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83 団体決闘 その4



「はい!タイム!!」


「何でしょうか?」


「いや、ミーリアの言葉使いが凄く悪くない?」


「はて?ザバルティ様に対する侮辱は100回死ぬより厳しい物を与えねばなりません。それに比べたら優しい言葉使いでは無いですか?」


「えぇ?じゃあさ、カンセンの後に語った言葉ってとっても恐ろしいんだけど?」


「そうですか?とっても正確に読み取ってくれたようで、馬鹿ではあるが知能は有する生物であったのだと理解できましたが?」


「いや、そういう意味じゃなくて。」


話はトーマスから聞いているんだけど、隣にミーリアが居るから直接質問するんだけど、帰って来る返答の意味が良く分からん。隣のトーマスを見ると、悟りを開いた仏様のような顔になってるし、回りを見渡すと他のクラスメイトも同じ顔をしてる。よっぽど、私よりも皆の方が神の使徒に相応しいんじゃないかと思うよ。


「他に無いようなら、進めますよ?」


「あぁ、そうしてくれ。」


そう言うしかないじゃないか。



◇◇◇◆◇◇◇



「始め!」


その合図が出るより前にカンセンは戦意喪失していたが、身動きが取れない。いや、正確にいうなら懺悔を待つ信者の様だ。身動き一つしないのだ。そんなカンセンに向かってミーリアはゆっくりと歩いて向かって行く。その動きはとても優雅であり、見る者を虜にする程の綺麗な動きだ。観客の者も全国の中継を見ている者もその場から離れられず、魅入っている。その動きをカンセンも同じく魅入るかのようにうちろな目で見ているのだ。


「・・・。」


「・・・。」


先ほど迄の喋りは無くお互いに無言だ。ただ、スゥーと歩くミーリアを見ているだけだ。そうしてカンセンに手が届く位置にミーリアは立つと歩みを止めた。


「では、ブタサン。用意は良いかしら?」


「はい。女神様。」


そう言うとカンセンは頭を垂れた。そして、ミーリアはフッと笑うと蹴りを放つ。やはりカンセンは避ける素振りすらない。鳩尾に受ける。気絶するカンセン。しかしミーリアはそれを許さない。パッンっと大きな音が会場内に響く。ミーリアの平手打ちがカンセンの頬に炸裂する。頭が90度以上回転する。


「誰が気絶して良いと?」


「申し訳ありません。」


気絶から覚めたカンセンはただ謝罪する。そして頭を下げるとミーリアの蹴りが炸裂する。そしてやはり気絶するカンセン。そこにビンタが炸裂する。そしてカンセンは気絶から目覚める。そして謝罪する。それを目を背けず見ている観客と全国の人々。ただただ、その神々しきミーリアの様子を見つめるのみなのだ。異様な状態。異常事態であると言えるのではないだろうか?

そして蹴られては気絶しビンタを受けて目覚める。この工程を数十回おこなったいや100回を越えたのだろうか?見ている者もおこなっている者でさえ数を数えていないのだ。


「この豚が!少しは改心したか?」


「はい。女神様。」


「では、最後にしてやろう。」


「はい。女神様。」


クッと腰を落とすミーリア、その動作はとても優雅である。その後にドカン!という音と共に吹っ飛ぶカンセンはそのまま真後ろに吹っ飛びリングを越えて先にある壁に激突、貫通し見えない所まで行ってしまった。


「審判殿!」


「は、はい!」


「私の勝利で良いか?」


「あっ、すいません。勝者ミーリア!」


この時の事を審判をしていたドラルンタは後にこう語っている。


『あれは、何だったのか今でもわからない。一番近くに居てもわからなかった。ただ、彼女の動きはとても優雅でありこの世の者の動きには見えなかった。あの時は時間が止まったかのようだった。あれを見ていた者達は私と同じ感想ではないだろうか?あれは神の御業であったと。そしてあの時のミーリア殿は神々しき波動を放っていたと。』



◇◇◇◆◇◇◇



「という事があったのです。大変でした。」


「うん。お疲れ様。」


「でも私はあの時の記憶は曖昧なんですよね。何か見ているだけのような。それでいて確りと動いて殴ったり蹴ったりしていた実感もあるんです。あの時はスッゴク怒っていたのは確かですし、半端ないくらい憎悪にまみれていて自分で感情をコントロール出来ないくらいになっていましたから。そのせいかな?って思ってます。でもすっごくスッキリしました。」


「あぁ、そうか大変だったね。」


「そうでもないですよ?気持ちよかったです。」


可愛らしく首を傾げるミーリアだが、あんな話を聞いた後では今までとは少し違う感じに見えるのはどうしてだろうか?やはり女とは恐ろしい物だな。つうかさ、突っ込みたい所が一杯なんだけどどうしたら良いんだろうか?このままスルーする方向かな?そうだよね。その方が良いよね。


「でその後は?報復とかあったの?」


「いえ、どうやら彼らは改心したらしいのです。先生たちが言ってました。特にカンセンの変貌ぶりは凄いようで、まるで悟りを開いた僧侶のようだと聞きます。あの後ガリル家の領地没収や爵位の剥奪が現実になりそうでしたが、カンセンと面談した者達から嘆願され、今回は処分保留となったようです。本当にどうしたんでしょうね?」


人格が変わるぐらいの衝撃的な出来事だったんだね。悟りを開く位の事だったんだね。わかるよ私には。

とにかく皆が無事で良かったと思う事にした私だった。




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