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あたり前の時間  作者: HARU
1/9

姉の彼氏。ムカつくアイツ。タイミング

第1話


●姉の彼氏



「ねえ、お母さんお願い!! お姉ちゃんの所に住みたい!」


「駄目よ!!」


「えぇぇぇっ!! どうしてっ! 高校近いし、バイトだってきちんとするし迷惑掛けないからっ! だからお願いっ!」


「……………」




私、愛澤(あいざわ) 真裕(まゆ)。15歳。

私には、姉・愛澤(あいざわ) 夏奈(かな)。20歳。がいる。



春、4月に入学式を控えている私は姉の住むマンションから高校が近い為、一生懸命に母親に説得中だ。


未だに許可が貰えず、かなり苦戦中だ。



そして、その結果、私は平行線だと思い ―――――――



母親に内緒で、強制的に姉の住むマンションへと押し掛ける事にし足を運んだ。




ガチャ

ドアを思い切り開けた。




次の瞬間 ―――




ドキーーーッ


私の目の前の光景に心臓が飛び出す勢いだった。




「!!!!!」



姉が男の人と交わす濃厚なキスシーン。


テレビで見た事はあるが、流石に身内の生のキスシーンは、15歳の純粋な乙女に強すぎる。




ドサッ

抱えた荷物を足元に落とした。



二人は離れた。




「あら? 真裕」



何事も無かった素振りな様子で私を見る姉。




「妹さん?」




姉とキスしていた男の人が、私を見て話す。




ドキッ

胸が大きく跳ねる。


スラリとした背の高い優しい雰囲気の男の人。



しかも ――――――


≪超イケてるし≫


私は内心叫ぶように、そう思った。



正直、美男美女カップルと言っても良いのではないだろうか?


