71 現地調査前準備
その後の行軍は順調そのものだった。
特に目立った事は起こらず、平和な行軍だ。二、三日後には建設予定地へ着く予定になっている。
「ザバルティ様。ここまでは問題ありませんね。」
「そうだな。良い事だ。」
「皆が油断しなければ良いのですが。」
「それは仕方がないだろう。ただ、私もセンサーを確りと張っているから、気を張り詰めて破裂しないより良いさ。そうだな、少し気を緩める様に言ってくれないか?」
「ザバルティ様がそうおっしゃるなら、そのように伝えます。」
「うん。頼む。」
これだけ長い行軍であるから、気を張り過ぎるのは逆に良くないだろう。
相手が悪魔であるという事も気になるが、悪魔だけに集中しすぎてもあまり良くはない気がする。
人間同士の争い事に悪魔が関係する事なんかは、少ない事だろうと思う。それに直ぐに襲撃されますという話でもなかった事から、判断して猶予があるのでは?と考える事も大切だと思う。
それに悪魔が関与するという事はその先に邪神の存在もあるべきだと考える方が良いだろう。
私の考え方では、悪魔は天使と同義であるという考えだからだ。
今は依頼のあった要塞の設営に早急に取り掛かり、少しでも早く終わらせる事が先決だろう。
私よりも、屋敷側の方が心配なのだから。
その後も特別な事は無く、建設予定地へと着く事ができた。
そして、ここからは、カンガリ大将閣下とは別行動になる。
「カンガリ大将閣下。それではここから、私達は別行動をとらせて頂きます。」
「うむ。日数にしておよそ7日間が与えられる時間だ。それ以上は難しい。大それた行動は出来なくなってしまう。そのつもりで頼む。」
「わかりました。カンガリ大将閣下もお気をつけてください。」
「お互いにな。では頼むぞ。」
「はい。吉報をお待ちください。」
「吉報とな?それは何だ?」
この世界に「吉報」という言葉の意味は無かったようだ。これから広めて行こう。
「良い知らせという意味です。」
「さようか。では吉報を待っておる。」
「はい。」
カンガリ大将閣下は笑顔で去って行った。カンガリ大将閣下は前線基地となるこの先へと向かわれたのだ。後、7日間の間にこの地域を調べ上げて、要塞の候補地を決定し、要塞の設計図を作成してしまう予定だ。私は早速セシリアを呼び出し、行動に移す事を話した。
「ユカ。君にはベース基地の設営を頼む。そして、調査メンバーの選定をしてくれ。行動は一時間後に始める。私とセシリア二人に従軍させるメンバーと単体調査メンバーの選定だ。それにベース基地の防衛メンバーの選定もだ。私とセシリアも単体で馬に乗るので、その準備も頼む。何か困りごとがあれば、アイリーンかシーリスに相談してくれ。」
「かしこまりました。」
指示を出した後はセシリアとおおよその要塞に対する知識の共有をおこなった。要塞なんぞは私の記憶には造った憶えはないが、情報として当時の自衛隊や海外の軍の基地のイメージがある程度だ。
この世界の現在の軍略や武装に合うか?と言われると怪しいので、必要だったし。セシリアはこの世界の現在の匠だ。私の持つ情報よるもリアルな情報が得れるであろうと思いおこなった。
私の知りえる知識の中では地球の中世レベルの要塞のようだ。まだまだ、歩兵の占有率が高く尚且つ、騎馬隊がメインであるのは間違いがないようだ。しかし、魔法があり、最近では地球の銃のような飛び道具まで出現しているあり様のようで、飛び道具に対する備えも必要である事が分かった。
「そうか。では色々と準備しなければ設営は難しいようだな。」
「そうですね。ただ、城とは違い非常時の守備に使う施設ではありますので、豪華さや華やかさは必要ありません。王都とこの先を結ぶ地点の守備の要の場所であるので、大きさはある程度あった方が良いでしょう。多くの兵が休める空間が必要ですね。」
「うん。想定は兵10万ときいている。大軍でも入れる陣容にしなければならないし、尚且つ長期戦に備える準備も必要だろう。」
「それはワクワクする内容ですね。俄然やる気が出てきましたよ。」
セシリアは想定規模でスイッチが入ったようだ。
「それに、ザバルティ様と一緒に考えるという事はこれまた世界一の物が造れるという事ですからね。楽しみで仕方がありません。」
ご満悦の顔になっていた。やる気スイッチだけじゃ無かったみたい。
その後はあっという間に準備が終わった時間まで、あれやこれやと想像して話をしていた。
夢中になると時間の経つのが早いね。
「では、出発致しましょう。」
「うん。ではユカ、アイリーン。頼んだよ。」
「かしこまりました。ここはお任せください。」
そんなやり取りをして、私はセシリア、シーリスとシャルル、ゾーイの二人を隊長とする調査メンバーを引き連れてベース基地を離れたのだ。




