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あたり前の時間  作者: HARU
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あたり前の時間

第6話


●フレンドデート



「真裕ちゃん」

「うわっ! びっくりした!」



バイトが終わり、外に出た直後、突然に名前を呼ばれ驚く私の前にいたのは智耶さんの姿。



「智耶さん、どうしたの?」

「いや、暗い夜道だし迎えに来た」

「私の事は大丈夫だし。それより、お姉ちゃんと仲直りして欲しいんだけど!」

「安心して良いよ。仲直りしたから」

「えー? 本当にぃ~? めちゃくちゃ怪しいし!」

「参ったなぁ~」



困った顔をする智耶さん。



「だって私、喧嘩を目の当たりにしてんだよ」


「まあ確かに信じろって言うのは無理があるかもしれないよなぁ~。じゃあ、後で証明してあげるから。正直、迎えに行くように頼まれて来た所なんだけど」




そして、私達は車中で話しをしつつ、その途中、とある店に寄った。



「ここは?」

「あー、弟のバイト先」

「えっ!?」



≪私のバイト先から超近いし≫




「弟、呼んでくるから車にいて」

「あ、うん」




少しして ―――――



「よっ! お疲れ!」と、晴輝。


「よっ! お疲れ! ていうか、あんたの所から私のバイト先、超近いんですけど!」


「あー、らしいな」と、晴輝。

「知ってたの?」と、私。

「知ってた」と、晴輝は、あっさりと返答。



「……………」



「一言言ってよ!」と、私。

「何故?」と、晴輝。

「何かあったら、そっちに行くから」と、私。

「あっそ!」と、晴輝から冷たくあしらわれた。

「冷たっ!」

「気のせいだろ?」と、晴輝。



その後、私達3人は、車内で色々と会話しながら帰って行く。


そして、お姉ちゃんから仲直りした事を聞いた。



「残念だったね」



隣同士に腰かけていた晴輝と私は、晴輝にしか聞こえない声で言った。




私の右頬を摘ままれる。



「…いたい…」



摘ままれた頬から手が離れる。




「本当、二人って仲良いのね」と、お姉ちゃん。


「辞めてよ! ただの喧嘩友達だから」と、私。


「喧嘩友達ね~」と、お姉ちゃん。


「でもそれって、どちらかが想い寄せてんだよなぁ~」と、智耶さん。



「断じてないっ!」と、晴輝。

「そうそう」と、私。




二人は、晴輝の想いを知らないから言える事。

私は晴輝の想いを知ってるから ――――


私達はテーブルを囲み食事をしてた。




ある日の事 ―――――



「真裕、明日休みだったわよね?」


と、お姉ちゃんが尋ねてきた。



「うん」と、私。


「4人で出掛けようか? って話してるんだけど」


と、お姉ちゃん。


「えっ?」



またまた、お決まりのパターンのお出かけ計画。

もう何度付き合わされただろう?

別に嫌ではない。

1番辛いのは晴輝だろう?



