70 王都から視察へ
「おはよう。よく来てくれた。」
「おはようございます。宜しくお願い致します。」
「では、直ぐに出発しよう。」
「はい。」
カンガリ大将の号令で、私達は旅路に着いた。国境までは14日間の予定となっている。私達の本当の目的地である場所はおよそ、12日後に着く予定となっている場所だ。ただ、これはあくまで予定地であって、もしかすると場所の変更もあり得る話である。しかし、10日間はただの旅となんら変わらないのであるから少しは気が楽だ。
「お気付きになられましたか?」
「どうした?」
「カンガリ大将閣下のご様子が少し変でした。」
「そうか?急ぎで疲れているからとかでは無いのか?」
「そうであれば良いのですが。」
「では、少なくとも隊長達に話しておいてくれ。念の為に。」
「わかりました。」
アイリーンが気になったカンガリ大将の様子だが、私には分からなかった。
その後、私は睡眠をとる事にして馬車の奥へと入ってベットに入り寝た。
◇◇◇◆◇◇◇
「くそ、アンドリュー辺境伯が協力できないだと?」
「はい。そのように返事がきました。ですが、この事をザバルティ殿にお伝えしなくても宜しいのですか?」
「交渉はまだ終わってはおらぬ。引き続き交渉をせよ。」
「はっ!かしこまりました。」
指示を受けた者はすぐさま駆け出して行く。
「折角、ザバルティ君を連れだしたのだ。確りと結果を出ささねば、爺に殺されるわ。」
苦笑いを浮かべるカンガリ大将だった。
「どうやら彼には問題が次から次へと起こらねばならない宿命のようだ。だが、少しばかりはこの老骨でも手助けが出来るじゃろう。」
カンガリ大将の視線の先にはザバルティの乗る馬車があるのだった。
◇◇◇◆◇◇◇
ここは何処だ?私は馬車の奥で寝たはずだが?
≪久しぶりですね?≫
「その声は女神様では無いですか?」
≪よく覚えていましたね。その通りです。≫
「どうかなさったのですか?」
≪そうです。私の思わぬ事が起ころうとしているようなのです。≫
「それは?」
≪悪魔によるこの世界への干渉が始まりそうなのです。≫
「どういう事でしょうか?」
≪今まで、悪魔はこの世界に興味を示して来ませんでした。ですが、どうやら貴方に興味を持った悪魔が出て来たようなのです。その悪魔がどうもこの世界に干渉しそうなのです。しかも貴方に関わる様に干渉してくる事が考えられるのです。≫
「そうですか。私はどうすれば?」
≪従来通り、特にはありません。ただ、お知らせしておかなければと思ったのです。≫
「という事は、私次第であるという事でしょうか?」
≪その通りです。ただ、貴方のしようとする事に必ず邪魔が入る事は間違いないと思っていてください。≫
「わかりました。覚悟しておきます。」
≪では、貴方に幸あらんことを。≫
「ご安心ください。神の使徒としての役目を全う致します。」
何故だろうか?私はこの女神様を昔から知っている気がした。そして意識が無くなった。
「・・・ルティ様。」
何だろうか?
「ザバルティ様。起きてください。」
体を揺すられ起こされているようだ。シーリスの声がする。
「シーリスどうした?」
「もうすぐ、宿泊予定地へ着きます。」
「何?一日寝ていたのか?」
「そうです。お昼にカンガリ大将閣下が、こちらへお越しになられたので、お越しに来たのですが、全くお気づきになられず、揺すっても起きられなかったので、困ってしまいましたよ。」
「そうか。申し訳なかった。後でカンガリ大将閣下にも謝罪しておこう。」
「はい。カンガリ大将閣下には体調が優れなくお休みになられています。と伝えております。」
「そうか。わかった。ありがとう。」
神託?らしい事が起こっていたからなのか、長い時間寝てしまっていたようだ。だが、今回はハッキリと憶えているし、会話もしたので、かなり深い繋がりを持っていたのだろう。今後もこのような事があると心配するだろうから、神託を受けた事をはなしておかなければいけないな。
「シャワーを浴びて降りる用意をしよう。」
「では、私は先に前に行っております。」
シーリスはそう言うと着替えを用意してくれ、馬車の方へと出て行った。
私はシャワーを浴び、着替えをして馬車の方へと出る。
その少し後に本日の宿泊予定地となっていた国軍の王都外訓練場へついた。今日はこの訓練場の施設で休む事になっている。
着いた後、直ぐにカンガリ大将へ謝罪をいれた。笑って「疲れがでたのであろう。今日はゆっくり休むと良い。」と言って頂いた。
その後は、夕食を食堂で取り、早々と施設内の私にあてがわれた部屋へ入った。そしてアイリーンとシーリスとユカ、ケンジ、ジャック、ゾーイ、シャルル達を呼んで、寝ていた間にあった事を話した。
そして、内容に悪魔の干渉という言葉があった為に、屋敷に情報を持って行く必要があると結論を出し、ケンジと5名のダークエルフを屋敷へ帰す事にした。もちろんカンガリ大将に許可をもらって帰した。屋敷に戻ったメンバーはまた、この隊に戻って来る予定となっている。
「では、行ってまいります。」
「よろしく頼む。」
「はっ!」
ケンジ達一行を見えなくなるまで見守っていた。




