68 軍部からの依頼
「「「おはようございます。」」」
「はい。おはよう。では授業を始める前に、ザバルティ君。君に国軍から召還依頼が来ています。直ぐに準備をして王城へ向かってください。」
「今からですか?授業は?」
「残念ながら直ぐにとの事です。授業内容については後程纏めた物を渡しましょう。」
「わかりました。」
学院の授業が始まる前に急に担当の学院長から言われた事は直ぐに王城へ行けという物だった。
乗り気はしないが、行くしかないようで、席を立ち個室へ一度向かう。今日の担当秘書はコーネスだ。他に3人のダークエルフが今日はついて来ている。キスリとエリンとサイエの三名が護衛という名目で一緒にいる。この三名の他にライミとアイキとデリスの三名が私直属の護衛のようだ。この六名が護衛についてくれている。日替わりで交代となっており、1日中起きているようだが、学院に居る時や他の者がいる時は休憩をとる形をとらせている。
「急に、王城に呼び出された。何もなければ良いのだが、念の為に屋敷のブリエントに連絡を取って欲しはい。キスリが連絡をしてくれ、王城の外にサイエを待たせておく。連絡が終わったら合流しておいてくれ。」
「わかりました。」
キスリは直ぐに部屋を出ていった。
「コーネスとサイエは私について王城内に入る。では行こう。」
「「かしこまりました。」」
即座に準備を整えて王城へと向かう。
今回の呼び出しは国軍という事だから、多分、シャワーの件であろうとは思うが、油断は出来ない。
この間の件で、私に対して直接武力行使は行わないにしても、別の角度から来る可能性があるからだ。
今回は学業をそっちのけで来るようにとの指示だったようなので、不測の事態が考えられるからだ。
その後は直ぐに王城に向かった。
特に重々しい感じはしないものの、少しいつもとは違う感じがしている。
今日は軍に呼ばれたので、その事を衛兵に伝えると、案内された場所は軍の士官が詰めている場所だった。そこには、カンガリ伯爵が居られた。
「よう。ザバルティ君。」
「これは、カンガリ伯爵。お元気そうで何よりです。」
「いや。もう伯爵では無いよ。君の意見を受け入れて爵位は息子に譲ってきた。今は軍に席を置く身だ。今後はカンガリ大将とでも呼んでもらおうか?」
カンガリ大将は少し揶揄うようにおっしゃった。私は驚いた。
「そうなんですか?しかし、本当に爵位をお譲りになられるとは。何だか責任を感じてしまいます。」
「そんな風に捉えんでくれ。ありがたい助言を頂いたと思っている。」
「恐縮です。」
「そんなにかしこまるな。やりづらい。」
カンガリ大将はそうおっしゃり笑顔になられた。
「ところで、今日呼び出したのは君に急いで聞きたい事があったからだ。」
キリリと真剣な顔になったカンガリ大将は続ける。
「ザバルティ君は我が国の西方地区には行った事があるかな?」
「いえ。ありません。王都テーストから西には行く事がありませんでしたから。」
「まぁそうだろうな。君の父上の領地は東の端にある地区だからな。」
「はい。」
真顔のカンガリ大将は続ける。
「現在西南西地区のキングスト聖王国の国境付近に要塞を造る計画となっている。その要塞設営に君の力を借りたい。」
「学院生の私にですか?」
「そうだ。君の力は世界的建築家のダンバル氏が強く認めている事実がある。聞く所によると、ダンバル氏が君に師事していて、同じ屋敷に住んでいるとも聞いている。そんな戦力を放置しておくのは勿体ないとは思わないか?」
「ありがうございます。ですが、若輩者である私には難しい問題ではないでしょうか?」
カンガリ大将はニヤリと笑う。
「君なら問題は無かろう。なにせあの「シャワー」という物の開発から君自身が造ったという報告も聞いている。逆に君が一番の適任者ではないかね?」
痛い所をついてくる。
「まぁ、そんな渋い顔をするな。今回は一から造る事になっているし、最前線というわけでは無い。ただ、急いで場所やその他の事を早急に決めて建設に取り掛からねばならない。どうか、君に協力してもらいたいのだ。勿論、今回の任務が完了した後には君にちゃんとした報酬を払うつもりだ。どうだろうか?私に協力しては貰えないだろうか?」
これは負けだ。
「カンガリ大将閣下にそこまで言われたら断れませんね。わかりました。まだまだ未熟な若輩者ですが、私でよければ、ご協力させてください。」
「そうか。ありがとう。では早速で悪いのだが、明日にでも王都を出発し、向かう予定だ。今回の軍の指揮は私がとる。必要な物があれば、何でも言ってくれ。」
「わかりました。とにかく現地を見て設計図を書き、一から造るという事で良いんですね?」
「そういう事になる。よろしく頼む。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。後・・・。」
その後、人員の事や明日の出発時間等話し合った。夕方まで時間が掛かったのは言うまでも無い事だ。




