78 ひと悶着 その2
「昨日は凄い事が起きたね。」
「本当に、あれはヤバかったわ。」
あちらこちらで、例の騒ぎが花を咲かせている。ザバルティの従者達一行はマズイなと感じながらも沈静化するのを待つ事にした。
「少し盛り上がる過ぎているな。」
「そうね。」
「「いいじゃん。」」
気楽なアリソンとロバートは逆に楽しそうである。
「貴方達は馬鹿なの?」
「「どういう事?」」
「あのなぁ、ザバルティ様がいない所での騒ぎなんだぞ?」
「つまり、長引くと犯人探しやら色々と面倒な事が起こるのよ?」
「「問題ないじゃん。」」
あくまでも気にしない二人にミーリアとトーマスは頭を抱えた。そんな話をしている時に、ロクトルが現れた。
「おはよう。昨日は派手にかましていたね。」
「えっ?何の事?」
「ふふふ。あれはアリソン君の魔法だろ?」
「さて?」
「とぼけても無駄だよ。あそこに居た者達の半数は気づいていたと思うよ。何せ、『流石超特待生』ってフレーズが聞こえていたからね。」
「やっぱり。そうよねぇ。」
「ああ、間違いないね。それとおはよう。」
ディデルが唐突に同意を示し顔を出す。
「良くも悪くも僕らは有名人だからね。」
「そうそう。特に君達はザバルティ君の従者で『ザバルティカルテット』って呼ばれている位に有名だからね。カンセン一味が馬鹿過ぎて知らなかった方が特殊さ。」
「そうなると、本人達が知るのも時間の問題か。」
「そういう風に思っていた方が間違いないね。」
そんな話をして教室に着いた。その後もあ~でもないこ~でもないと会話を続けていると副担任のキースが入ってきた。
「おはよう。授業の前だが少し話をしたい。席に着いてくれ。」
全員が席に着くとキースは話をしだした。
「昨日、校内でちょっとしたトラブルがあったようだな。その被害者だというある伯爵家の子息の者が自分の家の立場を利用して我が校に苦情を言ってきた。『超特待生の者達にやられた』と。その為に少し捜査をし証言を沢山手に入れた。お前達の誰かが魔法を使った事も判明した。」
ここで、キースは一端一呼吸を置く。皆が息を呑む。
「良くやった。」
「「「「はぁ?」」」」
全員が間抜けな声をだした。
「貴族意識が高すぎる手のかかる奴で、教師にも頭にきている者も多かったのだ。しかも伯爵の息子であって伯爵では無い。更に、この学院に在学中はその者の待遇はあくまでクラスによる。つまり成績によるという事だ。つまりこの問題に対してここまでの事は皆が処分を受ける事や避難される事はない。」
全員がホッとする顔をした。だが、キースは浮かない顔をする。
「だが、ここで問題が一つある。超特待生の皆は問題ないが気絶した被害者?を裸にして晒し者にした者達がほぼ全員が平民出であり尚且つやり過ぎている。これが問題だ。」
一瞬にして静まり返る教室は冷たい空気が流れる。
「気持ちは分かるし、平民出という事で彼奴らから酷い仕打ちを受けている者ばかりだ。だがした事の責任はとらねばならない。さて君達はどうする?」
突きつけられた現実。一様に暗い空気が教室を覆う。そこで、一人の男が立ち上がる。
「それは、俺が売られた喧嘩だ。俺が決闘を申し込む。」
「カイ君それは、苦情に対して異議を申し立て決闘を申し込むという事で良いのかな?」
「そうだ。」
「うむ。ならそれで構わないが・・・」
「ちょっと待って?何故カイなのぉ?私が魔法を使ったんだから私でしょ?」
「オイオイ。それなら俺がやるよ。女のアリソンにはやらせられん。」
「ロバートがか?それなら、私がやるよ。あの侮辱を忘れているわけじゃないからな。」
「侮辱は許せません。私達処かザバルティ様の事まで馬鹿にした償いをさせてやりましょう。」
「オイオイ。ザバルティカルテットどもまでやる気かよ?」
キースが苦笑する。するとガラっと音を立てて、一人の女性が入って来る。
「良いじゃない。」
「学院長?」
「私は良いと思うわよ?皆で向かう事は嫌いじゃないわ。」
「ですが、相手は一人ですよ?」
「ふふふ。決闘自体は代理を立ててやる事もある。それにカンセン・ガリル君はあのガリル伯爵家ですから、間違いなく代理を立てるでしょう?」
「そうなるでしょう。」
「だから、このSSクラス対ガリル伯爵家という構図にしてしまい。5人対5人の団体戦にしてしまえば良いのよ。決闘とは言えないけど、私が間に立って交渉しましょう。そしてこの決闘の結果に異議を申し込ませないようにしましょう。それぐらいなら私でもできますよ。」
「そうかもしれませんが。」
「まぁまぁ、キース君。前例がないとはいえ、このSSクラスは学院一のそして国一番の部署でもあるのです。そこに喧嘩を売ったらどうなるのか?そして私に喧嘩を売るとはどういう事になるのか?を教えて差し上げねばなりません。」
キラリと眼鏡が光るその奥の瞳には炎が見えている。
「学院長。いやアクセラ様をそこまで怒らせていたとは・・・。」
キースの絶句の顔。
「わかりました。私からはもう何もありません。」
「よろしい。では、このクラスで代表5名を選出し連名で決闘を申し込みましょう。」
「かしこまりました。という事だ。今からメンバーを決める。良いな。」
「「「「はい!」」」」
その後、一時間位をかけてメンバーを決めた。




