99 武闘会 その12
「正直言おう、お前が正面から来てくれたから、私はお前をここで倒せる。」
ジャスティが四つの魔法で襲ってきているのだが、ザバルティは安堵の表情だ。途端に、ザバルティの周りから六つの魔法陣が浮かび上がり魔法が発動する。
青い炎の龍。透明な色の氷の龍。銀色に輝く土の龍。白い色の風の龍。金色に光り輝く龍。漆黒の暗黒の龍。その六色の龍はの形をした魔法がジャスティに目掛けて飛んでいく。そのついでとばかりにジャスティが放った魔法を吹き飛ばしてジャスティに直撃する。これまでも壮絶な戦いを見ていたアスワン中の観客はここまでザバルティが本気では無かった事を思い知る程の圧倒的魔力であった。
そして六色の龍がそれぞれジャスティに直撃していった後にもう一つ突っ込んでいく影を見た。
「私は絶対にここからお前を逃がさないよ。」
振ったであろう剣がダブって見える程の早い動きでジャスティを切り裂く一閃はザバルティの直の攻撃だった。
「ちっ。誘われていたのは俺の方か・・・。またな。」
「私の前に二度と出てくるな。」
「それは出来ない相談だ。天使ある所に悪魔ありってな。私でなくとも他が顔を見せるさ。」
最後の言葉となるジャスティの音?声?が聞こえジャスティが不敵な笑顔を見せると、とたんにまさしくバラバラになったジャスティの体。まさしくチリと化したのだ。ただそこには液体が散っていただけになり地面へと自由落下していくのだった。
◇◇◇◆◇◇◇
「降参だ!降参。俺は負けを認めるよ。今の俺じゃ、お前は倒せねぇ。」
「良いんですか?騎士に叙任してもらうのではないんですか?」
「あのなぁ、あんな闘いを目の前で見せられて実力差を確りと目に焼き付けられて戦えると思うか?」
「いえ。あの。その。」
「だぁーから、また戦ってくれよな。もっと修行すっからよ。」
「え?それは構いませんけど。」
「つう事で、俺の負けで決着。良いなお嬢ちゃん。」
「ちょっと、お嬢ちゃんじゃない。ソレイユという立派な名前が私にはあります。」
「ヘイヘイ。ソレイユちゃん。そういう事で俺の負けで、ザバルティの勝ちだ。」
「全く・・・。わかりました。ゴホン。え~そういう訳で、今回の武闘会はザバルティ・マカロッサ選手の優勝です!!」
ゴタゴタの状態から何とか、立ち直ったジレックは負けを認め、ソレイユの勝利宣言を得てザバルティ・マカロッサの優勝となった。割れんばかりの観衆の歓声。健闘を称える声援。失神してしまいそうな女性達を尻目にケンブリット王の宣言の元。閉会した。今回の体育祭の勝利も白組が飾り、ザバルティは体育祭の勝利と武闘会の優勝と悪魔の撃退をして大いに勝利に酔いしれたのであった。
その勝利を一番喜んでくれたのは他でもない、ザバルティ達の家族であった。
その日は一大イベントの締めとして元々宴会の準備がしてあったのだが、悪魔撃退はマカロッサ家の皆が安心する内容であったので盛り上がりは盛大だった。そして警備はラムザの一味が受けもってくれたため、マカロッサ家の者は全員が参加する事が出来、大騒ぎであった。誰も彼もが喜びに震えていたのである。自分の信じた主人が悪魔を滅ぼした事。滅ぼす程の力がある事に喜んでいたのだ。
そして父母や兄弟なども怯えて生活する必要がない事の確認もで来たのだから、盛り上がらない方がおかしいのである。
そしてマカロッサ家の一夜はあっという間にふけていったのであった。
◇◇◇◆◇◇◇
豪華な一室で綺麗な女性二人が相対して丸い机を間に座っている。
「結果はザバルティ君の圧倒的勝利でしたわね。」
「そうですね。はぁ、それにしても何なんですか?あの女共は。」
「仕方がないだろう。ザバルティ君は私やお前が認めた男であり、あの強さとギャップのある純粋で優しい人柄。そして知力も高く。アスワン王国の由緒正しいマカロッサ家の跡継ぎであるのだから。」
「でも、それを一番初めに見つけたのは私なんですから。ザバるんは私の物です。」
「おいおい。早速約束を反故にする気か?ザバるんは私の将来の夫だぞ?」
「ちょっと、さりげなく勝手に決めないでくださいませんか?エリザネス王女。」
「気づくのが若干遅いのでは?さては歳をとられたかな?マリリン王女。」
「何ですって!!」
「何だやるのか?!」
二人の王女は額と額をぶつけ合っていがみ合う様子を見せている。本人の知らぬ所の争いは、どうやら混迷を極めようとしている。
「あの~。まだ二人のどちらかの物になるとは思えないんですが・・・。」
「「なに?!」」
「だって、ザバルティ様の周りには既に沢山の美女がいらっしゃいますよ?」
侍女の言葉を受けて二人の王女は思い出したように苦い顔をして頭を抱える。
「「そうだった!!!」」
美しい二人の王女の絶叫は、王城に木霊するのであった。
◇◇◇◆◇◇◇
「本当に王女様達まで虜にするザバるんは悪魔なのです。いいえ、悪い天使なのです。」
二人の絶叫を聞きながら、王城の屋根の上に立つ小さい女の子は笑いながらそう呟いた。




