85 体育祭が始まる。
いつの時代も闘いは避けられないようだ。闘いには色々あるが、今回は武闘という闘いだ。
残念ながら、推薦されてしまった。何を隠そうアクセラ学院長とマリリン第三王女のダブル推薦に不特定多数の学生達からの推薦も含まれている。不特定多数の推薦人数はなんと5万票を越えているそうだ。
一学年におよそ2万人であり5年制である事から学院内のおよそ半数が推薦した事になる。そもそも学院生では無いが、マリリン第三王女(理事会長)とアクセラ学院長のダブル推薦の時点で決定しているのだが学生からの推薦でも一位を獲得した事で変な風評を得る事がなく心配なく出場できる事になってしまった。
「「「流石ザバルティ様。」」」
と家の者達は言い。
「「「流石ザバルティ君。」」」
とクラスの者は言った。私の意志に関係なく物事は進むようになっているみたいだ。
≪仕方がありません。それだけマスターが抜きん出ているという事なのですから。≫
そうなのかもしれないが、私は別に目立ちたい訳では無いのだ。寧ろ目立たない位の方が良いくらいだが、やっている事は全て真逆の目立つ事をしている自覚はある。したい事が目立ってしまう事である事が理由だ。その内大っぴらに【神の使徒】である事もばれてしまうような事も起こりそうだ。
≪可能性はあります。しかし、【幸運の星】の影響もあり恵まれる環境になりますし、人にも恵まれますから特別に気にする必要も無いと思います。≫
と、カミコちゃんが言ってくれるので凄く心配という訳では無いのが救いだったりする。
自分がやりたい事としなければならない事としてもらいたいと思われる事を一個一個着実に実行していくしか今の私には出来ないも事実だと思う。
「まぁ、やるだけやってみよう。」
≪その意気です。≫
◇◇◇◆◇◇◇
早くも週末が過ぎて王立アスワン学院の体育祭が始まった。今日は初日だ。最終日は5日後となっている。私の参加する武闘会も今日から予選がスタートする事になっている。1年生からの出場は私のみで後は上級生と学院が招待した他国の者が参加する事になっている。どの参加者も推薦されて出場する事から考えてもそれぞれが相応の力を有している者達である事は想像に難くない。ただ、正直負ける気は一切しないのはやはり自惚れなのだろうか?それとも積み重ねてきた実績からくる自信なのだろうか?
まぁ普通に考えるとドラゴンを単独で倒せる者など、世界広しと言えどもそうは居ないだろうと思っているのは事実だ。だが、アクセラ学院長がスペシャルを用意するとおっしゃったので、もしかすると物凄い強者の参加があるかもしれない。そう思うと少しワクワクしてしまうのは男の子だからだろうか?
ここに来て色々と心境の変化が私に出てきているのは事実だ。今は少しでも強い者と闘い悪魔との戦闘になった時の準備としたいという思いまである。
「ふう。じゃあ行くかな?」
「お?もう行くのか?」
「早めに行って会場を見ておきたいというのもあるんだけど、準備は念入りにしたいと思って。父上達は本当に今日から見に来るのつもりですか?」
「そのつもりだ。我が息子の勇姿をみたいからな。」
「わしもいくぞ。」
「お爺様まで?じゃあ全員集合ね?」
「「「わ~い!やったぁ!!」」」
というわけでマカロッサ家一同が観戦する事になったようだ。ありがたいと思う反面、恥ずかしさが襲ってくる。父上が私に食いつきお爺様が便乗し母上が号令を出し弟達が喜ぶ。平和であると思う。悪魔が襲ってくるかもしれない状況で予断を許されない状況であるが、怖がっているより断然健康的だ。
「アイリーン。家の事を頼むよ。コーネスはついて来て。シーリスは家族をお願い。」
「「「かしこまりました。」」」
「あと、誰か護衛のメンバーを一人私につけて欲しい。その他は家族と屋敷の護衛を頼む。」
「「「かしこまりました。」」」
何かあった時の為に、一隊分は傍に居てもらう。他は屋敷の守備と家族の護衛だ。もちろん父上にも専属が居るので、遠巻きに護衛してもらう程度なので、主力は屋敷となる。
「じゃあ、行ってきます。」
「「「「いってらっしゃい。」」」」
家族に見送られて屋敷をでる事になった。ミーリアには私の家族と一緒に居てもらう事にしたし、ロバートやトーマスにアリソンはそれぞれの家族の相手で学院内をエスコートしたり、催し物を案内する事になっている。
アイリーンがここから一週間は家に居てくれる予定になっているし、隊長のユカが万全の体制で屋敷を守ってくれるだろう。それに念話で会話できるようにカミコちゃんがしてくれているからこれ以上頼もしい事はないだろう。
そうなのだ。私の危惧する事は武闘会事態では無く、その為に王都テーストに人が集まり収拾がつかない状態で家族を襲われてしまう事なのだ。
≪大丈夫です。例えザバルティ様が戦闘中であっても必ず連絡します。そして最良の結果になる事は決まっているのです。≫
そうカミコちゃんの太鼓判を貰えると、少しだけ安堵できるのだ。




