87 抽選会 その2
リング上でマリリン第三王女がで見せる姿は私と二人で居る時とは大きく違う事を改めて思い知る。
「では早速ですが抽選を始めますね。」
大人の綺麗な女性の姿である。違和感が半端ないのは私だけだろうか?
≪やはり、違うんですね。王女って感じですね。≫
カミコちゃんも同じ様に感じているようだ。つまり少なくとも私の周りの者達と王女の周りの者が見ると違和感を感じるのだろう。それぐらい違うのだ。王女らしい淑女に見えるし、礼節も確りしており『凛』という言葉が似合う様子なのだ。
「さてそれでは早速いきますよ。Aの方はこの方です。」
そういう王女が箱からボールを引っ張り出すと、メインのスクリーンサイドにあるサブスクリーンに王女の手に持つボールが映し出される。そこには30という数字が浮かんでいる。すると直ぐに選手の持つボールが一つ光り輝く。それをサブスクリーンの一つが映し出す。
「王立学院3年生のアーノルド・ガイエン選手!」
王女が名を告げるとサブスクリーンはアーノルドの顔を映し出す。そしてメインスクリーンのトーナメント表のAの所に名前が浮き上がるように表示される。それと共に、拍手と歓声が上がる。盛り上がりを見せる会場はヒートアップしていく様子を見せる。
「次はB。Bの方はこの方です。」
王女の持つボールが映し出される。そのボールの数字は18。
「前年チャンピョン!王立学院5年生のゼスクド・バイエン選手!」
王女の掛け声と共に映し出される選手の顔と表示される名前。
「一回戦の第一試合から前年王者の登場だ!」
解説をする学院生の発言を聞き、加熱する熱気が会場を包み込む。
「マジかよ?」
「一試合目から目が離せなくない?」
そんな声が聞こえてくる。
「では続いてCの方はこの方です。」
次に呼ばれたのは学院生3年ベイポ・フリスキー。そしてその次に呼ばれたのは異国の剣士風の男でダイキチ・フクトメだった。
「まだまだ続きますよ。次はEの方はこの方です。」
マリリン第三王女の手に掲げられたのは13という数字だった。そしてボールを持つ私の手が光り私が映し出される。
「王立学院一年生。超特待生ザバルティ・マカロッサ選手!」
解説者の発言を聞いて、会場中が大騒ぎだ。黄色い声援を受けた後にブーイングが巻き起こるという現象だ。
「ステキ!」
「やられろー!」
「カッコいい!」
「顔が潰れてしまえ!」
「あれが噂の新入生?!」
「あれが噂の糞野郎?!」
相反するような声を沢山届けてもらった。その中でもひと際耳に残ったのは。
「あれがあの女神と思える二人の女性に思われており、あの女神が執着しているという男か。興味深い。」
この声を発したであろう者を即座に見ようと目を向けても、カミコちゃんや神の力を使っても見つけられなかった。
≪見つかりません。ただし、声はインプットされました。次こそ見つけます。≫
カミコちゃんがそう言ってくれたので、スルーする事にしたのだが、私の見立てでは間違いなく悪魔であると思った。近い内に接触を図られると強く感じた。
「カミコちゃん。警戒態勢を引き上げてくれ。」
≪かしこまりました。≫
遂に近くへ来たかと思う。が、恐れは無い。しかしその為に被害が出てしまうのは避けたいのは事実だ。今の私には守りたい物が沢山あるのだから。
「何今の?一瞬神々しい姿に見えたんだけど?」
「えぇ?本当?見逃した!」
「何か一瞬・・・嘘だよね?」
あっ。一瞬だけど神の力を使った事で存在値的な物が人間を越えてしまったかもしれない?
「演出とかじゃないの?マリリン第三王女のお気に入りらしいし。」
「演出だよ。アクセラ学院長の肝いりらしいし。」
良かった。と一言では済まされない無いようだが、【神の使徒】の発覚に繋がりそうではないようだ。
「マリリン第三王女?続きを?」
「あぁ、ええと次の方はこちらの方です。」
どうも、マリリン第三王女はボケていたみたいで、少し間が空いたがそのまま押し切る形で繋げた。
マリリン第三王女の手にあるボールの数字は7。
「歴代最強と呼ばれる王国近衛兵団所属。ロメロ・フランツ選手!」
その名前が発表された瞬間、一瞬の間が空く。
「今回は、特別ゲストとして歴代最強剣士をお招きしました!」
その発言と共に一気に大歓声に包まれる。
「マジかよ?あのロメロが参加?どんだけハイレベル?!」
「流石の超特待生でもロメロには勝てんだろ?」
そんなやり取りの声が聞こえたりしている。それだけ有名な実力者であるのだろう。
逆にワクワクする。強き者と戦えるのは嬉しい限りだ。
しかし、学院生でもなく、王国の近衛騎士に勝っていしまっても大丈夫なんだろうか?そう思い学院長に目で訴えるが、問題ないとでもいう様に微笑むばかりだ。
≪ザバルティ様のお力をお示しくだされば良いかと存じます。信者が増える事になるでしょうから。≫
うん?私は信者を募ろうとは思ってないのだが?
そんな私を置き去りにしながら抽選会はドンドンと進んで行き、会場を興奮の坩堝にしたのだった。




