには簡単に……出来るのに……どうして……晴輝君には出来ないのかな?」
「夏奈……」
「付き合っているんだけど……どうしてこんなに……」
智耶は、夏奈にキスをした。
「智……ん……」
一旦、唇を離すと再びキスをした。
「智耶……どうし……」
「元彼は呼び出すし、大体、お前からキスしてきたんじゃん」
「それは……」
「淋しいからだろ?」
「…………」
「元彼だからとか、油断しすぎ」
二人はキスをする中、智耶は、洋服がはたけている。
「ただ……ぃ…………えっ!? ……智耶さん……?」
私は二人が見つめ合う中、キスする瞬間に遭遇。
はたけている智耶さんの洋服を脱がしにかかる、お姉ちゃんの姿。
再び更に深いキスをする中、お姉ちゃんは、智耶さんの首に手を回す。
私は慌てて部屋を出た。
気付きけば私は晴輝に連絡していた。
「もしもし、真裕、どうしたんだ?」
「……晴輝……今、……家?」
「ああ。お前は、バイト帰り?」
「うん……」
「迎えなら兄貴に連絡……つっても肝心な兄貴、友達迎えに行くって出掛けて……あれ? お前迎えに行った訳じゃなかったんだ」
「智耶さん……お姉ちゃん迎えに行ったんじゃないかな? 家にいたし」
「そうなんだ」
「それで今、帰る場所ないんだ……」
「えっ!? どういう事? 意味分かんねーんだけど」
「お姉ちゃん、かなり飲んでたみたいだし……多分……元恋人だしから呼び出したんじゃないかな?」
「…………お前、今、何処いんの?」
「私は……家の近くの公園。どうしようかと思って気付いたら晴輝に連絡していた」
「兄貴に連絡しようか?」
「した所で出ないと思う」
「えっ?」
「二人のあんな姿見たら、すぐに帰るなんて思えないよ」
「……そういう事か……じゃあ今からすぐ行くから、こっちに向かって来な」
「うん……」
私達は途中合流し、津盛家に行く事にした。
「……ごめん……晴輝……」
「別に良いし。気にすんな」
頭をポンとした。
ドキン
「あがりな」
「うん……」
だけど私はすぐにあがらなかった。
「真裕?」
「晴輝……ごめんね……」
「えっ?」
「お姉ちゃんの事……ずっと片想いして両想いになって要約付き合えたのに、本当は毎日がハッピーなはずなのに……お姉ちゃん……晴輝の事……」
正直お姉ちゃんを許せなかった。
晴輝の今迄の想い知っている分、智耶さんとの裏切り行為。
「真裕……」
「……ごめん……やっぱり帰る……もしかすると智耶さん帰って来るかもしれないし」
ドアのノブに手を掛ける私。
「待てよ!」
私の手を止める様に、晴輝は私の手の上に重ねた。
ドキン
胸が大きく跳ねた。
「理由なら何でも出来るだろう? 今、戻った所で二人は一緒のはずだし一人で戻るには危険すきるんだよ。辞めとけよ」
「…………」
「……でも……」
晴輝から背後から抱きしめられる。
ドキン
「晴輝?」
「正直、毎日、複雑だったんだ。また、距離おく事になるかもって…不安ばっかだった。俺……夏奈さんの彼氏に相応しくねーよ。背伸びして付き合って……一層の事、お前との方が気楽だし、ありのままの自分でいられる」
抱きしめた体を離し振り返らせ向き合う私達。
スッと私の両頬に触れる晴輝。
ドキン
キスされた。
一旦、唇が離れると深いキスをされた。
「……ん……」
「悪い…………つーか……お前…可愛い過ぎだろ?」
ドキン
至近距離で言われる意外な言葉に胸が大きく跳ねた。
「えっ!?」
私は恥ずかしいのと同時に体が熱くなったのが分かった
「言い合ってバカしあってるお前には簡単に出来るのに……」
グイッと抱きしめた。
「俺達も過ち犯す?」
「えっ!?」
ぎゅうっと抱きしめられ首すじにキスされた。
「は、晴輝っ!」
「嘘だよ!」
抱きしめた体を離す。
「あがれよ」
「うん……」
私はあがる事にし、私の手を掴みリビングに連れて行くと座らせた。
「何か飲み物用意する」
「うん……」
「あっ! お前飯食った?」
「ううん」
「何か買いに行く?」
「ううん大丈夫」
「そうか? 何か買いに行くなら言いな」
「うん」
私達は色々話をしながら時間を過ごしていた。