8 試練 その2
あれから、地下10階まで来た。敵が強くなるはずの所が・・・変化無し。≪亜空間収納≫に、結構な数の魔石が貯まった。
「そろそろ、最奥になるぞ。」
ポワロ叔父さんのその一声でチョット緊張感が増した。
このマカロッサ家の墓地にあるダンジョンは10階までとなっている。
9階までと同じ様に岩肌の外見で、道が一本奥に続くだけの簡素な造りの階層のようだ。マップもその様に示している。
「モンスターも出ないようですね。」
「セーフティーゾーンにもなっている場所だ。」
この道の奥に部屋がある事はマップでわかっているが、この間にはモンスターがでないという事らしい。
今のうちにポーションを飲むなりして、扉に入れという事かな?
「とりあえず、一端休憩を入れます。」
「そうする方が良いだろ。」
「では、簡易テントを用意しますね。」
とキーファさんが魔法鞄から取り出してキャンプの設営をしだした。
私もその手伝いをして、一息入れた。
「それにしてもザバルティは強くなったな。ここまでとは思わなかった。」
「ふふふ、危険を伴うから、志願してまで試験官になったんですものね。」
「キーファ、それは言わない約束だろ?」
「あら、そうでした。」
とキーファさんが舌を出して笑っている。それを見たポワロ叔父さんは一瞬、見惚れた顔を見せた後に苦笑いだ。イチャイチャするなら、私が居ない所でやってくれれば良いのだがと思った。この後もどうのこうのと二人の世界へ旅立っていたポワロ叔父さんとキーファさんだった。私も二人を無視する形で、自動回復を促進する為に瞑想を始めた。
◇◇◇◆◇◇◇
さて、二時間位の休憩を取っただろうか?本当は30分位で十分だったけど、誤魔化しを考えての時間を取った。
「では、休憩はこれ位にして、進もうと思います。」
「そうか、では俺達はここで待つ事にしよう。この先は試練を受ける者のみで行く事になっている。では、頑張ってこい。」
扉の入り口で、ポワロ叔父さんがそんな事を言った。
「はい。」と返事を返して扉に進む。何故か、この一角だけ他と違う仕様になっている。
豪華な扉で如何にもって感じの文様が刻まれている白銀の物。プラチナって鑑定には出てくる。黄金仕様でないだけましかな?後我がマカロッサ家の家紋入り。六芒星の中心にドラゴンが描かれている。
この世界にドラゴンは架空の生物ではなく実在するようだ。まだ、見た事はない。ファンタジーの醍醐味だよね。ドラゴンってさ。いつかテイマーするか召喚出来る様になると決めている。
で、扉に手を掛けると勝手に開いた。中は薄暗く見えない。マップで見るとかなり広い空間になっているのがわかる。中に足を踏み入れて少し進むとこれまた勝手に扉が閉まり、魔法だと思える光が部屋中に灯る。誘導するかのように向こう側へと光は灯っていく。部屋の中央に闘技場のリングと思わしき物があり、そこへ誘導するかのように光の道は続いている。そこに行けって事だよねこれ。
≪そのようです。広域視覚を利用されますか?≫
「いや、今回は利用しないよ。」
と返答して、2キロぐらい先のリングまで進む。光の道の向こうはどうも闘技場という形ではなく、草原の様な感じだ。
リングを中央に私の逆側には丘のようになっている部分があるようだ。夜の草原の中央にリングがあるわけだ。不思議な景色だ。ある意味場違い的な感じすらする。人為的な場所だね。
リングの上に立つ。
ギャオーンって音と共にリングの向こう側に光が灯り丘の方へ続いている。その丘からかおを出す生命あり。顔がデカい。しかも知っているモンスターだ。もしかしてフラグ立てた?
≪あれは、地球でいう所の西洋型ドラゴンです。種族名はホワイトドラゴンです。敵対心があるようです。マスター気をつけてください。≫
やっぱりか。でもおかしくないか?このダンジョンはゴブリンとかしか居ないダンジョンだよ?なのにBOSSにドラゴンとか。やるしかなさそうだから、やるけども。
で、お決まりのドラゴンは飛んで目の前にやってくる。
「待っていたぞ。我に挑む準備は整っているか?」
「ドラゴンが喋った?」
「人間風情が我ら竜種を侮るか?」
「いや、そういう意味では無いです。すいません。」
「フム。良かろう。で、準備は良いかな?」
「はい。よろしくお願いします。」
変な感じで緊張感が無くなった。登場シーンだけなら、緊張感はあったのにね。威嚇咆哮はバッチリだったのにね。残念な感じだ。