「晴輝君も休みみたいで参加するって言っていたらしいけど」



「アイツはね……」



私は自分にしか聞こえない声でポツリと呟いた。




「3人で出掛けたら?」と、私。

「何言ってんの? 晴輝君の話し相手になってあげたら?」


「ええっ! やだっ! アイツといると喧嘩ばかりだし! つーかさ、たまには二人で出掛けてきたら? 私が、こっちに来てから4人で出掛けてばかりじゃない?」


「そんな事ないわよ」


「そうだよ。それに、私、久しぶりに友達と会う約束しちゃったし。後、急なバイト入ったらいけないから行けない! ごめんっ!」



両手を合わせて謝った。



「そう? 残念ね。じゃあ仕方がないわね」




そして ―――――



「じゃあ、私、行って来るから」と、お姉ちゃん。


「うん。行ってらっしゃい」



お姉ちゃんは出掛けた。

智耶さんと合流する。




「あら? 晴輝君は?」

「急なバイト入ったらしくて」

「そう。真裕は、友達との先約あったらしくて……後、バイト入ったらいけないからって断られた所よ」


「そうか。じゃあ二人で出掛けるか」

「そうね」



二人は出掛けた。




♪~


『起きてるか?』



そういうショートメールが入って来た。

相手は晴輝からだった。



♪~


『起きてるよ。久しぶりに3人で出掛けて来なよ』




♪~


『俺が二人の間にいれると思うか?』



♪~


『私がいない間、出掛けてたじゃん!』



♪~


『前は前! 正直、今は無理! バイト入ったとか言って断り入れた。つーか、お前、まさか行ってない感じ?』




♪~


『うん、行ってないよ。友達と久しぶりに会う約束したとか言って嘘ついた。急なバイトも入ったらいけないからって理由のおまけ付き』



♪~


『友達? あ~、その理由もありだな(笑) な~んだ、そうか。行かなくて良かった! お前が来なかったんじゃからかう相手いなくて、俺、超暇してたんだ!』



♪~


『私はあんたの遊び相手でも暇潰しの相手でもないんですけど!』



♪~


『まあ、もし、そうなったら強制参加させるけど』



♪~


『やだ、それ聞いたらもっと行きたくないよ!』



♪~


『だったら俺も行かないで、上手く言って二人を見送る迄だ。お前いないんじゃ面白くねーし』



♪~


『だから私はオモチャじゃありません!』



♪~


『なぁ、ちょっと会わないか?』




ドキン


晴輝の意味深ではないけど、そう分かってものの、この台詞には胸が大きく跳ねた。



♪~


『意味深メール辞めてくれないかな?』



♪~


『良いから会おうぜ! デート相手するいないんだろうし』



♪~


『本当はお姉ちゃんと会いたかったくせに。お姉ちゃんの代理なんて私には出来ないんだけど~』



♪~


『ともかく待ち合わせな!』




晴輝から待ち合わせ場所や時間のメールが送られてくる。



断る理由なんてなく、渋々行く事にした。


きっと行かなかったら、アイツは時間の許す限り私の所迄足を運びそうな気がしたから。






馬鹿しあって


ふざけあって


冗談混じりの会話




だけど ―――――



あなたは姉への思いがあり


本当は複雑でしょうがないのに


私と出掛けるなんて


どうかしている




だけど ――――




第7話


●友達



「真裕ちゃん」



同じバイト先の男の子。

大塚(おおつか) 竜一(りゅういち)。18歳。



バイトが休みだった彼が、バイト先に訪れ、私の帰る時間のタイミングを見計らっていたかのように呼び止められた。




「お疲れ様です。あれ? どうしたんですか?」

「お疲れ様。ちょっと時間良いかな?」

「はい」

「単刀直入に言う。俺と付き合って欲しい。好きなんだ。君の事」



ドキッ

突然の告白。

私は驚くのと同時に胸が高鳴る。



「いや……でも……私……」

「誰か好きな人いる感じ? もしくは、彼氏とか?」

「いいえ、いないんですけど……えっと……」

「恋人からとは言わない。友達からで良いから」

「……友達から…ですか…?」


「お互いの事、良く知って理解した上で正式に恋人として付き合っていくのもありだし」

「……分かりました」




私は友達から付き合ってみる事にした。


時折、デートを重ね相手を知る。



――― そして ―――





「先輩、私と、お付き合いして下さい」

「えっ? 良いの?」

「はい」

「良かった」

「えっ?」

「諦めかけてたから」

「すみません」



私達は正式に付き合う事になった。



それから数ヶ月が過ぎた、ある日のデートの日。



「先輩、受験とかで忙しいのに、私なんかとデートして大丈夫ですか?」

「大丈夫。安心して」



その日のデートの途中 ――――




「竜一」


一人の女の子が声を掛けてきた。


「美幸」




≪呼び捨て? 友達?≫




「あ、ごめん。もしかしてデート中だったりする?」

「ああ」




分かって声を掛けてきたのかは定かではないけど、私と先輩を交互に見ながら彼女は尋ねてきた。


私は、正直、複雑だった。




「じゃあ、後でメールするね」

「ああ、分かった。後でな」



別れる二人。



「先輩?」

「ごめん。今の友達で、クラスメイトの子」

「……そうですか……」

「疑ってる?」

「いいえ。でも、正直複雑です」

「えっ!?」



「ごめんなさい。やっぱり嘘はつけません!」

「真裕ちゃん?」


「帰ります! 私…こういう展開っていうか……例え、本当にクラスメイトとか友達って言われた所で…正直、信じられなくて……今から彼女に連絡してあげて下さい!」


「あっ! 真裕ちゃん!」



――― 次の日 ―――



「真裕ちゃん」



クラスメイトの女子生徒が話し掛けてくる。



「何?」

「昨日、男の子といる所を見掛けたんだけど、彼氏?」

「えっ!? あ、うん……」

「じゃあ、車持ちの彼氏は?」


「あー、あの人は、お姉ちゃんの彼氏で私の彼氏じゃなくて……タイミング逃して言いそびれてしまって……ごめん……誤解させたみたいで」


「ううん、大丈夫。その事は晴輝君から聞いていたから」

「えっ!?」



私は意外な言葉が返ってきて、晴輝を見ると、すぐに反らした。



「私こそごめん……誤解してしまって。それより、あの男の子は辞めた方が良いよ」

「えっ!? あの男の子?」

「うん、昨日、一緒にいた男の子。私、中学が一緒だったんだけど、あの人、女癖悪いの」


「……えっ!?」



耳を疑った。




「正直、私も付き合った事あって……すぐに別れた方が良いよ。自分が傷つくだけだから」


「……そうか……ありがとう。教えてくれて」

「ううん」





まさかと思ったけど

私はクラスメイトの言葉を信じ別れを決意した。


第一、昨日、友達とかクラスメイトというのも引っ掛かっていた。



『後でメールする』


そういう会話を彼女のいる前で、堂々と普通に言う時点でおかしいと思ったからだ。




「……クラスメイトから聞いたの……」

「……そうか……」

「私、いい加減で付き合えないし、付き合っていく気ないから……だから……ごめんなさい……」


「真裕ちゃん……でも…これだけは信じて欲しい。君の事は本気だったから」

「……分かりました……」



最後のデートの日として、私達は別れ、バイトも辞める事にした。



その日の帰り、私は歩道橋の上でぼんやりしていた。




「真裕?」




ビクッ

誰かに名前を呼ばれ振り向く視線の先には晴輝の姿。




「……晴輝……」


「どうしたの? 思いつめた顔して。変な気起こすなよ」

「起こさないから! つーか、起こしません!」


「なーーんだ」


「な、なーーんだって……あのねーーっ! あーー分かりました!じゃあ! ここから飛び降りてやるわよっ!」



歩道橋をよじ登る。



「うわっ! 馬鹿っ!」




グイッ


私の手を掴み引き止め、バランスを崩し倒れ込みそうになる所を晴輝は抱き止めた。




「お前、馬鹿? マジに取んなよ! こっちが焦ったし! まあ……俺も悪かったけど……真裕……?」




ポロリと涙がこぼれ落ちる私。




「えっ? ちょっ……真裕、泣く事はねーだろ? マジごめん……」


「……人が……落ち込んでいる時に……」


「……真裕……」



晴輝は抱きしめた。


ドキン

私の胸が高鳴る。


私は晴輝の胸に顔を埋めた。




「何があったか知らねーけど……特別だからな」



私は晴輝を抱きしめ返した。






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