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80 団体決闘 その1



「それではこれより、団体決闘をおこなう。審判は私、ドラルンタ・エンドバーが行う。立会人はここに居る者達全てだ!」


「「「「「「「「おう!」」」」」」」


「頑張って~♪」


「負けんなよ!!」


ここは学院内の施設の一つのスタジアムである。がやがやと騒がしく、声援なども飛び交っている。

今回の決闘は全職員と生徒が見守る中、おこなわれる事になった。しかも国内中継付きときている。

国内中継という事は負けた方は一生の恥になってしまう程大きな名誉を失う事になり、逆に勝った方は大きな名誉を得る事になるのだ。


「学院長がやりやがった。」

「相当頭にきているんじゃないか?」


などと呟かれている。何故ここまで大掛かりにやるのか?超特待生制度に対する不満の払拭を図る狙いもあるようだ。いいチャンスだと捉えて動いた様子がある。更に。貴族に対する一つのけん制があるのも間違いない。未だに学院の権力独立を快く思っていない者や、分かっていない者が多く居るのだ。


「父上。見事相手を打ち取って、ガリル伯爵家の名を国中に広めてやります。」


「がははは。カンセンよ。お前なら負ける事はなかろう。何せ英才教育を施してきたのだ。たかだか田舎貴族や平民出の者達に後れを取る事などありはしないだろう。が油断はするなよ?」


「勿論です。手抜かり無くキッチリと教えてやりますよ。力の差を。」


「その意気じゃ。確りとな。」


「はい。」


このスタジアムの控室にて会話をするガリル伯爵親子。ガリルは剣術が優れているのだが、素行の悪さで未だAクラスであると思っている。事実、剣術に関しては同世代では上位に入るとみられている。

そしてその他の4名も全てガリル伯爵家についている貴族の子息ばかりで、将来はカンセンの重臣となる物ばかりであり、腕自慢の者達なのだ。しかも、彼らは全員5年生。つまり最上学年生であるのだ。

嫌われ者でありながら、その実それなりに実力がある為、排除されないでいたのだ。


「カンセン様。準備はよろしいですか?」


「おう。準備できている。」


「では参りましょう。」


「うむ。では父上行ってまいります。」


カンセン一味はリングに向かって行く。同じ様に向こう側では今回の決闘相手となる超特待生の代表5人がリングへ向かって来ている。


「はぁ?女が二人も居るぜ?」


「何じゃそれ?やる気あんのか?」


「どうせ負けると思って女を出してきたんじゃないか?」


「俺、女が良いなぁ。」


「ふふふ。公衆の面前だ。優しくしてやれよ。」


自分たちが負けるなど頭にないカンセン一味は下品な笑顔をしながらリングへ向かって行く。自分たちが気絶した本当の理由を知らないからこそ、余裕なのである。


「これよりルールを説明する。今回は学院内の決闘であり、団体決闘という形をとる事から、相手が負けを認めるか、リング外に出されるかしたらそこで終了。また私の止めでも終了勝敗を決するものとする。五名の対抗戦であり、星取り戦である。全五試合は必ずおこない。その勝ち数で決着とする。両方共に良いか?」


「「異存なし。」」


「では両先鋒はリングへ。」



◆一戦目◆ ドコーラ・フンダ VS カイ・ローエン



「はぁ?なんでカイが先鋒なんだよ?大将じゃないのかよ?」


「やっぱり、負ける事気にして一番になりやがったのか?」


「ふん。一勝だけでもって奇抜な作戦かよ?」


やはりここでもカンセン一味は見当はずれな事を言っているのだが、今のこの現状では大半の者が国中で同じ様に思っている。奇抜な戦術であると。


「けっ。好きに言っとけ。俺は勝つのみ。」


「ふん。奇抜な事をしたところで、お前たちに勝ちは無い。」


「うっせぇよ。精々楽しませてくれよ。先輩。」


「生意気な小僧め。その鼻へし折ってやる。」


既に、戦う気満々の両者。審判が号令を出す。


「初め!」


一気に両者は駆け寄り一撃目を繰り出す。剣と剣のぶつかる大きな音と共にカイは後ろへ少し飛ばされる。これをチャンスと見たドコーラは追撃を開始する。そのドコーラの斬撃をカイは全て剣で防ぐ。苦しそうな様子も無い。押しているはずのドコーラには逆に徐々に余裕がなくなっていく。


「先輩。こんなもんですか?」


「うるさい!まだまだだ!!」


「しっかり頼みますよ先輩。」


カイの嘲笑にイライラを増すドコーラ。ドコーラからすれば、何故全て防がれているのかわからない。初激で腕力の差がある事でカイは飛ばされていたはずなのに、追撃は一切剣で防がれて尚且つ、カイは飛ばされていないのだ。逆にドコーラの方が押され始める始末。


「あれれ?まだ本気じゃないんですか?」


カイは更に嘲笑交じりの問いかけをするが、ドコーラは答えない。否、答える余裕が無くなっているのだ。


「あらあら。余裕がないみたいですね?」


「うるさい!気弾!!」


ひらりと避けるカイ。更に焦るドコーラ。ここで負けては将来が無くなってしまうかもしれない。家の恥でもある。必死になり、攻勢を強めるドコーラ。しかし連撃を繰り返しているドコーラは徐々に疲れを見せだす。


「センパイ。もう終わりですか?」


「畜生!!」


カイの嘲笑を受けてドコーラは大技を決めようと大振りになってしまった。


「センパイ。もう面倒だから終わらせますね?」


そこを見逃さず、カイは一閃。見事にカイの剣の柄が鳩尾に決まる。そしてゆっくりと離れるカイ。


「センパイ。お疲れさまでした。まぁ、聞こえてないだろうけど。」


カイが離れた少し後ドコーラは膝から崩れ落ちるのだった。


「勝者、カイ・ローエン!」


静寂から一気に湧き上がるスタジアム。信じられない光景を見た観客達であった。







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