7 試練 その1
マカロッサ家の領地はアスワン国の東の国境沿いにある地域にある。
海岸沿いにある領地は交易都市として栄えている。領都アンバーはアスワン国の東の玄関口としての役目もあり、さらに海軍の第二拠点ともなっている。
現在はそのアンバーから少し北西にある森にきている。
父上から最終試験を課せられた為である。歳は12歳となった。
この最終試験を合格すると、私はアスワン王国の首都テーストの学院に入る事になる。
最終試験はマカロッサ家の墓地にある「家紋の入った剣」を取りに行くという物。
整備された道を行くので難しい事ではない。ただ、墓地が問題なのだ。
小さな山の上に墓がある。この墓も整備されているし、墓守や墓を守る兵隊もいる。
試練の時はその墓のある山の麓にある迷宮から入らないと行けない。えっ?そのまま行けばって?試験官がいるに決まっている。マカロッサ家では血縁の誰かが試験官となってついてくるルールになっている。
今回は叔父であるポワロ様が試験官。サポートにエルフのキーファさんまで居る。ズルは出来ない。
するつもりもないのだけども・・・。ちなみに、今回は従者予定の三名とジューネは一緒では無い。
今頃、出口の方へと向かっている頃ではないだろうか?
「久々だが、結構覚えているもんだな。」
「とても綺麗な所ですね。初めてなんでワクワクしてしまいます。」
二人は気軽に楽しんでいる様子。
「しかし、ザバルティ。お前も初めてではないのか?地図を一切見ずにここまで来ているが?」
しまった。能力を隠蔽しているのに、地図さえ見ないのはまずかったかな?
≪解 記憶力≫
「えっ?ここまでは地図を覚えていたので大丈夫でした。」
「それは凄いな。モンスターも弱いゴブリンとかしか出てないから、気にして動く必要もなかったのが幸いしたかな?」
「そうですよ。あははは・・・。」
とっさに、賢者から返答が来たので利用させてもらった。ごまかしきれてないかな?ただ、実際この洞窟では下級のモンスターしかいないから焦って対処を間違える事もなくここまで来たのは事実。楽勝であるのも事実。しかし、地図を開かなくても地図がマップとして頭の中に出てくるから、必要がないんだよね。でもこの能力だけは常識では考えられない事みたいだから、公開していない。職業が神の使徒である事も勿論してない。頑張って【隠蔽】スキルを覚えました。ジューネさんの指導は厳しい物でした。本当に厳しい物でした。大事な所です。これ、試験に出ます。な訳はないけど、ホントウニキツカッタ・・・。ジューネさんは「やれば出来る。」が口癖のようです。はい。
「まぁ、自信があるのは構わないが、油断するなよ。」
「はい。わかりました。ご指導ありがとうございます。」
素直な感じで答えておく。ポワロ叔父さんは満更でもない様子だ。
(神の使徒)という職業を知っているのは現在はジューネさんのみである。
ジューネさんは口外するつもりがないようだ。(神の使徒)であるだけで、隠蔽にも補正が掛るらしくて高位鑑定持ちでも見抜く事は出来ないらしい。隠蔽が無いとジューネさんの時のようにバレてしまうらしいけど。今までは問題が無い。
「ライデ〇ン!」
しまった。つい急に出てきたゴブリンに古のゲームの魔法名を言ってしまった。二人が変な顔してる。
「?聞いた事のない魔法名ね?雷系の魔法だとは思うけど?」
「私は、この呼び方をすると威力が上がるんです。」
なんて弁明をしてしまった。無詠唱で魔法は使えるようになってしまってるから、言葉は詠唱が関係無くなってるんだよね。でも言っちゃうよね?えっ私だけ?
焦げて黒くなったゴブリンが消えて、魔石がゴロって出てきてる。
そうなんだよ。この世界の迷宮は死体が回収されるようだ。このマカロッサ家の墓につながるここも迷宮に分類される物らしい。つまりダンジョンマスターが存在する所って事。もちろん洞窟って物もあるようだ。そちらは、死体は洞窟に回収されず、その場に残る。つまり解体作業が必要であるって事。
この世界の不思議の一つだね。
「そう。わかったわ。妹が教えたのかしら?早く無詠唱を覚えましょうね。」
「はい。まだまだ未熟です。ご指導よろしくお願いします。」
「そうね。今度は私も教えるわ。」
ハイエルフのキーファさんが笑顔で宣言された。
あのジューネさんのお姉さんだから、厳しいのだろうな。
「俺も、今度ザバルティを鍛えてやろう。」
って、便乗したポワロ叔父さん。ウ~ン。大変な事になりそうだ。
年齢合わせた動きって難しい。チョットだけなら優秀だけど、チョットを越えると警戒されちゃうからね。身内なら問題ないと思うけど、前世の記憶が念を押す。一生の内に経験した事がこういう時の判断に顔を出す。