まあ、私の個人的な感想なんだけど…………



「ど、どうも…は、初めまして」


「初めまして」


優しい微笑む男の人。




「それじゃ、夏奈、またな!」


「うん、またね!」




お互い控え目に軽く手を振りつつ、ラブラブオーラ(かも)し出し二人は別れた。


男の人は、姉の部屋を後に帰って行った。




「どうしたの? 急に。来るなら言ってくれれば迎えに行ったのに」


「いや……それはちょっと……」


「えっ?」


「つーか、ラブラブな歓迎をどうも! それより、お姉ちゃんにお願いがあるの!!」


「何? 来て早々」


「お母さんを説得して欲しいの!!」


「えっ? 説得? どうして?」


「家……出て来ちゃったの……」


「えっ!? 出て来たって……冗談……」



お姉ちゃんの言葉を遮るように私は話す。



「冗談なんかじゃなくて本当なの!」


「お母さん心配してるんじゃないの?」



お姉ちゃんの両腕を掴む。



「お姉ちゃんの所から高校通わせて欲しいの! バイトだってするし、お姉ちゃんの言う事聞くから! 炊事、洗濯、家事協力するから、だからお願いっ! お姉ちゃんっ!」


「………………」


「やっぱり…駄目? 彼氏いるし…邪魔になる?」



私は掴んでいたお姉ちゃんの両腕から手をゆっくり離す。



「……分かった…帰る……ごめん……」


「…良いわよ」


「えっ?」


「だけど約束よ。ここに来た以上、私の言う事は、きちんと聞いて貰うわよ。私は、お母さんの代理に過ぎないんだから」


「ありがとう!!」


「そのうち家が良かったなんて言わないでね」


「えっ!? やだ……それ聞くと……帰りたくなってきた……」


「あら? 今、家に帰ったら、お母さんに、こっぴどく叱られるんじゃないの~? 黙って出て来たんでしょう?」


「……それは……」


「ともかく、お母さんには上手く言ってあげるから任せて」



お姉ちゃんはウィンクした。



「うんっ! ありがとう!! お姉ちゃんっ!」




そして、お姉ちゃんとの同居生活が始まった。








第2話


● ムカつくアイツ



春、4月。入学式。


「はい、入学祝いよーー」

「ありがとう!! お姉ちゃん」



テーブルに並ぶ料理。

お寿司だ。


姉妹水入らずで入学祝いをする。

淋しいような嬉しいような……


まあ、そんな事はさておき。

私達は食べ、お腹を満たした。




そんなある日の事だった。



「ありがとうございます」

「いいえ。それじゃ」



お姉ちゃんの彼氏である。


津盛(つもり) 智耶(ともや)さん。21歳に朝、学校迄、送って貰った……のは良いけど……



「ねえねえ、今の彼氏?」

「超カッコ良くない?」

「えっ?」



二人の女子生徒が駆け寄って来て尋ねられた。



「いいなぁ~彼氏」

「ねえ、いくつ?」

「えっ? 21歳。あ、でも彼は……」



と、話し続ける言葉を遮る様に彼女達は、お構いなしに尋ねてくる。



「いいなぁ~」

「付き合って長いの?」

「えっ? いや…長いとか、そういうの…」

「やっぱり、彼氏は年上の」



「「車持ち!」」



彼女達は息ピッタリでシンクロしていた。


結局、誤解を解く事もないまま、私の彼氏となってしまう。



「違うのに……最悪だ……ごめん……お姉ちゃん……」



「お姉さんの…」



ビクッ

背後から突然の男の子の声に驚き肩が強張った。



「彼氏なのに、自分の彼氏なんて、いつから、あの人の彼女になったんだ? 愛澤 真裕」



振り返る視線の先には眼鏡を掛けた、いかにも真面目そうな冴えない男子生徒がいた。



「それは……つーか、フルネームを呼び捨てどうも! つーか、誰!? 赤の他人のあなたに……」


「確かに赤の他人でも、関わりないのは嘘なるぜ」



私の言葉を遮るように男子生徒は言った。



「えっ?」


「ともかく宜しくな! 愛澤 真裕さん」



そう言うと男子生徒は去って行く。



「真面目そうな奴……つーか、関わりないって…どういう事なわけ?」




ある日の日曜日 ―――



「ええーーーっ! デートに私も参加?」


「良いでしょう? バイトもまだ見付からないんだし付き合ってくれても。それに約束でしょう? 私の言う事聞くって!」


「それは……いや…でも、それとこれとは……」


「えっ? 何?」



私に詰め寄る。


「いいえ……何でも…ありません…」


「よろしい。日程は、来週だから。当日、智耶が迎えに来てくれるからマンションで待機という事で宜しく~♪」


「…分かった…」



出かける約束をし、その日の数日前の事だった。




ドカッ

背後から、私の後頭部に何かが当てられた。



「いったぁーーっ!」

「あー、悪い」



ムカッ

わざとと思わせる謝り方に腹が立つ。


振り返る視線の先には例の眼鏡男子がいた。



「眼鏡男っ!! つーか、私、あなたに何かしました?」

「別に。邪魔だったから…つーか、そこにいるなんて知らなかったんだよね~?」


「いやいや、明らかにわざとでしょう!?」

「やだなぁ~、人聞きの悪い」



≪マジムカつく!≫



内心に秘めながらも本当腹立だしい態度。




「あのっ! 目開いてますぅ? あー、それとも、その眼鏡が合っていないんじゃない?」



ベシッ

頭を叩かれた。



「いったっ!」



そして、横切る眼鏡男子。



そこへ ―――



「おはよう」



私に声を掛けてくる女子生徒。

私の親友・那賀松(ながまつ) 夏純(かすみ)



