67 休日 その5
奴隷契約を一通り終えた後、この集団のまま街に戻るのは良くないという事になり、亜空間魔法を使って中に入ってもらう事になった。500人規模となるので、そこそこに大きい空間を用意する事になった。
500人っていえばそこそこの数になる。大隊クラスとなる。田舎の地方であればそれなりに脅威となる数ではなかろうか?彼らを今後どうするのかをブリエンドから委ねられてしまっているので、とても厳しい状況にあると言える。
とにかく、人数が多すぎる事と単一族である事を考え、空間内に入ってもらった。
「屋敷に戻ろう。今後の事は館に戻ってからだ。」
「「「かしこまりました。」」」
その後は何も無く、屋敷にたどり着く。途中で食料の追加を買い込んで、屋敷に届ける様に伝えた。
商人があまりに大量だった為に、ビックリしていたが、怪しまれる事は無かった。
「何なんですか?この人数は?!」
ミーリアがごもっともな意見を言っていたが、皆に説明し納得してくれた。ただ、次からはちゃんと相談してくれと言われた。信者達には文句が無かったようだ。
「仲間(信者)が増えて嬉しいですね。」
「これで、(教義)活動に幅が持てます。」
概ね好意見?だった。種族間の嫌悪はあるようだが、拒絶はないようだで安心した。
彼女達の当面は前からいる信者達と同じ様な動きをしてもらう事になった。
寝泊まりする所が普通は問題になる所なのだが、この屋敷には余裕で2000人が住める設計になっている。つまり空き部屋が無数にあるという事だ。中央の建物が現在利用している部屋なのだが、両サイドの建物はまだ未使用という事だ。普通の貴族の家では色々と用途に分けた部屋が無数にある感じだろうが、ここは違う。ある意味学校の寮が近いかな?二人で寝る事の出来る部屋を元倉庫のあった場所の建物の各階に200部屋ずつある。寝泊まりが出来るのとトイレが付いている。
計画段階で色々と試行錯誤していたが、将来的に奴隷を手に入れて働かせる予定等あったし、日本における災害対策も兼ねていたから、こうなったんだが、こういう造りにしといて良かったと今は思う。
「無事になんとかなりましたね。」
「そうだな。でもまさかこういう事態になるとは予想していなかったんだが。備えあれば憂いなしだ。」
「何ですかそれ?」
「準備しておけば、どんな事が起きても大丈夫だという意味だよ。」
「へぇ。『備えあれば憂いなし」という事からも確りと稼がないといけませんね。」
「そうだな。頑張って稼ぎます。」
「楽しみにしてますよ。旦那様。」
ミーリアに言われて何だか恥ずかしかった。が、事実、稼ぎは必要だ。頑張らないといけない。
学院生なのに、何だかオカシイが、事実その日暮らしをする訳にはいかないからな。
「ザバルティ様。ありがとうございます。安心して皆を生活させれます。私達の生活費は私達で稼ぎますので、安心してください。」
「ブリエンド。そうしてもらえるのはありがたいのだが、気負いは必要ない。私にとってこの屋敷に居れた時点で家族だと思っている。そうだな。皆を地下3階に集めてくれないか?ミーリアも他の者達を連れてきてくれ。」
「わかりました。」
「かしこまりました。」
そうして、全員を地下三階に集めた。ダークエルフだけでは無く、セシリアや私の従者達も含めて全員だ。皆の前に小さな檀上を設けていてそこに立つ。
「皆、集まってくれてありがとう。ここまでの大所帯になったので、一つ皆に言っておきたい事が出来たので集まってもらった。」
静まり返り私に皆が顔を向ける。正直、恥ずかしい。
「私は、この屋敷に住む事になった者達を皆家族であると思っている。奴隷である身分は世間体の物でしかない。本当に奴隷を止めたい。出て行きたいと思えば言って欲しい。拘束するつもりは無い。だから安心して生活を送ってくれ。それに家族である事は今後もそれは変わらない。そして一生一緒に居られるとは思ってはいないが、ひと時でも家族である事は変わらない。だから、皆もそう思って欲しい。時には喧嘩したりする事もあるだろう。けど、私達は家族だ。共に助け合って生きて行こう。そして・・・」
何か詭弁である気がしなくもないが、今の私の本気の気持ちだ。
「そして、人生を楽しみ、皆で幸せになろう。」
周りはシーンとなった。誰一人として何も音を発しない。何か間違ったかな?と思っていると。
拍手を誰かがした。そしてそれはドンドンと感染するかのように広がり、大拍手となっていった。
涙を流す者までいたのだ。ザバルティ教のスタートだ!って思ってません。ただ、この時は皆と楽しく生きていければそれだけで幸せになれる気がしたのは本当だ。そして次の日には、私の信者へとあのダークエルフ達はなってしまっていたのは事実である。
どうやら、私の考えはこの世界では信者を沢山作ってしまうようだった。




