あたり前の時間
第5話
●喧嘩
「ただぃ……」
「何の関係もないわよ! そういう自分だって、女の人と一緒にいる所を見かけたわよ! 私は、友達だろうって……そう信じて……それなのに…智耶が信じてくれないんじゃ………」
「彼女は友達だ! 仕事の仲間だよ!」
帰って早々、二人の修羅場に遭遇したと思われる。
「だったら私の事も、そう思って信じてくれても良いでしょう?」
「……………」
「……今日は……帰る……」と、智耶さん。
帰り始める智耶さん。
異様な空気の中、私はただ、ただ、二人の姿を見つめる事しか出来ず、勇気を出して私は姉に尋ねた。
「……お姉ちゃん……良いの……?」
「今日は……何を話しても一緒よ。一方通行よ。お互い冷静にならなきゃ……」
「…………」
私は姉に、それ以上は聞けず、私に何か出来る訳でもないけど智耶さんの後を追った。
「智耶さんっ!」
呼び止める私の方に振り向く智耶さん。
「真裕ちゃん……」
「……別れたりしないよね? お姉ちゃんは浮気なんてする様な人じゃないよ!」
「……ああ……それじゃ……」
帰って行く智耶さん。
多分、智耶さんも分かってるはず。
だけど、素直に受け入れられない心境なのだろう……
私は部屋に戻る。
すると、お姉ちゃんは涙を流していた。
「……お姉ちゃん……」
私は、お姉ちゃんの姿を見つめ、聞こえない小さな声で言うと、自分の部屋に行くのだった。
○津盛家
~ 晴輝 side ~
「あれ? 兄貴……早……」
「……………」
兄の様子がおかしい事に気付く。
♪~
『今、兄貴帰って来たけど、二人何かあった?』
ショートメールで真裕に送る。
♪~
『ちょっと喧嘩していたみたい。偶然に遭遇したけど』
♪~
『そうか……』
♪~
『お姉ちゃんが心配? やっぱり好きな人が、そういう状況だし傍にいてあげたいと思ったでしょう? 家、来る?』
♪~
『良い。辞めとく。行きたいのは山々だけど、そっとしておく』
♪~
『お姉ちゃん、泣いてたよ』
「……………」
真裕の返信に、正直、傍にいてあげれたらと思った。
だけど、彼女の涙は、兄貴への思いに流す涙に俺が何か出来る訳がない。
逆に俺自身が辛いだけだろう……
♪~
『だったら、お前が慰めてやれよ』
♪~
『バーカ。こういう時は女より男でしょう?』
『人によりけりだろうけど……私だったらそうだよ。優しさに甘えちゃう! な~んて!』
♪~
『そうか? だけど、それはそれで問題じゃね? とにかく俺は行かない。夏奈さんの事宜しく』
『第1、夏奈さんが流す涙には、俺はどうする事も出来ない。兄貴に対する思いの流す涙だろうから』
「晴輝……」
♪~
『そうかー……分かった』
私達はメールのやり取りを辞めた。