「あ、おはよう。ねえ、ところでさ、アイツ、あの眼鏡男子、誰っ!?」



眼鏡男子を見て、夏純に尋ねた。



「あー、クラスメイトの津盛君だよ」

「津盛?」

「うん」



≪お姉ちゃんの彼氏も確か津盛…同じ…まさかね…何の関係もないよね…≫



「で? 彼がどうかした?」

「どーも、こーも…マジムカつくんだけど! 朝っぱらから超感じ悪いっつーの!」

「そうなんだ。でも、彼友達多いし、結構いつも話題の中心にいるよ」

「嘘っ!? アイツ、私には突っ掛かってくるんだけど! 私、アイツに何かした?」

「…さあ?」



私達は、話題を変え校舎へと向かった。




そして、出かける当日となり……



ピンポーン…


部屋中にインターホンが鳴り響き渡る。

玄関先に向かう、お姉ちゃん。


どうやら智耶さんが来た様子。

交わす会話が、そう思わせる。



「真裕ーーっ! 準備出来た? 出かけるわよーー」

「あ、うん。ねえ、おかしくない?」

「大丈夫よ。あなたは十分可愛いんだから」



実の姉に言われるのも照れる。



「でも…」

「ほら、下で待ってるらしいから行くわよ」

「うん…」



話しによると、どうやら智耶さんの弟が来るらしく、その事を昨日、聞かされた。


弟の初対面の私は、ちょっとドキドキしてみたり、おめかししてみたりと……


やっぱり、最初が肝心で第一印象が大事だから……



智耶さんと合流する。



「ごめん。智耶、お待たせ」と、お姉ちゃん。

「いいえ。真裕ちゃん可愛いよ」と智耶さん。




ドキッ


私を見ては、彼女である、お姉ちゃんの前で、さらりと言う智耶さんに胸が小さく跳ねた。


恥ずかしくて照れる私がいた。




「あ、ありがとうございます」

「じゃあ、行こうか? 弟は、既に車の中で待機してるから」



私達3人は車の場所に移動した。


お姉ちゃんは、勿論、助手席で私は後部座席に乗る。




「弟の晴輝(はるき)

「ど、どうも」



軽く自己紹介を智耶さんからしてもらい、とりあえず挨拶をし、弟は軽く会釈した。




ドキン

私の胸が大きく跳ねる。



≪うわぁ…弟もカッコイイ…正にイケメン兄弟≫




「真裕ちゃんと同級生だし、仲良くしてやってね。そいつ無愛想だけど……」

「つーか、どうして俺が休日迄、クラスメイトの女と出掛けなきゃなんねーんだよ!」




≪…ん? ……この口調……≫



私は聞き覚えのある話し方に、ふと脳裏に過った。



「クラスメイトなら尚更良いだろう?」

「兄貴の、お遊びに付き合ってられねーっつーの!」


「お遊びとはなんだ? 彼女達(レディー)の前で失礼だろう? 御免なぁー、二人共」


「いいえ」と、私。

「大丈夫よ。若い証拠だから恥ずかしいんじゃない?」


と、お姉ちゃん。




「そうか? さあ、しゅっぱーーつ!」


と、智耶さんは言うと車を走らせた。



「人の気も知らねーで」


聞こえるか聞こえないかの声で弟は言った。




「ねえ、確認なんだけど、津盛君って…クラスメイトって…」



まさかアイツ?

