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97 武闘会 その10



先に動いたのは大半の予想通りジレックだった。彼は剣を抜かずに真っ直ぐにザバルティへと接近すると蹴りを放つ。それをザバルティは避けてから同じく蹴りを放つがジレックは読んでいた様子でそれを躱すと蹴りを放つ。それをザバルティは躱すと同じく蹴りを放つ。ジレックはそれを避けて殴りかかるがザバルティはそれを躱して同じく殴りかかる。それをジレックは躱してという様に攻守を入れ替えながら連撃を続ける二人。


「面白いねぇ~。」


「そうですか?」


「まだまだ余裕そうだ。」


ジレックの問いかけにザバルティが答えるがその答えを聞いてジレックはニヤリと笑いスピードを攻撃のスピードをあげるのだが、ザバルティはそれにもついていく。


「嬉しいじゃないか?こんな相手とやれるなんてよ。」


嬉しさを爆発させてより一層の激しさを増すジレックの動きは今までのがウォーミングアップだと言わんばかりのスピードアップになり段々と目では追えなくなってきている。会場の人々はスクリーンに映し出されるスローを見ながら観戦となる。勿論、それなりの戦力を持つ者は目で追いかけるのだが、それでも徐々に追えなくなってきているのだ。


「ふん!」


咄嗟に飛び退けるジレック。そのとたんにザバルティの周りに炎が渦巻く。


「おっと。熱くなりすぎて魔法に気が付かない所だったぜ。」


爆炎が巻き起こり炎の柱と化す。そのままジレックへと竜の様な形を保ち向かう。


「ほぉ、器用なもんだ。」


感嘆の声を上げながら更に飛び退く。そして背中に背負っていた剣をおもむろに抜くと炎の龍へと一閃放つと距離があるのにも関わらず炎の龍は切り裂かれた様に纏まりが無くなる。がしかし炎の龍の中から土の龍が姿を現してそのままジレックへと襲い掛かる。その直撃をかろうじて剣でいなしながらジレックは土の龍を蹴り飛び退く離れ業を見せる。


「本当に強いんだなぁ~。」


それでも呑気な感想を述べてから着地する。そこには隙は無い。


「色んな奴と戦ったが、ここまでレパートリーが広いビックリ箱みたいな奴は初めてだよ。」


ジレックはそれまでの緩い顔を引き締めた。


「こんなにワクワクする闘いはそうは無いね。久しぶりに基本に立ち返らせてもらうよ。」


口の端をニッと釣り上げると、両足両腕に着けていたリストバンドを取り外シリングの外へ投げるとリストバンドは物凄い音共に場外の地面にめり込む。そしてジレックはその場にピョンピョンと飛ぶ等をして改めて体を動かし確かめるような素振りを見せる。


「さぁ、続きをやろう。」


そう言い放つと、その身に剣呑な空気を纏い剣を上段に構えてその場から真っ直ぐにザバルティへと突っ込む。その動きは先ほど迄の動きとはスピードがけた違いに違う。ようやく目で追えていた者は見失う程度に早くなっている。


「そのまま手加減をしていてくれれば良かったのに。」


ボソッと呟くザバルティは目の前に土の壁を構築すると剣を構える。土の壁を飛び越えてきたジレックの剣を躱すとドゴン!という音共にジレックは横へと吹っ飛ばされる。


「ぐへっ!!」


「いきなり来るから、ビックリしたじゃないですか?」


ぶっ飛ばされたジレックは横腹を抑えたまま立ち上がる。先ほどの余裕が顔から消えている。


「くっそガキが、調子に乗りやがって。ペッ!」


口から血を吐き出したジレックは憤怒の表情を作ると、ザバルティへと突撃した。


「すいません。クソガキで。」


それをヒラリと躱したザバルティは雷と氷と炎と土の魔法を同時に発動して見せそれを放つ。その全てを躱せず身に受けてしまうジレックはそこから吹っ飛ばされてしまう。体中に火のやけどの跡や氷のやけどの後、雷による傷に土による裂傷にやられている。


「ぐはっ!」


既に、ジレックの体で無事な所は見当たらない。しかし不敵に笑いながら立ち上がる。タフネスとは彼にこそ相応しいと思える現状だ。


「やりやがる。素直に凄いと思うよ。同時に四つの魔法を一人から喰らうとは思わなかったよ。だがなこのまま負けてやるわけにはいかねぇ。はあああ!!」


すると、ジレックの体に変化が起こる。傷という傷が全て塞がれていき元の状態に戻っていくのだ。否、体を構成するパーツらが少し大きくなっている。そして幾分か髪も長くなり逆立っていく。髪の毛の色も茶色から金色へと変化している。そう、あの有名な〇〇〇〇ボールの超〇〇〇人の様な風貌変化を起こしているのだ。


「ふぅー。待たせたな。さぁ、続きだ。」


「おら孫悟空!って言うのかと思ったよ!」


「何だそれ?」


「いや、こっちの話。期待してしまった自分が恥ずかしい。」


照れるように顔を伏せるザバルティ。若干赤くなっている様子が伺える。会場中いや、アスワン王国中の観客達はここまで起こった凄すぎる内容に唖然としている。静かな野原で二人だけで闘っているような感じを思わせるに十分な状況と言えたのだが、ザバルティの様子を見た女性陣から「キャー!かわいい!!」と声が発せられて、ガラリと空気感が変わる。


「おいおい。まだこれからだぜ?」


「あっ、はい。では改めてよろしくお願いします。」


「ちっ。気が抜けるような事を言いやがって。それも仕方が無いか。ここまで一方的にやられてしまったからな。さぁ、気を取り直して行くぜ!」


剣を下段に構えたままジレックはザバルティへと向かうのであった。







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