74 設計してます。
本当にあっという間に着いていた。王都テーストへの帰還である。
帰還中は特に何も無かったと思うのだが、集中していた事もあり、ほとんど分かっていない。
≪色々とありましたが、アイリーンを始め仲間の方々が全てを対処してくれていました。≫
という事である。少し聞いた所によると、魔物の襲撃や、領地貴族との宴会、そして盗賊団の襲撃等が起こっていたようだ。ただ、襲撃関係は珍しい事でもある。ある程度の規模での行軍であるわけだから、普通は襲ってこないものであるはずなんだが。
≪規模的にもそこそこの数でありました。ユカ様を筆頭としたザバルティ様の私兵が活躍し、怪我人はでたものの死人は出ませんでした。勿論、怪我人には魔法による処置が施されていますのでご安心を。≫
「すいませんでした。」
≪いえいえ、これはザバルティ様の信者の方々全員の気遣いでありましたので、僭越ながら私は皆様と念話が出来る様に少し勝手をさせて頂きました。よろしかったでしょうか?≫
「はい。良くして頂きありがとうございました。」
≪では、今後も私と信者との念話は繋げておきます。ザバルティ様からの言葉も届くようにしておきますので、ご活用ください。≫
「何から何までありがとうございます。」
少し冷たいような気がするカミコちゃんの声?音声?に敬語を使ってしまう私は、超が沢山つくほどの反省をしていた。いわゆる猛省ってやつだ。
カミコちゃんからの報告を聞いた私のその後の行動など、言う必要もないだろうが、謝罪と感謝をして回った。
ただ、皆のおかげもあり設計図はかなり進んだ。大まかな全体図ができあがり、後は詳細な設計図とこの要塞で使う事になる設備の設計図と細かい部分の設計図を構築するだけとなっている。それはプラスに働く事だろう。
◇◇◇◆◇◇◇
「お帰りなさいませ。ザバルティ様。」
屋敷に着くと、ミーリアを始めとした皆が出迎えてくれた。
そうあの後はカンガリ伯爵閣下に謝罪をしてお赦しを頂いた後、直ぐに屋敷に戻ってきている。
「ただいま。問題は無かったかい?」
「そうですね。基本的には・・・。」
「どうした?」
「いえ、あのメス・・・王女様が・・・。」
今、何か怪しい言葉が出てきそうな感じだったが、兎に角スルーだ。これに関わると面倒だと私の直観は告げている。
≪正しい判断です。≫
とのカミコちゃんのお告げもある事で、スルーだ。
「うん?」
口を開く前に奥の方から走って来る人影あり。
「ザバるん!寂しかったよ~!!」
今にも泣きそうな声であの第三王女が飛んできた。その勢いは凄い、私の眼でもやっと見えているかどうか?の速さだと思うのだが。
どかっ!「ぐへっ!!」
第三王女のお腹に強烈な何かがぶつかった音と共に女性が出してはいけない音が聞こえてきた。
何がぶつかったのか、私には見えなかったし、回りにいる者も何がどうなったのかわからない様子だ。
ぼーっとしているわけにもいかず、第三王女の所に行き抱き起す。
「どうしました?」
「今何かお腹にぶつかった気がするのだけど、何がぶつかったのか分からなかった。」
本人も分からない様子だ。
「あらあら、第三王女ともあろうお方が、どんな醜態をお見せしているのですか?」
ミーリアの厳しい言葉がマリリン第三王女に向かう。が、マリリン第三王女はそんなのはお構いなしにスルーし、私にもたれかかってくる始末。ある意味良かったのだが、後が恐ろしい。
「何故、私を置いて行ってしまうのです?寂しいではありませんか。」
「公務で急に出発となりましたので、挨拶が出来ずもうしわけありません。」
「挨拶など不要です。何故、私をひとり置いて行ったのですか?と聞いています。」
???頭の中はまさしく???となった。意味が分からない。置いて行くとはなんだ?
「だ・か・ら、何故、私を連れて行ってくださらなかったのですか?」
私とマリリン第三王女の関係はなんだ?知り合い?友人?恋人?婚約者?敢ていうなら、知り合いから友人の間のような気がするのだが?
「まだ、おわかりにならないのですか?」
「第三王女マリリン様。私どもの主であるザバルティ様は非常に疲れておられます。そろそろ解放して頂けませんか?」
ナイスフォローだ。トーマス。ただその横にいるロバートがニヤニヤしているのにはムカつく。
「そうですわね。私とした事が、では続きは寝室で。」
「はい。第三王女マリリン様がお帰りです。」
見かねたミーリアが強硬手段にでた。マリリン第三王女の腕を掴んで、どこかへと連れ去ったのだ。
「イヤ。ちょっと待って。私はもっと一緒に居たいの。ねぇ、調子に乗ったのは誤るから。ねっ?」
あがくマリリン第三王女を無言で連れ去るミーリア。
かなりシュールな光景だ。その後は王室の馬車に投げ込まれ、マリリン第三王女の執事がミーリアに頭を下げたかと思うと王室の馬車はマリリン第三王女を連れて去って行った。
ボーゼンとする私達の前で起こった出来事は強烈だったとだけ伝えておく。