でも、眼鏡掛けてないし……



「俺、プライベートと学校違うから! 以上!」


「えっ!?」



≪プライベートと学校?≫


内心そう思いつつも、何となく嫌な予感がしてくるが、一応、更に尋ねてみた。




「あの……どういう……」

「分かんねーなら、そのままだ。一生考えてろ!」




ムカッ


やっぱりと思う中、態度に腹が立つ。




「……眼鏡男……あんたねー……」



呆れて溜め息を吐く様に言う私。




「ほらっ! 気付いてんじゃん!」

「ふんっ!」



私は車の窓の外を見る。



≪最悪だ…コイツ…あの男じゃん! 性格悪ければ、イイ男も台無しじゃん!≫



私は心の中で思う中、話しかける。




「ねえ、眼鏡男。その性格直さなきゃ…」

「別に良いし! 女は腐る程いるし! つーか、その眼鏡男はよせよ! 真裕」



ドキッ


初めて異性から呼び捨てにされ胸が大きく跳ねた。





どうしてか? って……


それは、16年間彼氏がいた試しなかったからだ。

元々、性格が、こんなだし、こう見えても告白する勇気なんて一切なくて男友達も大していた訳じゃない。


普通に平凡で、正直、人生後悔しっぱなしかもしれない―――




「で、良いよな?」

「あ、うん……」

「お前も晴輝で良いし」

「…うん…」



そして、1日が始まった。





第3話


●タイミング


次の日 ―――



偶々、登校中に晴輝を見かけ晴輝と肩を並べて登校する私。



「昨日は、楽しかったね! それよりさ、どうして眼鏡が必要なの? あれだけカッコイイなら眼鏡いらなくない? 女の子に不自由しないと思うけど」


「女は良い! 俺、好きな(ひと)いるし」


「えっ!? いるの? 誰?」

「年上の女。以上!」



そう言うと足早に去り始める。



「あっ! ちょっと待って! ねえっ!」



私は後を追う。





そんなある日の登校中の事だった。



「ねえ、彼氏元気?」

「えっ?」



振り返るとクラスメイトの女子生徒がいた。



「年上の彼氏」

「あー…」

「最近、送迎ないみたいだから」

「あー、忙しいから」



≪嘘つきだ。私≫



そう思う中、女子生徒は疑う事もなく。



「言うタイミング逃すと、元も子もねぇよなぁ~? …馬鹿な女…」



背後から声がし振り返ると晴輝がイタズラっぽい笑顔でいた。



「うっさいな!」

「可哀想に」

「何よ! 私だって…誤解解きたいし!」

「別に良いんじゃね? 面白いし!」

「見せものじゃないし! 遊ばないで!」



私達は騒ぎつつ校舎へと向かった。




それから、その後も変わらず、お姉ちゃんと智耶さんのデートに付き添いで休日は出掛ける事が増え始める。


二人から距離を起き、私達は話しをする。



「ねえ…私達って…ただの連れに過ぎないのに、どうして、いっつも二人の付き添いに同行しないといけないんでしょうか? 私達は、必要なんでしょうか? 晴輝君」


「知らねーよ!」


「…はぁ~…休日迄も、クラスメイトと顔合わせて何してんだか……」



小さく溜め息を吐きつつも言う私。



「つーかさ…俺はもっと憂鬱なんですけど……」

「えっ? 私と会う事以外に何があるわけ?」

「ある! お前だから言うけど、俺、兄貴の彼女が好きなわけ」

「ふぅ~ん……えっ? えっ!? 兄貴の…かの…?」



≪…今、兄貴の彼女って言ったよね? つまりそれって………≫



「えっ!? 待って! 彼女!? お、お姉ちゃん!?」


「そう、夏奈さん」



「……………」



「付き合わされる身になってみろよ! マジ最悪だっつーの!」




『年上の(ひと)……人の気も知らねーで』



前に車中で聞こえた呟きと、学校通学中に聞いた会話が脳裏に過る。




「そう言う事だったんだ……」

「えっ?」


「いや、何か引っ掛かっていたから……それって……本当、不公平だよね……好きな人が自分の兄弟とか友達の恋人とかって…後、友達と同じ人好きなパターン…それに付き合わされるのって…本当、最悪だよね…」



「真裕」


「本当、可哀想な晴輝君」



私はイタズラっぽい笑みを見せた。



「うわっ! その顔ムカつくっ! あーー、話さなきゃ良かった!」


「本当だよねぇ~……でもさ!」

「何だよ!」

「でもっ! それって、今後私達4人に絡んできてもおかしくない話しじゃん!」


「えっ!?」


「だってさ、好きな人が目の前にいてさ兄弟や姉妹とはいえ男と女なんだよ。もしかすると、私があんたの事を好きになるかもしれないし、智耶さんの事を好きになるかもしれないし……明日の事とか未来なんて全然分かんないじゃん!」



「真裕……」



「もし今の私が、そういう状況になって、あんたみたいな立場になるかもしんないし。……だって……兄弟の良い所、悪い所は違うわけだし……」


「まーな」


「その時の心の中、きっと複雑で、ぐちゃぐちゃだよ! 今は全然分かんないけど……」





クールでムカつくけど


社交的なアイツ


優しくて憎めない兄


二人は兄弟



そして


私の心を虜にするのは


一体……誰なのだろう?


恋の炎は


ゆっくり ゆっくりと


灯り始めていた……












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